施政方針(令和5年2月/令和5年第1回津市議会定例会)

登録日:2023年6月8日


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 令和5年第1回市議会定例会の開催に当たり、令和5年度の市政運営に臨む私の方針を申し述べ、皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

 

 平成31年4月に市民の皆様の3期目の市政運営への負託を受けてから、早4年が過ぎようとしています。折しも「平成」が終わり「令和」が始まるという新しい時代の幕開けと時を同じくして始まったこの4年間。ワクチン接種の促進をはじめとする新型コロナウイルス感染症対策に大半を費やし、人的資源を最大限活用して市民や事業者を守るための施策を継ぎ目なく積み重ね、加えてロシアによるウクライナ侵略や円安などを要因とする物価高騰に対しても即応しながら、その一方で都市づくりを進めてきた。そういった4年間でありました。

 対コロナにおいては、保育所、幼稚園、小中学校等での出席停止や臨時休業による家計への負担軽減を図る特別支援金をはじめ、医療機関への新型コロナウイルス感染症対策経費に対する支援、空調設備の改修やトイレの洋式化による施設の感染対策などを進めてまいりました。社会経済活動の回復が進みウィズコロナが新しい段階へと進展していますが、今後も医療機関における感染者の受け入れ体制の保持は必要になるものと思われます。また、本年1月からは、コロナの影響に対する支援策である特例貸付の償還も始まっていますが、長引くコロナ禍で償還が困難となっている市民や立ち直りが遅れている事業者への丁寧な対応が求められています。

 物価高騰に対しては、生活者支援として、所得制限を設けることなく給付した子育て家庭物価高騰対策支援金をはじめ、家計負担を増やすことなく給食の質を維持するための支援などを行ってまいりました。国が行う子育て世帯生活支援特別給付金や住民税非課税世帯等への価格高騰緊急支援給付金の支給にも速やかに取り掛かるとともに、国の給付金の対象とならない住民税均等割のみ課税世帯等に対しては、津市独自の支援策として生活応援給付金の給付を今まさに進めているところです。
 事業者支援は、エネルギー価格の高騰が経営を圧迫している中小企業や小規模企業者、施設の運営経費や送迎車両に係る経費が増加している介護保険・障害者支援施設、肥料価格や飼料価格の高騰の影響を受けている農業者・畜産事業者、燃油価格高騰の影響を受けている地域公共交通事業者などに対するきめ細かな施策を重ねてまいりました。
 今後も、市民の暮らしに必要な食品をはじめとする生活必需品などの値上がりが続くものと予想され、引き続き支援が必要となってまいります。

 

 これからの津市の未来を築く。そのために目の前にある津市を取り巻く社会情勢の動きを見据え、引き続きコロナ対策を講じつつ、今後もしばらく続くことが見込まれる物価高騰の影響を受ける市民生活と地域経済を守るための施策に取り組み、その上で未来に向けて大きく変化しようとする社会に対応する政策を展開してまいります。
 これまで進めてきた都市づくりは、さらに一歩踏み出し、目指すべき都市の姿の具現化に向けて取り組んでまいります。また、これからの未来を築き支えていくこどもを社会のまんなかに据え、よりこどもを産み育てやすい津市にしてまいります。さらに、地域脱炭素や新たな土地利用、市民生活の未来を支えるDX(デジタル・トランスフォーメーション)といった未来への課題にもしっかりと向き合ってまいります。

 

 今、申し上げた挑むべき未来の津市へつなぐ3つのテーマへの取組について、令和5年度は市長選挙を控えておりますので、当初予算については、既に取組の方向性を明らかにした事業、これまで手掛けてきた事業を盛り込みました。この施政方針では、これらの事業について申し上げることといたします。

 

 1つ目は、都市の未来です。

 市民の命と財産を守る都市の基盤づくりに向けては、三重県内で初めて国の大規模雨水処理施設整備事業に採択された浸水対策事業の半田川田排水区及び藤方第二排水区雨水幹線築造を着実に進めてまいります。香良洲高台防災公園は、今年度末に事務所機能や休憩所機能、備蓄機能を有する施設と屋内運動施設が完成し500人の屋内避難が可能となります。令和5年度は多目的グラウンドや多目的広場、トイレ等の工事に取り掛かるとともに、火災発生時の消火や避難者の生活用水を確保するための耐震性防火水槽を設置します。また旧三重武道館跡地に建設中の北消防署は、令和5年度末の開署に向けて工事を進めてまいります。

 道路ネットワークについては、都市計画道路の上浜元町線をはじめとする旧10市町村をつなぐ道路の整備を進めてまいりました。美杉町下之川地域の新たな幹線道路となる下之川バイパスは、令和11年度の完成に向け、引き続き脇ヶ野篠ヶ広線の新設改良工事を進めます。大谷踏切については、昨年8月にJR踏切道の踏切保安施設の設置完了によりJRの工事が終了しましたので、翌月の9月からJR踏切道を工事用道路として活用し、近鉄架道橋拡幅工事の作業用の架台を設け、仮の橋桁を支える杭の設置を行っています。令和5年度は、仮の橋桁の設置と旧の橋桁の撤去を行うとともに、新しい橋台の建設に向けた旧の橋台の撤去工事を開始し、踏切西側の市道一身田小学校大谷町線の拡幅工事にも着手します。津興橋は、令和2年度から進めていた旧橋の橋脚の撤去を昨年4月末に完了させました。令和5年度は、新橋の橋脚1基を完成させ残り2基の橋脚設置に取り掛かり、右岸側の旧橋の橋台を撤去するとともに、新橋の橋台設置を進め新橋上部工にも着手し、令和7年度の供用開始に向けた工事を着実に進めてまいります。

 都市拠点については、久居アルスプラザの整備など、副都市核である久居駅周辺地区の都市機能の拡充が完了しましたので、都市核を構成する津駅周辺や大門・丸之内地区のまちづくりを進めてまいります。
 津駅周辺は、昭和48年に今の駅ビルや津駅西口ロータリーができてから50年が経過するなかで、国と県との連携の下、昨年7月に津駅周辺道路空間再編検討委員会を設置し、県が昨年10月に行った賑わい創出に向けた社会実験を踏まえた交通結節点の機能強化の検討などを行っています。国のバスタプロジェクトにおいて、1都道府県に2つ以上のプロジェクトが進行しているのは、東京都、神奈川県、三重県だけであり、三重県では近鉄四日市駅交通ターミナルと津駅周辺の2つのプロジェクトが進行し、津駅周辺についてはバスタプロジェクトにつながる機能強化の必要性等の調査が進められます。
 大門・丸之内地区は、官民の多様な関係者の参画の下、来月には未来ビジョンを策定いたします。このビジョンを基に、官民連携の取組を展開する実践的な場として賑わい創出実証実験や情報発信等を行うとともに、エリアの価値を高めるまちの実現に向けて、地域の方々の意向を伺ってまいります。

 リニア中央新幹線の開業への具体的な動きも出てまいりました。リニア中央新幹線建設促進三重県期成同盟会が県内駅位置を亀山市内の3か所から選定するようJR東海に要望され、令和5年度中に概略のルートと駅位置が示される見込みとなっています。三重県駅を中心とした広域的な都市づくりを意識し、地域の新たなポテンシャルについて考察を深めてまいります。

 

 2つ目は、こどもの未来です。

 少子高齢化が進展し、人口減少に歯止めがかからないなか、津市はこれまでもこどものための施策に取り組んでまいりました。例えば、昭和48年に旧津市が創設し今なお県内で津市だけが実施している妊産婦医療費助成制度があります。現在のように人口減少が課題として広く認識されていないなか、乳幼児や障がい者などを対象として行っていた医療費助成の対象を拡大し、妊産婦の保健の向上に寄与することを目的に創設したこの助成制度は、こどもまんなか社会に向けた極めて先行的な取組です。

 近年においては、出会い応援事業や不妊治療の保険適用に伴う新たな特定不妊治療費助成など、さらに一歩踏み込んだ施策も展開してまいりました。また、保育所等の定員拡大や認定こども園の設置等による待機児童ゼロの維持、放課後児童クラブの整備やその運営補助の増額など子育てしやすい環境づくりを深化させてきました。
 コロナ禍や物価高騰により厳しい状況が続くなかにおいても、こどもや安心して子育てできる環境のことを考え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対しては、臨時休業措置等に伴い状況に応じて1万円または2万円を給付する家計特別支援、給食費3か月分相当を給付する子育て世帯家計支援などの施策を実施してきました。物価高騰に対しては、0~18歳の児童一人当たり12,000円を給付する子育て家庭物価高騰対策支援などに取り組んでまいりました。引き続き、保育所や小中学校等の給食物価高騰対策を講じてまいります。

 国において昨年実施することが決定された出産・子育て応援給付金は、いち早くお届けすることを最優先に当面は現金給付を継続するとともに、妊婦・子育て家庭に寄り添う伴走型相談支援を着実に進めてまいります。また、高茶屋地区において令和7年の開園を予定している民間の認定こども園の施設整備への支援、とことめの里一志に移転する一志放課後児童クラブの整備などを行い、子育て環境のさらなる充実を図ってまいります。小中学校の校舎の長寿命化については、年3校の改修を実施してきましたが、令和5年度は2校の改修工事に加え5校の改修工事に向けた実施設計を行い、こどもが安心して学習できる環境づくりを加速化してまいります。

 本年4月からは、国のこども家庭庁も動き出します。こどものための政策が総合的に推進されることになります。津市においてもこれまでとは違うフェーズの施策を展開し、こども政策の充実を図り、設置が努力義務化された「こども家庭センター」の開設に向けた調査研究も進める必要があることから、子育て推進課子育て推進担当を同課こども・子育て政策担当に改編いたします。地域の実情に応じたこども・子育て施策を推進するためには、多様な分野での視点、取組が求められます。あらゆる部局において常にこどもの未来を見据え施策の立案を行っていくことが、これからのスタンダードになります。

 昨年5月に人口減少対策会議を設置し、出生率や都市の魅力の向上に資する新たな取組について様々なアイデアを基に、事業化に向けた検討を進めています。さらに協議・検討を深め、一つ一つを具現化してまいります。

 

 3つ目は、地域の未来です。

 まずは、環境です。
 昨年8月に地域脱炭素宣言を行い、非常に多くの反響をいただき、様々な民間企業や団体の方々から地域脱炭素への具体的なアイデアや取組などの提案をいただいております。賛同の御意思を寄せてくださった民間企業等とのパートナーシップ協定を締結し、ペットボトルの水平リサイクル(BtoB)や羽毛製品のリサイクルの推進など既に具体的なアクションを展開しています。
 令和元年に国が二酸化炭素の削減等の多面的機能を有する森林の適正な管理を促進する新たな森林経営管理制度を創設しました。津市はその創設と同時に未整備の人工林解消に向けた事業をスタートさせ、全国トップクラスの速さで事業を進めています。令和3年度からは5ヘクタール未満の小規模森林の間伐や植栽を支援する小規模森林整備促進事業を開始しました。加えて、地域産材を使用して市内に新たに個人住宅を建築する方を支援する木材利用促進事業にも取り組み、地域産材の需要拡大や利用促進を図るなど、国から配分される森林環境譲与税をほぼ全額活用し、国土と環境を守り育む森林資源の保全にも取り組んでいます。地域脱炭素は、様々な分野に関わるテーマであり、たとえ一人一人の二酸化炭素を削減する取組が小さくてもその取組を重ね、発展させていくことが地域脱炭素社会の実現への道を拓きます。

 次に、土地です。新型コロナウイルス感染症の感染拡大など時代が変化する過程で、所有者自らが山、田畑、商業地を何とかしたいと真剣に考え始めたことにより様々な土地の課題が浮かび上がってきました。山林については、令和元年度の芸濃地域を皮切りに進めてきた経営管理意向調査が、令和5年度に全地域に至るなか、経営管理権を設定した森林においては間伐などの森林整備を進めています。農地については、人と農地の問題解決に向けて地域で策定・実行されてきた「人・農地プラン」の策定が令和5年度から法定化され、目指すべき将来の農地利用の姿を明確化する「地域計画」を定めることとなりました。商業地については、大門・丸之内地区において新たな土地利用の在り方を含めて土地の所有者の意向を伺う段階となっております。

 受け継がれてきた環境と土地の明るい未来に向けた取組を地域と共に積み重ねてまいります。

 そして、市民生活の未来を支えるDX、デジタル・トランスフォーメーションです。
 デジタル技術を社会に浸透させて市民生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる可能性を持つDX。津市は、本年3月までに112の手続等をオンラインでできるようにするなど自治体DXを推し進めています。市民サービスの提供における申請、受付等のオンライン化やAI、RPA等による事務処理の効率化を図る自治体DXに留まることなく、あらゆる分野や場面において、デジタル技術による市民の利便性の拡大を図り、昨年実施したプレミアム付デジタル商品券の発行のような民間側と行政側の両面の価値観の変化を意識した施策の展開によって相乗効果を生むことが、地域DXの実現につながるものと考えます。

 

 そして、この3つのテーマを支えるのは、健全な財政です。

 合併直後983億円にのぼっていた臨時財政対策債、減収補てん債(特例分)を除く市債借入残高を令和3年度決算で567億円まで削減しました。産業・スポーツセンターの整備をはじめとする大型プロジェクトの実現において、元利償還金の7割が交付税措置される有利な借り入れである合併特例事業債を発行可能額710億円に対して、令和3年度決算までに647億円発行しましたが、そのうち271億円は既に償還いたしました。合併特例事業債の償還額は、令和5年度にピークを迎えますが、このピークを乗り切るために減債基金を積み増し償還に充てるなど財政の安定化を図るとともに、新設された大規模雨水処理施設整備事業補助や踏切道改良計画事業補助などの国の補助金の獲得にも積極的に動くなど、他の財源を確保して事業を展開する方策も講じてまいりました。
 これからも、市民の生活の利便性の向上と経済発展の基盤となる公共投資を安定的に続けるために、あらゆる術を活用して財源確保に努め、バランスのとれた財政運営を堅持してまいります。

 

 以上、3つのテーマとそれらを支える健全な財政について申し述べ、令和5年度当初予算に計上した本テーマに関わる事業についても言及いたしましたが、もとより市政に関わる各分野の喫緊の課題や市民生活・地域経済を支える他の施策・事業についても積極的に取り組むべきものです。この施政方針でお示ししたものを含め、各分野の施策・事業につきましては、令和5年度当初予算の提案理由説明において御説明申し上げることといたします。

 

 今、私たちを苦しめている物価の高騰は、しばらく続くことが予想されます。ウィズコロナも新しい段階に進展していますが、対コロナ政策は引き続き必要です。
 厳しい社会情勢にもしっかりと対応する、人の流れや地域経済を次の段階に推し進める、あらゆる分野においてこどもを社会の中心に据えた施策を重ねていく、未来への責任を果たす、これらが津市の未来をつくりあげていく上で重要なカギとなります。
 未来にあるべき津市の姿。
 それは市民の皆様がそれぞれの幸せを実感し、心豊かで笑顔あふれる人生を送ることができるまちです。その実現に向けて志高く市役所一丸となって取り組んでまいります。

 市民の皆様、議員の皆様の温かい御支援、御協力をお願い申し上げます。

 

 


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