「広報津」平成23年7月16日/第134号(音声読み上げ) シリーズ 津のひと・もの(10)

登録日:2016年2月25日

裏表紙

シリーズ 津のひと・もの(10)

熱い思いとこだわりがつくり上げる機械とひと

 たくさんの学生が行き交うにぎやかな江戸橋駅近くの通りを進むと、幾つかの工場が見えてくる。そのひとつの工業用工作機械を製作している工場で、勤務する東條米雄さん。
 東條さんは、工場長を務める傍ら、現在も現場で職人としてきさげ作業をする。この作業ができる職人は、世界の機械製造メーカーでも年々少なくなってきているという。
 きさげ作業とは、工作機械などを製作する際、機械などで切削加工した平面などを、さらに精度の高い面に仕上げるために、きさげという工具を使い、手作業でミクロン単位にごく少量ずつ削り取る作業のことをいう。製作の仕上げには、欠かすことのできない作業であり、仕上げ・組立作業の中でも重要な作業といわれている。職人の勘に頼りながら進める作業のため、十分に修練を積んで熟練した技術が必要となる。
 「機械加工では、その時の温度や湿度、加工時に発生する熱によって材料にゆがみが出やすくなるんです。その誤差を感じ取り、削っては測定、削っては測定という作業を繰り返します。きさげ作業での加工は、手作業のため摩擦熱が発生しにくくゆがみを抑えることができます。そのためミクロン単位の精度を出すことができます」
 近年、コスト優先の風潮もあり、少なくなっているこの作業。見た目の素晴らしさだけではなく、商品の耐久性や正確性にも影響するという。
 また、東條さんは自分の技術を若い世代へ継承することにも力を注いでいる。3年ほど前から、会社や地域の人材育成のための講習会「ものづくり道場」を開講し、県内の大学生なども受け入れ、実技などで熟練の技と知識を伝え続けている。「まだまだ私の技術も未完成ですが、失われつつある伝統技法を少しでも次の世代の人たちにつないでいけたらと思っています。技術の習得においては、ゴールなどはないですから、私もまだまだがんばらなくてはなりませんね」と笑顔で語る。
 「人間は、無限の可能性を持っていると思っています」と語る東條さんは、社訓でもある「BeProfessional(プロ意識に徹する)プロ意識とは常に積極果敢に自らの仕事を極めようと努力するものであり、それは自己完成への道である」この言葉を常に意識しているという。工場長、職人、そしてプロとして妥協しない。
 製作への熱い思いとこだわりが完成させた工作機械と、伝統技法の技を東條さんから受け継いだ次の世代の職人たちが、これからも地域をはじめ日本の産業を支え続けていくことは間違いない。


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