所信表明(令和5年6月/令和5年第2回津市議会定例会)

登録日:2024年2月21日


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 市長4期目の就任後、初の市議会定例会の開会に当たり、今後の市政運営に臨む私の所信の一端を申し述べ、皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

 この度、市民の皆様の負託を受け、引き続き市政の重責を担わせていただくこととなりました。全ての市民が幸せを実感できるよう市政運営に全力を傾注してまいります。

 瞬く間に世界中に広がり、日常生活や地域経済を混乱に陥れた新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活、行動、働き方、人と人とのつながりなどの在り方に新たな局面をもたらしました。ロシアによるウクライナ侵略の影響は、遠く離れた日本においてもエネルギー価格や物価の高騰をもたらすなど世界のエネルギー情勢や経済を大きく変えてきています。温暖化による地球規模の気候危機に向けた地域脱炭素の動きも本格化し、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の流れが加速してきています。デジタル技術の社会への浸透は、AIがまるで人間のように対話形式で答えるサービスが次々と提供され、新次元へと進展しています。本年4月に、国立社会保障・人口問題研究所が公表した2070年の日本の将来推計人口の結果は、総人口が9,000万人を割り込み、出生率は1.36に低下するというもので人口減少がさらに進むことを如実に示し、これからの社会の仕組みに大きな影響を与えるものと思います。



 津市においては、平成の合併後、一体感の醸成や均衡のとれた地域の発展をテーマに合併時に約束された事業を進め、概ね完了した段階にあり、今、まさに、新たなまちの姿を描きはじめるタイミングにあります。
 そして、この時代の変わり目における市政運営は、これまでの延長線上に置くのではなく、新しい津市を創り上げていく、その強い覚悟を持って挑んでまいる所存です。
 人口減少や少子化といった課題や耕作放棄地を防ぐといった課題は、今、積極的な行動を起こさなければより厳しい状況に追い込まれます。決して現状に満足することなく、こうした課題に果敢に挑んでいく、そのスタートダッシュを、市民に最も近い基礎自治体として、どのような分野に照準を合わせていくのか。将来の津市政を展望し、新しいステージにおける津市の創造に向け進んでいくための、3つのビジョンを申し述べたいと思います。

 

 1つ目は、こども・子育て政策です。こどもを生み育てやすい社会をつくってまいります。
 国が、令和5年6月に提示した「こども未来戦略方針」案には、75年ぶりの保育士の配置基準の改善や児童手当の充実など歓迎する政策が盛り込まれましたが、残念なことにこれまで要望を重ねてきたこども医療費の無料化は含まれていません。こうした国が取り組まない領域においても、津市独自の新たな政策を構築してまいります。

 まず、市内で新たに保育士・幼稚園教諭等として就労する方に対する支援、保育施設における使用済み紙おむつの回収を開始します。
 保育施設の利用定員は、これまで入所希望者数の増を見据え、民間保育施設の御協力も得て、平成23年度以降1,302人の定員増を図ることにより、待機児童ゼロを継続してまいりましたが、本年4月1日、合併後初めて、57人の待機児童が発生しました。最近、民間保育施設で、保育士等が確保できないことにより、定員一杯の児童を受け入れることができない状況が生じてきています。そこで、保育人材を確保するため、新たに津市の保育施設に勤務する保育士・幼稚園教諭等に20万円を給付する保育士・幼稚園教諭等就労開始応援事業を創設します。
 公立及び民間保育施設における使用済み紙おむつの持ち帰りは、保護者の負担が大きく、保育士等においても管理やこども毎の振り分けを行うことへの負担が発生しています。使用済み紙おむつを保育施設で回収・処分する仕組みを構築し、保護者や保育士等の負担を軽減してまいります。

 次に、こどもや妊産婦に対する医療費助成制度の拡充、1か月児健康診査の無料化の早期実施を図ります。
 既に中学生まで実施している子ども医療費助成は、窓口無料化を中学生まで拡大し所得制限を撤廃します。県内で唯一津市だけが実施している妊産婦の医療費助成についても、所得制限を撤廃し窓口無料化を実施します。また、現在行っている妊婦一般健康診査、産婦健康診査の費用助成などによる妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援に、新たに1か月児健康診査の助成を加えます。

 さらに、子育てにおける心身の負担を軽減する施策を具体化してまいります。
 子育て応援ヘルパー派遣事業の創設を目指すとともに、男性の育児参加の促進にも力を入れてまいります。周りに家事や子育てを手伝ってもらえる人がいなくて困っている人がいらっしゃり、そうした負担が少子化につながっていきます。女性の就業継続や第2子以降の出生割合は、男性の家事や育児の時間が長いほど高い傾向にあるなか、日本における男性の家事や育児の時間は低水準にあります。仕事と生活を調和させるワーク・ライフ・バランスも推進し、育児負担が女性に集中する「ワンオペ」の改善など、子育てにおける心身の負担軽減策を展開してまいります。

 また、出会い応援事業の拡充、教員支援員、スクール・サポート・スタッフ及び部活動指導員の増員、小中学校のトイレの洋式化率の更なる向上や放課後児童クラブの整備の加速化など現在取り組んでいる事業も拡充、深堀りし、出会い・結婚・出産・子育てしやすい環境づくりをより一層進めてまいります。

 これらのこども・子育て政策を継続して展開していくためには、安定的な津市独自の財源が必要です。ボートレース収益金を活用した「こども基金」の創設を検討してまいります。

 

 2つ目は、まちなかです。まちなかの価値を高め、土地利用の可能性を広げる試みを実行します。
 津駅周辺は、駅から放射状に広がる津駅周辺道路空間整備広域ネットワークの構築に取り組みます。津駅東口はバスタプロジェクトが着実に事業化されるよう国や県と連携を密にし、回遊性の強化や賑わいを継続していく仕組みづくりの検討を進め、津駅西口の整備に向けては、令和4年度から取り組んできている基本構想の策定を完了させ、地域意向の確認に入ります。同時に、生まれ変わった津駅とそれにつながる道路網が相互に機能を発揮できるよう津駅とつながる広域的な道路ネットワークづくりを先行して進めます。大谷踏切の拡幅によって新たに生まれる車の流れ、それにつながる三重県が建設する志登茂川河口架橋の完成を最大限に活かした車の流れをイメージし、津駅前と志登茂川河口架橋を結ぶ「津駅前線」に加え、リニア中央新幹線の三重県駅も見据え、「広明町河辺町線」及び「内多清水ヶ丘線」も拡幅してまいります。また、津駅北において鉄道と立体交差する「下部田垂水線」については、構想の具体化に向けて動き始めます。
 リニア中央新幹線の三重県駅の開駅は、津市の新たな可能性を拓きます。津市、鈴鹿市、亀山市の市民にとって利便性が高く、地域経済の活性化につながるような三重県駅を中心とした広域的な都市づくりに対する意識を深め、鈴鹿市、亀山市と連携しながら市境にとらわれないまちを展望し、実現に向けた取組を進めてまいります。
 大門・丸之内地区は、未来ビジョンに基づく新たなまちづくりに挑戦します。エリアプラットフォーム「大門・丸之内 未来のまちづくり」を主体に、立町・大門大通り商店街の道路や丸之内商店街エリアの国道23号を活用した恒常的な人の流れや賑わいを創出するトライアルな取組を開始するとともに、津城跡については、未来にどのような姿を引き継いでいくのか、まずは、ホームページや広報津を通じた情報発信を行い、市民等から意見を伺いながら検討を進めてまいります。そして、中長期的な視点から地権者等の将来的な意向を踏まえたまちの実現に向けて都市計画を見直し、多様な土地利用を可能にします。

 

  3つ目は、未来の安心です。森林や農地を次世代に引き継ぐとともに、新しい産業用地をつくります。
 まずは、農地です。
 令和5年度から将来における地域の農業の在り方や農地利用の姿を明確化する「地域計画」を定めることとなりました。津市は令和6年度までの2年間で農業者、関係機関等と協議を重ね168地区で計画を策定し、それらを実行に移すことで新規就農や経営継承等への支援を促進し、担い手の確保・育成を行ってまいります。
 次に、山林です。
 津市は全国トップクラスの速さで森林経営管理制度の取組を進め、令和元年度の芸濃地域を皮切りに実施してきた経営管理意向調査は、令和5年度に全地域に至ります。森林の現況調査及び所有権の明確化、間伐の実施などをさらに進めるとともに、津市産の木材を主要部材に使用して新たに建築する木造住宅に対する支援等を行う木材利用促進事業もより一層推進してまいります。
 さらに、産業用地です。
 中勢北部サイエンスシティ、ニューファクトリーひさいにおける企業誘致が完了し、現在は民間の遊休地への誘致を図っていますが、人口減少対策における社会増に向けては、雇用の場を確保することが最も重要です。新型コロナウイルス感染症の拡大により一時的に産業用地の需要は減少したものの、現在は投資意欲のある企業や工場等の建て替え・増設を計画している企業からの問い合わせが増加傾向にあります。この流れを掴みニーズに応えるべく、柔軟かつ迅速に対応できる用地開発のノウハウや資金力等を持つ民間事業者が主体となった産業用地の整備を進めてまいります。

 

  以上、3つのビジョンについて申し述べてまいりました。このビジョンの達成は容易なことではありません。その道筋が明確に示されているものでもありません。しかし、夢で終わらせることなく「かたち」にしていくこと、それが4期目の市政に臨む私の責務であります。
 もとより津市政として取り組むべきフィールドはこのビジョンに留まるものではありません。消防・防災、健康・福祉、スポーツ・文化、市民活動・経済活動、地域脱炭素、DXの促進など、市民の暮らしを豊かにする、地域経済を支え発展させる施策・事業にも積極的に取り組んでまいります。

 

 政策を立案する過程においては、市民の皆様からの声を幅広く伺い、市役所と相互に作用し合うパートナーシップを築き上げてまいります。3つのビジョンの実現に向けては、様々な市民の思いがあります。これらの思いを柔軟に受け止めるとともに、積極的な参画をいただきながら政策立案を行う開かれた市政を展開してまいります。
 そして、職員とは、何を目的、ターゲットにすべきか、プライオリティをどこに置くべきかを一緒になって考え、進むべき方向性を共有し、共に望ましい道筋を明らかにしてまいります。折しも今年度から定年が段階的に引き上げられることを受け、職員定数を2,500人から2,750人に拡充しました。この拡充した定数を最大限に活かし、喫緊の課題に対処する部局や新しい業務を担う部局に配置するなど、職員が心身ともに健康で与えられた職務を遂行できる職場づくりを進め、総力を挙げて市民のために動ける組織を築いてまいります。

 未知なる新しい時代において求められるのはクリエイティブ、創造していく力です。その過程においては、市民や企業の皆様と行政とがきめ細かく連携し織りなす取組にこそ活路があるものと考えます。
 漫然とこれまでの市政の継続に安住せず、逃げず、怯まず、足を止めることなく、必ずやビジョンを実現させる覚悟をもって、「選ばれるまち・津市」の実現に向け取り組んでまいります。
 皆様の温かい御支援と御協力を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

 


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