施政方針(令和4年3月/令和4年第1回津市議会定例会)

登録日:2023年2月22日


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 令和4年第1回市議会定例会の開催に当たり、令和4年度の市政運営に臨む私の方針を申し述べ、皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

 

 新型コロナウイルス感染症が世界を揺るがし始めてから早2年が経過しました。感染拡大によって社会や生活様式が変わっただけではなく、私たちの価値観や心の在り方、生き方も大きな影響を受けています。コロナ禍前では当たり前であったことが当たり前ではなくなり、想像もしなかったことが当たり前になりました。サプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)やICT活用の未熟さなど、隠れていた課題が顕在化し、これらの再構築を余儀なくされました。当初抱いていた「ワクチンができればコロナ禍前の暮らしに戻れる」という思考は改めざるを得なくなり、新型コロナが変えた新しい社会や生活様式に対応するニュースタンダードが未来に向け確立しつつあります。リモートワークやオンライン会議など働き方にも新しいスタイルが生まれ、今や日常となるなど、社会の大変革を迎えています。 

 感染動向の先行きは不透明です。コロナ対策は引き続き最優先の課題ですが、未来の都市づくりのビジョンを描くことを先送りしてはなりません。目の前の感染対策に万全を期すると同時に将来に向けた都市づくりを前に進めていく、これは行政の当然の使命であり、責務でもあります。

 都市づくりに向けて大切なことは、夢を言葉にすることです。 

 困難なプロジェクトを「夢」で終わらせないためには、事業化への意欲を力強く表明し、行動に移す必要があります。これまでも実現への道筋が見えない段階から、掛け声倒れとの批判も甘んじて受ける覚悟であらゆる場面で事業の必要性を訴えてまいりました。声を上げることでプロジェクトへの関心が高まり、問題解決に向けた知見が集まり、行政内部からも障害を乗り越える方策が生み出され、道が開かれます。

 「夢を語り、挑む都市づくり」、これを令和4年度の津市政のテーマに掲げ、全力を尽くします。

 具体的な取組として、3つの戦略を展開します。

 

 1つ目の戦略は、対コロナ戦略です。

 万全を期したコロナ対策によって市民の命を守り、地域経済を支えることがなければ、まちの将来を語る資格はありません。感染防止策を継続して徹底するとともに、長引くコロナ禍の影響を受けた市民生活や地域経済をさらに丁寧に守り、支えてまいります。

 ワクチン接種については、昨年、医師会をはじめとする医療関係者との綿密な協議や集団接種における委託業者との連携、国や三重県とのワクチン供給に係る折衝を行うなかで、津市は企画、調整、管理を総合的に担い、最前線に求められる「現場力」を発揮し、医療関係者等との信頼関係を構築しました。3回目接種については、当初より、個別接種と集団接種を合わせて週2万回の接種体制を準備することができました。2回目接種から8か月後であった接種間隔の6か月への前倒し要請についても早期の接種が可能となるよう鋭意努力を重ねています。

 市民生活を守り、地域経済を支え続けるコロナ支援策については、これまで津市に交付された国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金42億円を活用し、水道料金の基本料金の通算6か月の無料化、観光、イベント、飲食、宿泊、旅行業等の事業者への支援金の給付、小中学校や幼稚園等が臨時休業などになった場合の家計特別支援金の交付など、きめ細かな支援を実施してまいりました。昨年末に新たに追加配分された10億円余りの交付金を活用し、「市民が必要とする対策や支援に対しタイムリーに対応する」、「その時々の状況に応じて支援を積み重ねて対応する」、「新型コロナありきの社会における将来を見据えた環境整備に対応する」という3つの大きな考えの下、きめ細かな支援を積極的に展開してまいります。

 オミクロン株による第6波など、幾度となく押し寄せる感染拡大の波によって大きく影響を受けている市民生活や事業者への支援が求められています。学校や保育所などにおいて感染が拡大したことにより登校や登園ができなくなった子どもがいる家庭へ特別支援金を交付し、家計の負担軽減を図ります。津市では初めてとなるプレミアム付デジタル商品券を販売し、タイミングを逃すことなく事業者や地域経済を支えるとともに、市民生活への支援にもつなげ、停滞している消費喚起を行います。

 新たな変異株の発生や今後の感染拡大の波を想定し、その時々の状況に応じた対応も必要です。市民の皆様が安心して受診できる安定した医療提供体制を維持するための支援や地域公共交通の経営継続のための支援、感染防止策やデジタル社会への対応に工夫して取り組んでいる事業者への支援など必要なときの必要なところへの支援を積み重ねてまいります。

 公共施設の感染拡大防止に資する衛生的環境もさらに確保します。教育、福祉、文化施設やコミュニティセンターなど35施設369基の空調設備を改修し、27施設72基のトイレ洋式化を進めます。

 

 2つ目の戦略は、インフラ整備推進戦略です。

 市民生活や地域経済を支える基盤整備に向けて、5つのインフラ整備を進めます。

 津興橋の架け替え整備は、旧橋の橋脚撤去を完了させ、新橋の橋脚設置工事に着手し、令和7年度の供用開始を目指します。

 大谷踏切の拡幅工事は、いよいよ近鉄の交差部分に取り組みます。これは、鉄道の運行に支障が生じないよう主に夜間に進める必要のある難易度の高い非常に大きな工事となり、3年ほど要するものではありますが、可能な限り早急に工事が完了するよう着実な事業推進を図ります。

 香良洲高台防災公園は、これまで進めて来た雨水排水路や法面の整備工事を進めることに加え、上下水道とトイレを完備し一時的な避難場所として利用できる施設と、それに併設する備蓄倉庫を高台に建築する工事に着手します。

 雨水管理総合計画に基づき推進してきた浸水対策事業は、令和元年度からの10年間で100億円の事業費を見込んでおりましたが、国が新たに創設した個別補助事業である「大規模雨水処理施設整備事業」に半田川田排水区及び藤方第二排水区が県内で初めて採択されたことから、雨水幹線築造を半田川田排水区で6年、藤方第二排水区で3年前倒しできることとなりました。浸水を軽減する効果の早期発揮に向け、事業費を140億円に増額し進めてまいります。

 中勢グリーンパークは、カフェレストランや自動販売機、休憩所をはじめ、日除けスペースや芝そりゲレンデなどを設置します。飲食店などの収益施設を民間事業者が整備し、その施設から見込まれる収益の一部をトイレなどの公共部分の整備費用に充てることで市負担額の軽減を図る「Park-PFI(公募設置管理制度)」を活用したこの事業を、来年4月1日の施設のオープンに向け着実に進めてまいります。

 さらなる将来のインフラ整備に向けた5つの「都市の未来図」も描いてまいります。

 まずは大門・丸之内地区です。4月下旬オープン予定の「ホテル津センターパレス」により、新たな価値が加わることで、この地区の姿が大きく変わろうとしています。既に国の「官民連携まちなか再生推進事業」を活用した基礎調査に着手しました。大門・丸之内地区の将来像を描くため都市計画の観点から調査分析し、地権者や商店主、企業、まちづくり会社、商工会議所などの民間と行政が連携して「エリアプラットフォーム」を創設することでまちづくりを進めようとするものです。ゴールは、まちの未来の姿を描き、目指す土地利用の方向性を次期都市マスタープランに反映させることです。必要とあらば都市計画を変えていくことも視野に入れ、思い切った未来ビジョンを策定します。

 津駅周辺でも新たなプロジェクトが動いています。津駅東口のビルや駅前広場の姿が現在の形になって50年が経過しようとするなか、バスやタクシーの発着、自家用車や業務用車両の出入り、歩行者の回遊など駅周辺の道路空間の利用状況が変化してきています。令和2年5月に道路法が改正され、駅ロータリーのバスやタクシーの乗り場を道路附属物として道路事業で整備し、ひいては自家用車の送迎スペースや歩行者空間を拡張するなど、未来を見据えた再編事業に取り掛かるチャンスが訪れました。時代に求められる機能を備えた津駅とするため、令和2年7月に県からのお声掛けにより津市も参加した「津駅周辺道路空間検討会」での議論が始まりました。令和3年度からは国・県・市が共同で設置する「検討委員会」に発展し、交通拠点の機能強化や駅周辺の歩行空間の拡張により、賑わいをつくり出す方策等の検討が進んでいます。

 国や県の津駅東口における事業の地元調整に協力するにとどまらず、津駅西口の再整備に向けた津市独自の調査も同時に進めることとしました。津駅西口も西部丘陵地の住宅開発に伴う利用者の増加による混雑の緩和や通行車両の安全確保への取組などが求められています。津駅西口の利便性の向上や東西連携の在り方を含め、津駅が県都の玄関口にふさわしい姿になるよう国や県との連携を深めてまいります。

 河芸町島崎町線は、伊勢湾岸を南北に貫く道路として、平成23年度に事業化された津松阪港海岸栗真町屋工区の堤防整備と一体施工する三重大学東側から建設が始まりました。志登茂川河口付近から北に向かう形で建設が進められるなか、南に向けて志登茂川河口に橋が架かり、江戸橋三丁目と島崎町が直接つながらなければ、国道23号の渋滞解消には至らないと、「第3の江戸橋」の実現を一貫して県に要望してきました。平成29年からは津市が河芸の漁港から上野地区海岸の市道を建設して北進のスピードアップを図り、県に対して志登茂川を南に渡る架橋の着工を粘り強く求めました。そして、ついに今年度、県において橋梁区間を含む道路予備設計と路線測量、地質調査の予算が措置されたことで、北は道路事業で進めながら、同時に南も街路事業で着手する予算が確保されることとなり、架橋の構想図が設計図面へと変わる局面を迎えました。県事業への負担金の予算措置を講じるとともに、津市の職員を県の津建設事務所に派遣するなど事業推進を図ってまいります。

 中勢バイパスは、交通安全対策事業として南河路交差点の直線レーンの設置に加え、久居相川、半田東、久居野村の各交差点を中心とした区間に続き、令和2年度から長岡宮ノ前交差点の部分4車線化の工事が進んできましたが、次に事業着手された大里窪田町出口交差点の立体化は、初めて交通安全対策事業ではなく道路改築事業としての予算で進められることとなりました。中勢バイパスの全線4車線化は道路改築事業として行われるものであり、暫定2車線全線開通に先立ち道路改築事業の予算が充てられたことは、中勢バイパスの全線4車線化に向けて大きな第一歩が示されたことを意味するものです。全線4車線化の早期実現に向けた事業推進を国に働き掛けてまいります。

 一級河川雲出川の整備については、平成27年度より下流部における堤防の強化や河道掘削が開始されましたが、国土強靱化予算が活用されたことにより、当初10年程度を要すると見込んでいたものが7年ほどで完了する目処が立ちました。着手が早まることとなった中流部における河川整備は、一般的な河道整備に加えて下流部の氾濫リスクを低減するための洪水調整機能の確保に向け、平時は田畑等として活用し、洪水時のみ人工的に水を貯める計画遊水地の整備など、流域全体で被害を軽減させる治水対策を進めていくという壮大な事業を含みます。地域の皆様の財産に関わる事業であることから、津市も国と共に丁寧に御説明申し上げ、流域治水による防災・減災対策の推進について御理解いただけるよう努めてまいります。

 

 3つ目の戦略は、未来の都市づくり戦略です。

 社会が大きな変革を遂げようとしている今、世界や時代の潮流を的確に捉えた未来の都市づくりに挑んでまいります。

 リニア中央新幹線は、2027年に東京・名古屋間が先行開業し、最短で2037年には名古屋・大阪間の開業が予定されており、三重県においては亀山市域を三重県駅位置候補とすることが決定しました。これは津市においてもリニア駅への交通アクセスを含め、都市づくりに大きく関係するものです。市民生活や地域経済にもたらすリニア駅の影響を調査し、津市としてそれをどのように受け止め、どのように展開するのかを検討するための調査を開始します。

 

 自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)も都市づくりや行政の市民サービスに大きな影響を及ぼします。市民により利便性の高い行政サービスを提供するため、自治体DXの確立に向け大きく一歩踏み出します。行政手続をワンストップで完了できるマイナポータル(政府の運営サイト)と連携したオンライン化の取組に加え、行政内部の効率化を図るAI―OCR(AI技術により高精度な文字認識が可能な機能)やRPA(人が行うパソコン操作をソフトウェアのロボットが代替して自動化するもの)の連携による業務の一部代替などの津市における利用可能性の検証を行い、可能なものについては順次導入してまいります。

 気候変動問題の解決は世界規模の重要課題であり、地方公共団体においても脱炭素への取組を加速させる必要があります。豊かな自然と都市機能が共存する津市は、市域における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)の実現を目指し、市民や事業者と連携して環境に配慮した賢い選択と行動を最優先に考える価値観を広げていく取組を進めます。国全体が挑む技術革新を注視しつつ、地球温暖化対策への取組を地域課題の解決の機会とも捉え、本市が持つ地域のポテンシャルを活かした持続的都市の発展や公共サービスの在り方について研究し、地域の未来に責任を果たすべく、地域脱炭素の実現に向けて取り組んでまいります。

 

 以上、3つの戦略について申し述べました。これらの3つの戦略を含め、各分野の施策・事業については、令和4年度当初予算の提案理由説明において御説明申し上げます。

 

 公正公平な市政の確保に向けては、昨年12月に制定した津市公正公平な市政の確保に関する条例の第10条にある「透明性と自浄機能を維持する」組織、つまり隠し事がなく自分で自分を律し、健全な方向へ自らを導くことができる組織を築いてまいります。既に実施した建築施設等の少額修繕の見直し、工事業者の地元調整のルール化に続き、4月からは適正な事務執行体制を強化する財産活用・建築修繕支援担当と補助金審査担当を設置するとともに、人権担当理事と地域調整室を廃止し、人権施策は市民部長が、地域との連携は新たに設置する交流連携担当理事が統括する市民部の組織改編を実行します。

 要望や不当要求に発展する恐れのある事案については、初期の段階から私や副市長を含め、幹部職員や担当職員が組織として情報を共有し対応する。実効性のある研修等を行い職員の対応能力、資質向上を図ることで、職員が自らを律し、一人一人が誰から見ても毅然とした態度で公正公平に職務を遂行する。そして、組織として一体となり、揺るがぬ姿勢を堅持する。それが自ら浄める力のある組織です。一人一人が緊張感とともに自信を持って明確に判断しながら、一体となって自分たち自身が安心して働くことのできる組織を作り上げ、市民の皆様から信頼される組織に生まれ変わるという決意を新たに改革を進めてまいります。

 

 結びに、令和4年度においても、津市政がコロナ対策に万全を期することは当然のことです。同時に、感染症を契機として社会が大きな変革を遂げようとしているなか、このまちで暮らす市民がこれからも豊かで快適な生活を営むことができるよう、将来を見据えた施策を実行に移すときでもあります。

 目まぐるしく変化する社会情勢の下、常にまちの未来はどうあるべきか意識し、選び抜いた施策の実現に向け知恵を絞り、行動を起こしてまいります。

 市民の皆様、議員の皆様の温かい御支援、御協力をお願い申し上げます。

 

 


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