「広報津」第261号(音声読み上げ)表紙

登録日:2016年11月1日

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表紙

広報津 平成28年11月1日 第261号

津市に凱旋!5万人が祝福

写真 5万人の声援に包まれた吉田沙保里選手の凱旋パレードに、土性選手と登坂選手もサプライズで登場!(10月4日 国道23号)

第27回市長対談 行政・医療・介護・住民の連携を

全国老人保健施設協会会長 東憲太郎さん 津市長 前葉泰幸

平成28年7月12日、河芸ほほえみセンターに全国老人保健施設協会会長であり介護老人保健施設 いこいの森 施設長の東憲太郎さんをお迎えし、津市が取り組んでいる地域包括ケアシステムの構築に関して、前葉泰幸市長がお話を伺いました。

在宅医療だけではなく在宅介護への支援必要

市長 東憲太郎先生は、全国老人保健施設協会の会長をお務めです。まずは、老人保健施設についてお話しいただけますか。

 老人保健施設については、意外に皆さんご存じないですし、ご存じの方でも、特別養護老人ホームと老人保健施設の違いが分からないという話をよく耳にします。特別養護老人ホームは、人生のついのすみかです。老人保健施設というのは、一言でいうと状態を良くするところです。一時的に身体機能や認知症が悪くなっても、自宅での生活が続けられるように、良くする施設です。認知症は、症状を改善する薬もありますが、まだまだ十分に有効な治療法はありません。その中で、非薬物療法という薬に頼らない認知症のリハビリができる場所は、老人保健施設だけといっても過言ではありません。

市長 東先生は医師として高齢者の在宅状態からみとりまで行ってきた経験をもとに、在宅の状態に復帰させることに力を入れる在宅強化型老健を運営しておられます。施設では、認知症の方へのケアが重要でしょうね。

 今、日本では4人に1人は認知症になると言われている時代です。市民の皆さんがよく理解しているとはなかなか言えない疾患であり、はいかいや被害妄想など、いわゆるBPSDという困った症状が出ることがあります。このBPSDというのは、大変ひどくて治らない場合もありますが、例えば、軽い認知症の人が病気を患って入院したり、熱中症で脱水したりで、軽かったはずの認知症に一時的にBPSDの症状が出ることがあります。家族は大変戸惑い困るということがよくありますが、その時に適切な認知症のリハビリテーションを提供することによって、BPSDが改善されることが分かっています。認知症だからといって悲観せず、BPSDが出てもあきらめることなく、社会復帰、在宅での生活を支援することが今後重要になってくると思います。

市長 津市で、認知症と診断されている人は約9,000人、高齢者7万8,511人のうちおよそ9人に1人は認知症ということになります。きちんと対応するためには、専門家の目で診断し、どのように認知症の高齢者と向き合っていくかをサポート、アドバイスする必要があります。津市では早い段階から、2カ所の認知症初期集中支援チームを設け、医師の助けを借りながら、まずはしっかりとサポートしていこう、相談を受けようとする体制づくりを始めました。

 私も国の委員ですので、認知症初期集中支援チームができるモデル事業の時から参画していましたが、認知症に対しては困難事例であっても、きちんと初期から市町村が対応することは重要だと思っています。また、認知症に対しては、サポート医制度があり、津市にも何人かいらっしゃいます。それから、認知症サポーターという制度もあり、多くの人が登録されています。しかし残念なことに、このサポート医と認知症サポーター、それから認知症初期集中支援チームとが、連携して活動しているかというと、そうではありません。認知症の人、介護している人がすぐに相談できる、認知症なんでも相談室のようなワンストップステーションを津市内の何カ所かに整備できれば、非常に安心できる仕組みになると思います。

市長 さて、この認知症対策を含めて、住み慣れた地域で人生の最後まで尊厳をもって自分らしい生活を送ることが社会で求められている今、地域包括ケアシステムを構築することが国全体の課題となっています。そのためにも在宅での医療と介護を連携させていくことが、非常に大きな柱になりますね。

 私どもは、平成元年に千里クリニックを開設し、28年間在宅医療を在宅看取りも含めてやってきたわけですが、当初は在宅医療を提供していれば完結していました。ところが近年は、独居の人、それから老老介護の人、同居する家族が共働きで昼間独りになってしまう人で要介護状態のお年寄りを見ると、在宅医療だけではなく、在宅介護への支援がセットで行われなければ、在宅医療が成り立たない時代になっていることを感じています。

市長 父を昨年秋に亡くしましたが、ずっと在宅で介護していました。往診してくださる医師と、訪問看護スタッフとの連携のもと、ケアマネジャーが介護サービス事業所を含めた全ての関係者の情報の共有に努め、家族を強力に支えながら最期まで力を尽くしてくださいました。私も身をもって体験したことで、改めて在宅医療と介護がうまく連携して提供される地域を作っていかなければならないと痛感しました。その中で、訪問する医師と、その背後にある高度な医療を提供できる医療機関との病診連携も大切ではないですか。

 私も病診連携は非常に重要だと認識しています。津市の病診連携は、ずいぶん成功していると思います。もちろん医師会の協力があってこそですが、80%くらい達成していると感じています。診療所と介護の連携も50%くらいは達成しているのではないでしょうか。一番遅れているのは、病院と介護の連携だと感じています。急性期病院の先生方は、在宅介護や介護サービスをあまりご存じではない傾向がありますし、ケアマネジャーや介護事務所の方も、急性期病院は連携するには敷居が高いと感じています。そのあたりの連携が今後重要になってくると思います。

サービス内容が一目で分かる医療・介護資源マップ作成を

市長 医療と介護の連携については、国においても様々な検討が加えられています。東先生が委員として出席されている厚生労働省の社会保障審議会の介護保険部会では、どのような議論がなされているのでしょうか。

 介護保険制度では、これまで都道府県の役割が大きかったのですが、このたび、在宅医療・介護連携推進事業は市町村が主体となって行うことになりました。地域医療・介護の資源の把握、それから在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討、これらがまずは市町村が取り組むべき重要な課題です。それを市民が知ることで、はじめて在宅医療・介護連携が進むのではないでしょうか。その上で、切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進、医療・介護関係者の情報共有の支援と進んでいくのですが、全国的にもまだ十分に進んではいません。津市でも、課題は多いと思いますが、ぜひ連携推進事業を力強く進めていただきたい。

在宅医療・介護連携推進事業の一覧

厚生労働省 在宅医療・介護連携推進事業について より

  1. 地域医療・介護の資源の把握
  2. 在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討
  3. 切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進
  4. 医療・介護関係者の情報共有の支援
  5. 在宅医療・介護連携に関する相談支援
  6. 医療・介護関係者の研修
  7. 地域住民への普及啓発
  8. 在宅医療・介護連携に関する関係市町村の連携

市長 在宅医療がどういうところで提供されるのか、どの先生が往診されるのか、そして在宅介護サービスがどういった事業所から提供されるのか、これらは必要不可欠な情報です。そこで津市では、在宅医療と介護に関する資源リストを作りました。どういう場所からどのようなサービスがなされているのか一覧表にした結果、ずいぶん分厚くなりましたが、こういうものが第一歩というところですね。

 まず、把握ということを行ったのだと思いますが、市民の目線からすると、分厚い冊子だけでは、なかなかわかりにくい。津市も広いですから、自分の住んでいる地域にどのような医療資源があって、どのような介護サービス資源があるのか、一目で分かるような医療・介護資源マップを作っていただきたい。

市長 一覧性のあるマップですね。それはぜひ工夫したいと思います。
3つ目のテーマは地域ケア会議です。地域ケア会議には、医師、看護師はもちろん、保健師、社会福祉士、民生委員、ケアマネジャー、薬剤師、歯科医師、それから地域の方々、地区社協、自治会、そして警察と、いわば多職種の構成メンバーが入ります。それから病院のソーシャルワーカー、支援に携わっている人、理学療法士が入るなど、いろんなケースが考えられます。こういう方々が一堂に会して、各地域における介護医療連携の実態を話し合おうということです。それが、顔が見える関係、すなわち電話でつながる、あるいは何かあったときに気軽に尋ねられる、情報交換できる関係を築いていこうというのが、地域ケア会議です。津市では、平成27年度は66回開催され、延べ1,039人が参加しています。

 地域ケア会議は、実はケアマネージメント、つまりケアマネジャーの質の向上を目的にできた会議です。私も地域ケア会議ができる基となったケアマネジャーの質の担保に関する社会保障審議会に出席していました。地域ケア会議は、顔の見える関係を作るためにも重要ですが、各地域で行われているケアマネージメント、それからケアマネジャーの仕事をより良いものにするためにも、もっと開催していただきたいと願っています。

市長 ケアマネジャーの方々の努力を反映し、さらに高めていくためにも、地域ケア会議を主管する地域包括支援センターの役割も大きいのではないかと思います。

介護予防のサロンが充実。高齢者の社会参加が進む

市長 さて、4つ目の柱は生活支援・介護予防です。地域包括ケアシステムを構築していくには、地域の力が大切です。要介護にならないように、介護予防という観点から、地域の人と人とがつながる、あるいはコミュニティーがしっかり機能することが必要です。そこで、津市では、ふれあいいきいきサロンという事業を充実させています。特に、平成28年度は補助金を増額して、見守りの体制、支えあいの活動を、地域が主体となり、地区社会福祉協議会の皆さんにもご協力いただきながら、小さい単位、コミュニティーで運営していただいています。

 本当に素晴らしい事業だと思います。こういう形で地域の人が、サロンに参加することによって、高齢者の社会参加が進みますし、介護予防に資することも期待できます。私たちも、実は全国老人保健施設協会で介護予防サロン事業というのを3年前から展開しています。三重県では私の老人保健施設 いこいの森で3年間行っており、今も月2回のペースで実施しています。今話題の、フレイルという、要支援ではないけれども、全く健康でもない人、日本語に訳すと虚弱ということになるのでしょうか、このフレイル対策のために医師、看護師、リハビリ職、介護職、ケアワーカー、支援相談員、ケアマネジャーといった多職種が一つの施設の中にそろっている老人保健施設が介護予防サロン事業を担っているというわけです。今、津市で行われているふれあいいきいきサロン事業は、主に健康な人が対象ですが、そういった人と、要支援の人の間、つまりフレイルの人のための介護予防に、老人保健施設を利用すれば、今ある社会資源を有効活用して、介護予防に資することになります。

市長 老健の皆さんのきめ細かな対応を大変心強く思います。今日は4つのテーマに基づいて、地域包括ケアシステムの構築について、お話を進めてまいりました。最後に、地域包括ケアシステムの構築に向けて、留意点などお話しいただけますか。

 地域包括ケアシステムは、2025年までに構築しなければならないことになっています。もう時間がありません。今は、医療と介護の連携が主に取り上げられていますが、地域包括ケアシステムがきちんと構築されるためには、行政、医療、介護、これに加えて住民の4者がきちんと連携できることが重要です。医師は病気の事さえ分かっていればよいという時代ではありません。医師であっても、行政や介護、地域住民の活動のことを知っておかなければなりません。また、行政だから踏み込まないでおこうということではなくて、4者の領域が密接に関連していくことが今後、地域包括ケアシステムの構築には重要です。

市長 以前の在宅医療は、往診する医師と家族という非常に閉ざされた世界でしたが、新しい形で訪問看護が充実したり、病診連携がなされたりと、介護が介護保険のメニューの中で充実してきた、つまり医療と介護が連携することで在宅の高齢者を支えていく仕組みができてきたのだと思います。それに行政と住民の皆さんの理解が加わり、4者が連携できる形になると、地域包括ケアシステムがしっかりとできている地域になるのではないでしょうか。私たち行政もそのような社会の構築に向けて、しっかりと頑張っていきたいと思います。

全国老人保健施設協会会長 東憲太郎さん

昭和28年5月2日生まれ。昭和55年3月三重大学医学部卒業。平成9年5月介護老人保健施設 いこいの森開設、施設長に就任。平成24年4月三重県老人保健施設協会会長に就任。平成26年6月全国老人保健施設協会会長に就任。


 

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