4ページ目 |
今回は、市内各地の小中学校や地域で「ハンセン病」回復者に対する差別や偏見について、その思いを語る岩脇宏二さんに、ハンセン病回復者の人たちとの出会いや子どもたちに伝えたい思いについて熱く語っていただきました。
A 11年前の5月11日、「ハンセン病国家賠償請求訴訟」で元患者らが勝訴し、政府が隔離政策の誤りを認めるというニュースがありました。子どもたちにさまざまな人権問題を伝えるとき現実を知らないといけないという思いから、まずインターネットでそのことを調べ、岡山県の邑久[おく]光明園のホームページに出会いました。その中の「ぜひ人権に興味のある方はお越しください」という言葉にひかれ、平成14年3月27日に邑久光明園を訪れました。
A 忘れられません。行った日にたまたま入所者の方の告別式があり、誰一人親族が参列されていないことに衝撃を受け、あらためて、差別の厳しさを知りました。
帰る時に所長の言われた、「あなたはもう来ることはないのかな?大事なことは交流ですよ」という言葉が頭から離れませんでした。それから、何度も施設を訪れるようになり、その中で同郷の方が、少しずつ厳しい差別の現実や無念な思いを話してくれるようになりました。そんな話を聞くにつけ、これまで自分が何も知らなかったことを本当に申し訳なかったと思いました。
A 人は知るだけでは変わりません。知ったことを人に伝えていく中で変わっていくのだと思います。子どもたちには、その伝える力があります。そして、子どもたちはどんどん変わっていきます。
私が自戒の意味を込めて語った「無知というものは罪である」という言葉や「差別ははさみだ。人間関係をパチンパチンと切っていく。人権は、切れた関係をつなぎ直すことだ」という言葉はよく覚えていてくれて、いろいろな場で発信してくれています。「ハンセン病」のことを通して、差別とはどういうことかを考えるきっかけにしてもらいたいと思っているんです。ハンセン病回復者に対する差別のことだけを学ぶのでなく、交流を通して実際に人と人とがつながっていく温かさを子どもたちに伝えたいのです。子どもたちは、私が伝える言葉を心で受け止め、そしてそれを自分自身の生活に重ねて考えてくれているように思います。嬉しいなと思います。
A 入所者の方の平均年齢は、85歳を超えています。どんどん高齢化が進んでいく中で、この国の社会が生み出してきた重大な人権課題について、その事実を語り、発信してくれている方々がいなくなっていきます。やがて、この問題は無くなっていくのだと思いますが、私は、入所者の方たちが体験した厳しい差別や偏見、入所者の方たちの悲痛な思いを語り継ぎ、二度と同じような過ちが繰り返されないように、回復者の方の思いを精一杯次の世代の子どもたちに伝えていきたいと考えています。
ありがとうございました。
記事の先頭へ | 目次へ |
1ページ目から3ページ目へ |