「広報津」第409号(音声読み上げ)津市人権教育広報 あけぼの 第34号

登録日:2023年2月16日


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折り込み紙3

津市人権教育広報 あけぼの 第34号

令和5年2月16日発行

教委人権教育課 電話番号229-3253 ファクス229-3017

共に生きる社会をめざして

皆さんは、共に生きる社会とは、どのような社会を想像しますか。共に生きるとは、どういうことだと考えますか。

人にはそれぞれ違いがあります。障がいの有無、性別、年齢、国籍や文化など、あらゆる違いのある人が存在するのが社会です。しかし、今、私たちが生きている社会を見渡した時、何かができないから、障がいがあるから、国や文化が違うからなどと、分け隔て、時には排除しようとする現実があります。

そのようなことが起きてしまう背景には、相手のことを知らない、知ろうとしていない、そして関わろうとしていない私がいるのではないでしょうか。共に生きる社会とは、互いのことを知り合い、その存在を認識し、尊重し合うことによって、一人一人が価値ある存在であると実感できる、そのような人と人との関係でつくられた社会のことだと思います。

今回のあけぼのでは、共に生きる社会をつくるきっかけとして、まずは互いのことを知るための活動や場づくりに取り組んでいる人の思いや生き方を紹介します。そのような活動や場を意識してつくっていくことで、社会にある分け隔てに気付き、誰もがかけがえのない存在であることを確かめ合うことにつながるのではないでしょうか。

また、一緒に何かをすること、できることだけが共に生きるということではありません。たとえ近くにいなくても、一緒に何かができなくても、私たちは今の社会を共に生きているのです。

今回のあけぼのが共に生きる社会とはどのような社会なのかを考え、私にできることは何かを問いかけるきっかけになればと思います。

人権コラム お互いに尊重し合える社会に

2022年に開催されたサッカーのワールドカップにおいて、差別や人権問題を放っておかない姿勢を示した国や選手たちの姿がありました。差別解消は世界共通の課題です。

三重県では、令和4年5月に差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例が公布、施行されました(一部令和5年4月施行)。この条例では、人種などの属性を理由とする不当な区別または排除、制限を不当な差別と定義し、社会のあらゆる分野において人権が尊重されること、対話を通じて不当な差別やその他の人権問題の解消を図ることが重要であること、不当な差別をはじめとする人権侵害行為の禁止などを基本理念としています。

この条例が必要とされた背景として、今もなお特定の人を社会から排除するような偏見や差別がなくならない状況があります。また、三重県が令和3年度に実施した人権に関するアンケートによると、最近1年間で、差別待遇等の人権侵害を受けた(受けたと感じた)ことがあると答えた人に対して、その時どのように対応しましたかと尋ねたところ、何もせずがまんしたと回答した人の割合は57.5パーセントと過半数を超えており、市町の相談窓口に相談したと回答した人の割合は4.1パーセントに留まっています。津市としては、人権相談窓口について、これまで以上に周知を図り、相談者に寄り添った相談体制に努めてまいります。

条例では基本理念で差別の禁止を明示する一方で、罰則等の規制的な措置は設けず、対話を通じた差別の解消を重視しています。私たち一人一人が相手の言葉に耳を傾け、お互いに尊重し合える社会をつくっていかなければならないのではないでしょうか。

ごちゃまぜな空間をつくりたい。精神障がい者ソフトバレーボール体験会を通して

令和4年10月2日、障がいのある人ない人、さまざまな国籍の人、地域に住む子どもや大人など多様な人が西橋内中学校の体育館に集い精神障がい者ソフトバレーボール体験会が開催されました。この体験会を主催したピアサポートみえの杉田宏さんと細野晶代さん、精神障がい者バレーボールチーム、チューずデイず監督の海野健さんから、この体験会を開催するに至った経緯や、この体験会に込めた思いを伺いました。

体験会主催者へのインタビュー

ぴあサポートみえの、細野晶代さんと、杉田宏さんへのインタビューです。 

体験会を開くきっかけは

杉田さんのコメント 私自身は子どもの頃から足が不自由でした。バレーボールに参加する機会もありませんでした。でも精神障がい者バレーボールチームチューずデイずの練習試合を見に行ったときに、両チームが励まし合ってプレーを楽しむ様子を見て、もっといろいろな人が集って同じ空間でバレーボールができればと思いました。

どのような体験会を目指したか

杉田さんのコメント 私はこの体験会を、多様な人々が集える、ごちゃまぜな空間にしたいと思っていました。でも、そのイメージが細野さんや実行委員会の人になかなか伝わりませんでした。だからこそ、分かり合えるまで対話することが大事だと思いました。

細野さんのコメント 杉田さんから、中学校の体育館で開催したい、地域の子どもや大人も参加できる場にしたい、と聞いた時、私はそのことに何の意味があるのか理解できませんでした。なぜなら私は障がいがある人たちとサポートする人たちが交流できる場が作れたらいいと思っていたからです。でも、学生時代はバレーボールの授業に参加する機会もなかったし、参加しても周りの人に迷惑をかけると思ってきたという杉田さんの思いを知ったとき、私が考えていた形では、共に生きる社会にはつながらないと感じました。そして、杉田さんの言う多様な人々が集えるごちゃまぜな空間をみんなで一緒につくっていけたらと思いました。

杉田さんのコメント 皆さんの中には、障がい者と一緒にと言うと、身構えてしまう人もいるかもしれません。また、障がい者の中には、人と関わることに不安や戸惑いを感じる人もいると思います。それでも、体験会では多様な人々が集い、バレーボールを楽しむことができました。一緒にバレーボールをすることを通していろいろな人が関わり合うことで、お互いを理解する入り口になったのではないかと感じています。

参加者の声

精神障がい者バレーボールチーム監督へのインタビュー

チューずデイず監督の海野健さんへのインタビューです。 

精神障がい者バレーボールに携わるきっかけは

私は中学生からバレーボールを始めて、高校、専門学校、社会人クラブチームとプレーしてきました。10数年前、知り合いから、あるご夫婦を紹介されました。そのご夫婦は精神障がい者バレーをやっていて、指導ができる人を探していました。私はそれまで精神障がいのある人と関わった経験はありませんでしたが、そのチームは東海大会で勝ち進むために指導者を探しているということで、何か力になれたらと思って引き受けました。

監督になって気付いたことは

まず感じたことは、一人一人の個性が強いな、ということでした。集合するときに集まれない人がいたり、練習中に寝転がったりする人もいましたが、みなさんはどうしたいですかと聞くと、東海大会で優勝したいと言われたので、それを目標に練習をしました。1年目の大会では緊張して練習でやっていたことを全く出せず、残念ながら1回戦で負けてしまいました。

その夜の反省会では、子どもの頃の話や家族の話、偏見や厳しい見方をされた経験も聞かせてもらいました。そうして、それぞれが色々なことを抱えさせられながら、懸命に生きているんだなと気付いたんです。何より、バレーをしているときはみんな元気な声を出してプレーして、笑っていられる。この時間を心から楽しんでほしい、と思いました。それから現在まで私も共に楽しませてもらっています。これまでには、東海大会で優勝したり、愛媛国体へ出場したりもしました。

体験会を通じて感じた思い

ピアサポートみえから体験会について相談があり、この機会を通じてチームのメンバーと関わる人が広がったり、一緒にできる人が増えたり、最近減少しているバレーをする人を増やすことにもつなげたいという思いで関わらせてもらいました。最初は、あまり関わったことがない人や中学生たちから、チームのメンバーや精神障がいのある人たちはどう見られるだろうか、という不安もありました。

でも、チームのメンバーも他の参加者も本当に楽しそうに活動している姿を見て、そのような思いも消えていきました。

この体験会に集まった人のように、共に楽しむことを通して互いに少しずつ分かり合うことで、よりよい社会をつくっていくことにもつながると感じました。

次回は3月11日に伊賀市青山中学校での体験会を予定していますが、これからもこのような取り組みを続け、さらに広げていけるといいなと考えています。

取材者の感想

ごちゃまぜな空間とは、さまざまな違いのある人が集い、共に活動することを通してお互いに知り合う場であり、こうした機会が入り口となって、ありのままの自分・ありのままの相手を認め合い、分け隔てられることのない共に生きる社会に近づけるのだと感じました。

シリーズ人・ひと

今回は、一般就労をめざす障がい者の就労移行支援事業(働きたい人が働くための準備支援)をおこなっている事業所、社会福祉法人 聖マッテヤ会 ふらっと・つぅの井谷圭さんと、北川ゆかりさんから、お話を伺いました。

ふらっと・つぅでおこなっている就労移行支援事業について教えてください。

井谷圭さんのお話

ふらっと・つぅでは、障がいがある人が働くための職業訓練を行うと共に、ご本人の特性を見極め、一般企業等への橋渡しをしています。また、雇用開始後も企業訪問や面談を行い、働き続けることができるように最長3年間の就労定着支援事業もおこなっています。

就労予定の企業には、職業訓練の中でうまくいったことやいかなかったこと、得意なことや苦手なこと、働く中で起こりうることなどの就労者自身の特性を伝えています。そのときに、ご本人が自分の特性をまとめたナビゲーションブックや、支援者が作成したサポートブックを渡し、職場の皆さんにも一緒に働く準備をしてもらいます。

また、しばらく働いていくと、うまくいかないことが出てきたり、仕事に慣れてできる仕事が増えたりすることもあります。どうすれば働きやすくなるか一緒に考えていただくことが、継続して共に働くことにつながります。

新たに取り組んでいる事業について教えてください。

今年度、県の委託を受け、障がい者の短時間雇用促進モデル事業に取り組んでいます。これは、1週間に20時間未満でも働ける場を広げる事業です。働きたいという意思はあるけれど20時間以上働くことは難しいという人でも働ける場をつくれるように企業に働きかけています。

就労移行支援事業によって就労した人が、どのように働いているか教えてください。

北川ゆかりさんのお話

私が担当していた人で、約2年前から市内で給油所などを経営する企業で働いている人がいます。今では、職場になじまれていますが、それまで実習に行ったところでは、どの職場にもなじめず就労にはつながりませんでした。ご本人に話を聞くと、学校での人間関係がうまくいかなかった経験から、同世代の人との関わりが苦手なことが分かってきました。

そこで選んだのが今の職場です。職場は年上のパソコンに精通した人ばかりで、仕事もご本人が得意なパソコンを使った業務だったからです。ご本人は、採用が決まって、いつから働けるかと聞かれたときには、明日から働きたいですと答えたそうです。今も、働くのは楽しいです。ここでの仕事を続けていきたいですと言っています。

社長も含め職場の人たちは、障がいのある人と一緒に働いたことがなく、戸惑いもあったそうです。でも、一緒に仕事をし、彼のことを知っていくうちに、職場の仲間として信頼して仕事を任せられると感じるようになったそうです。

コミュニケーションが苦手な彼ですが、職場の皆さんに出会って、会社の食事会に参加したり、給料で買った自転車の話をしたりするようになったと聞き、ご本人にとって職場が安心できる居場所になっているのかなと感じています。

取材者の感想

集う場や共に働く場を意図的につくることが、共に生きる社会を目指す入口になっていくのだと感じました。私も、日常生活の中でいろいろな人と関わり合い、互いのことを知り合うことを通して、多様な人が分け隔てられることなく、地域の一員として当たり前に存在し共に生きられる社会(インクルーシブ社会)をつくっていく一人でありたいと思います。


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