「広報津」平成24年12月16日/第168号(音声読み上げ) 歴史散歩(79)

登録日:2016年2月25日

 このページは、音声読み上げソフトウェアに対応するため、語句のなかで一部ひらがなを使用しています。
 広報津(PDF版)は 広報津(PDF/13MB)からご覧いただけます。

 

裏表紙

歴史散歩(79)

国津[くにつ]神社のケヤキと石造物

 美杉地域の西部に位置し、奈良県と接する美杉町たろうは、東に大洞山[おおぼらやま]、西に倶留尊山[くろそやま]がそびえ、ムササビやオシドリなどの生息も確認されている大変自然豊かな場所です。中央には名張川が南から北に流れ、その名張川を挟んで国道368号と平行に走る、市道たろう旧道線(旧国道368号)に面した高台に国津神社があります。
 境内へ続く石段を上がり拝殿を正面に見ると、まず左手(南側)に、樹齢800年とも1000年ともいわれる、ひときわ立派なケヤキが目に入ります。このケヤキは、樹高が約28メートル、幹の周囲が約8メートル、南北の枝張りが約15メートルもある大きなもので、県の天然記念物に指定されています。
 以前は東にも大枝が張り出し、現在よりもさらに見事な枝ぶりでしたが、残念ながら平成21年の強風で折れてしまいました。今年1月にこの枝を切除し、幹の中央の亀裂からケヤキを守るために、ワイヤーを巻き直したり肥料を与えたり手厚い手当てが行われ、木は以前の勢いを取り戻しました。
 その反対側の境内北側には、鎌倉時代の作といわれる国の重要文化財の石造十三重塔があります。この石塔は、高さが3.38メートルあり、軸部の四方には浮き彫りの一種の半肉彫りで阿弥陀[あみだ]如来が刻まれています。もともと同じ美杉町たろうの日神地区の山王[さんのう]権現の境内にあったものが、明治40年(1907年)に周辺の神社を統合した際に、国津神社に移されたのだそうです。そのためか、石塔に彫られた阿弥陀如来の表情は、日神地区に残る石仏の優しい表情にとてもよく似ています。
 また、十三重塔のすぐ右隣には市指定有形民俗文化財の種子碑[しゅじひ]があります。種子碑とは、梵字[ぼんじ]で仏を彫った碑で、国津神社の種子碑も参道に面した表側に阿弥陀如来を表す梵字が刻まれ、その下には、独特の形をした線刻の蓮台[れんだい]が彫られています。高さは約1.1メートルで、隣に立つ十三重塔の3分の1ほどですが、この辺りの種子碑の中では、美杉町みたけの真福院にある弘長[こうちょう]供養碑に次ぐ大きさです。鎌倉時代の弘長年間の作とされる弘長供養碑と、この種子碑の作風がよく似ていることから、国津神社の種子碑も同じく鎌倉時代の作と考えられています。
 十三重塔も種子碑も、大洞山から産出された凝灰岩で作られており、その作風は、周辺一帯に点在する石造物の特色をよく表しています。一度この地を訪れ、豊かな自然と歴史に触れてみてはいかがでしょうか。

記事の先頭へ 目次へ

10ページ目から11ページ目へ  

このページに対するアンケートにお答えください

このページは見つけやすかったですか?
このページの内容はわかりやすかったですか?
このページの内容は参考になりましたか?

このページに関するお問い合わせ先

政策財務部 広報課
電話番号:059-229-3111
ファクス:059-229-3339