齋藤拙堂と津藩校有造館

登録日:2018年3月9日


 津藩士の子弟教育のために創設され藩の将来を支える人材育成の拠点となった藩校有造館と、その教育内容の高さから藩校の評価を高めた中心的な人物、齋藤拙堂を紹介します。

【藩主念願の学校創設】
 19世紀初頭に津藩10代藩主となった藤堂高兌(たかさわ)は、藩債(藩の借金)総額が86万両に達し年の利子が7万両以上となる藩財政の窮状に直面していました。しかし、自らの生活費の倹約をはじめとする経費節減に努めた改革を10年以上かけて押し進め、念願の学校を1400両の剰余蓄積金を充てて創設しました。藩校の校舎建設は、垂水千歳山の藩有林から用材を調達し、文政2(1819)年11月に上棟式を、翌年3月に落成するという突貫工事を経て、文政3(1820)年3月に開設されました。

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學校建坪三百分一ノ圖 
 藩校設立当時の建物配置を示し図面では南を上にして描かれている。
 (津市教育委員会所蔵)

【有能な学者のそろった有造館】
 江戸時代後期、全国で300以上の数ある藩の中で、津藩は文藩(教育・学問に優れた藩)と呼ばれました。
 その理由は、学問に熱心な藩校創設者の10代藩主高兌の下に多くの優れた学者が集められ、充実した教育環境が知られたことによります。
 督学として藩校を指揮した人物は、いずれも大きな業績を残しています。初代津坂孝綽(東陽)は有造館の創設に関わって藩校教育の基礎を築き、2代石川之褧(竹厓)は、藩校主要事業の一つとなる出版事業の開始に中心的な役割を果たしました。そして、3代目の督学となったのが漢学者の齋藤拙堂です。
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入徳門(市指定文化財)
 藩校の講堂の有造館敷地へ入る門で、戦災を免れて今に残る唯一の建物。津城跡西之丸(お城公園)に移設されている。
【藩主の信頼の厚かった拙堂】
 齋藤拙堂は、寛政9(1797)年に津藩江戸藩邸に生まれ、本名を正謙、通称徳蔵、字を有終、別号を鉄研と称しました。
 昌平黌(江戸幕府の学問所)に学んだ拙堂は、20歳の頃には学者として名を成し、文政6(1823)年に26歳で藩校講官となり、その後29歳で11代藩主高猷(たかゆき)の侍講(教育主任)を兼務しています。藩主の信頼も厚く、しばしば江戸に随行して多くの学者・文人と親交を結びました。
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津藩藩校有造館跡(市指定史跡)

【旅行ガイドブックの先駆け『月瀬記勝』】
 一方で、文人としての拙堂の名を全国に知らしめたのが、現在の奈良県山添村の梅の名所、月ヶ瀬の風景を紹介した紀行文『月瀬記勝』の刊行です。これは、明治時代中ごろまでのロングセラーとして読み継がれ、現在の“旅行ガイドブック”の先駆けとなり、毎年観梅の季節に多くの人々が訪れる名所となりました。

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齋藤正謙肖像画(池田雲樵筆)
 拙堂63歳の時に描かれたもので、特徴的な大きな耳が捉えられている。
(齋藤正和氏 所蔵)

【吉田松陰など幕末の偉人との交流】
 安政6(1859)年に拙堂は63歳で一線を退き郊外に山荘を建てて穏退します。
 その後の拙堂は、長州の吉田松陰や土佐の吉田東洋、肥前の楠井小楠などの学者や文人らと時局を語り、酒を酌み交わす自適の生活を送り、時には藩主高猷も意見を求めて拙堂を訪ねたといわれます。
 慶応元(1865)年7月14日、病のために亡くなり四天王寺に葬られました。享年69歳。生涯を津藩の発展向上に尽くした人生を閉じました。

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『月瀬記勝』

【晩年を過ごした栖碧山荘(茶磨山荘)跡】
 拙堂が晩年を過ごしたのが、津城北郊で、安濃川岸の茶磨山に営まれた栖碧山荘(茶磨山荘・現在の鳥居町)です。
山荘図を見ると、城下から十瀬川(塔世川・安濃)を渡って桜並木を通り、山荘の門に至る様子がよく分かります。山荘背後の丘陵には園路が設けられ、「櫻花搗」や「秋錦坡」などの四季折々の景色が目に浮かぶような名前が記され、「観海亭」や「茶磨亭」からは、伊勢湾から遠く木曽の山並みまで眺望できる格好の展望台であったことがうかがえます。 

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拙堂墓所(栄町・四天王寺)

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茶磨山荘之圖
 拙堂門人の絵師、宮崎青谷が描いた山荘図。山荘各施設を朱書きで記し、城下の風景を鳥瞰図的に描いている。眼下を流れる十瀬川(安濃川)と城下、伊勢の朝熊山や鳥羽の島々、尾張三河や木曽の山々、伊良湖までの遠方の風景が描かれている。

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 拙堂齋藤先生碑(津偕楽公園)
 
拙堂晩年の門人である三島中洲(備中の人 漢学塾二松學舍の創設者)の撰による頌徳碑。篆額文字は、藤堂宗家第13代藤堂高紹の揮毫による。大正111922)年に建立された。

 
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拙堂ゆかりの地マップ
(クリックすると詳細な地図が開きます。)

 1頌徳碑(偕楽公園)  
 2墓所(四天王寺)
 3茶磨山荘跡
4入徳門、津城跡
5藩校有造館跡

 


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