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市指定有形民俗文化財 立岩[たていわ] 塔刻磨崖仏[とうこくまがいぶつ]
長野川に架かる美里町南長野の立岩橋から下流の方をのぞきこむと、地元で「立岩」と呼ばれる二つの大きな岩が川の真ん中に横たわっています。そのうちの手前にある幅8メートル、高さ6メートルほどの岩には、中心近くに種子[しゅじ]といわれる、仏や菩薩を像の代わりに表した梵字[ぼんじ](サンスクリット語)が刻まれています。このように、自然の岩山に刻まれた仏像などを、磨崖仏といいます。
この岩には「キリーク(阿弥陀如来)」と考えられる一文字が刻まれています。種子の周りをよく見ると、うっすらと「宝篋印塔[ほうぎょういんとう]」という仏塔の刻影を見つけることができ、現在確認できる塔の高さは約1.8メートル、方形の基礎と塔身、その上には左右に張り出した隅飾[すみかざり]がついた笠と相輪[そうりん]が刻まれています。
宝篋印塔は、もともと宝篋印陀羅尼[だらに]という経文を収めるための仏塔の一つでしたが、中世以降は、供養塔や墓碑として多く建てられるようになりました。
市内の磨崖仏としては、芸濃町楠原の石山観音をはじめ、美里町ひなたの六体地蔵や七体地蔵などがよく知られていますが、この立岩のように、宝篋印塔が刻まれた例は珍しく、「立岩 塔刻磨崖仏」として、市の有形民俗文化財に指定されています。
この塔は中世から近世のものと考えられていますが、どのような理由で川の中の巨岩に刻まれたかは分かっていません。「美里村史」によると、この塔の存在が明らかになったのは、今から二十数年前のことで、それまでは地元でもこの塔のことはあまり知られていませんでした。また、現在は残っていませんが、明治41(1908)年までは立岩の西方に「立岩大明神」と呼ばれる神社がありました。
秋晴れの日こそ、この磨崖仏を見つける好機。長野川の水面に映える木々の色づきを楽しみながら、立岩橋へと足を運んでみてはいかがでしょうか。
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