「広報津」第279号(音声読み上げ)表紙、第35回市長対談

登録日:2017年8月1日

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表紙

広報津 平成29年8月1日 第279号

なつが好き!

写真 栗葉幼稚園年長組の17人が、初めての学校プールで夏を思いっきり満喫!(7月3日 栗葉小学校プール)

第35回市長対談 人口減少と高齢化時代の都市計画

三重大学大学院工学研究科教授 うらやまますろうさん

津市長 前葉泰幸

平成29年5月22日、津市の都市マスタープラン等策定推進アドバイザーで、津市都市計画審議会の会長もお務めいただいている浦山益郎さんをお迎えし、高齢化時代を安心して暮らせるようなまちづくりについて前葉泰幸市長がお話を伺いました。

市長 三重大学大学院工学研究科教授の浦山先生は、都市計画やまちづくりなど幅広い分野でご研究を進めていらっしゃいます。まずは、先生から都市計画の制度についてご説明いただけますか。

浦山 都市計画の基本的な仕組みは、都市活動や人口の将来予測をして、そのために必要な市街地規模を想定し、道路、公園、上下水道などの施設を配置して、住みやすい都市環境を整備するものです。言わば都市の成長をコントロールして効率的に公共施設を整備するための枠組みのようなものです。

市長 旧津市では、大正14年に都市計画法の適用を受けて以来、計画的に市街地の拡大整備が図られてきました。都市計画税については、旧津市では昭和31年から市街化区域の土地・建物に課税が始まり、市町村合併から5年経った平成23年度から旧久居市、旧河芸町、旧香良洲町も課税対象となりました。

浦山 都市計画税は、道路や上下水道などの都市施設を整備するための目的税です。一般的に市民の皆さんには、都市計画という言葉を聞くと、土地利用を規制するものだという印象が強いのかもしれません。しかし、都市計画とは、都市施設を整備し、良好な環境を保全することで快適な都市生活や効率的な都市活動を行う基盤を整えるものです。

市長 都市計画という制度、そしてその財源となる都市計画税によって、まちづくりが進み、人口が増え、産業が発展し、経済が伸び、市街地が計画的に拡大していくということですね。ただそれをやみくもに進めるわけではなく一定の方針が必要となります。市町村は都市計画法第18条の2第1項に基づき都市計画に関する基本的な方針を定めることになっています。それが都市マスタープランです。現行の都市マスタープラン策定の時にも浦山先生に関わっていただきましたが、当時はどのような議論がなされましたか。

浦山 現行の都市マスタープランは、平成22年に作られました。全国的にそろそろ人口減少が始まるという状況で、津市も平成20年に人口がピークに達し、その後減少することが想定されていました。しかしながら、津市では企業誘致などの政策によって、人口あるいは世帯の増加が期待されていました。そして、それに対応するため市街地の拡大を想定しましたが、当時の開発動向や法規制の問題から土地利用の方向性を決めるのは難しい地区には市街化区域編入検討地とか、開発などの余力地というような位置付けをし、現行都市マスタープランの計画期間内に、いろいろな条件が整った場合は市街化区域に編入する。そのような検討ができる都市マスタープランになっています。

津インターチェンジ周辺の大型商業施設立地の難しさ

市長 当時はそういう議論があったわけですが、市長として地域を歩いていると今も大規模商業施設を誘致するべきだとか、津市の発展のために市街化調整区域を市街化区域にしてほしい、というご要望をよくいただきます。例えば津インターチェンジの周辺は市街化調整区域ですが、商業施設が立地すると便利になるのではというような声をよく耳にします。津インターチェンジ周辺についてはいかがお考えですか。

浦山 都市計画法などのまちづくり三法(都市計画法、大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法)が改正され、平成19年から大規模集客施設の立地については市街化区域の商業系の用途地域と準工業地域に限定して認めるという内容になりました。郊外に大型店が立地することによる中心市街地の空洞化に歯止めをかけるためです。したがって、市街化区域から外れた津インターチェンジ周辺に大型店を立地させるのは難しいでしょう。

市長 都市計画の手法で市街化区域に編入してもなかなか開発できない、あるいは編入すること自体ができないということですか。

浦山 都市計画の技術的に、市街化区域を設定するには人口などが増えるので新しく市街化区域が必要だということが、客観的あるいは論理的に確認されることが必要です。一定の面積要件があって、津インターチェンジ周辺だと20ヘクタール以上の面積でないと市街化区域に編入できないことになっています。かつ、そこに大型店を立地させようとすると、法律の条件と同時に都市全体を見て、中心部の人口や商業機能に悪い影響を与えないことが確認されなければなりません。

市長 人口が減少している状況では難しいということですが、もう一つは津インターチェンジ周辺が優良農地ということもありますね。

浦山 優良農地とは良好な状態で維持・保全し有効利用を図る農地を指しています。そのような農地は、農地法などの農業行政の観点から土地利用転換ができないことになっています。

市長 それでは、まちづくりの観点から人口が増えるように市街化区域をあえて増やそう、というような考え方はできないものですか。

浦山 今のような人口が減少する状況で、増加に転じさせるような多くの人口を市外から呼び寄せることは難しい。そのような条件で市街化を進めようとすると、市内の農山村地域や既に市街地になっているようなところから人口を移す必要があるので、安易に市街化区域を増やすとそれらの地域の空洞化につながる恐れがあります。都市全体から見て妥当とはいえないでしょう。

地域拠点同士をつなげる公共交通のニーズ高まる

市長 人口減少局面を迎え、都市計画は難しい判断を迫られていると思います。今後は、少子高齢化という人口構造に見合ったまちづくりが必要になってきますが、それはどのようなものになるでしょうか。

浦山 人口減少しても高い都市サービスの水準を維持するために、よく言われるキーワードがコンパクトシティです。一般的に都市の中のある一定の市街地の中に、人口や都市機能を集約化していこうという考え方です。しかし、津市のように広大な市域では、中心市街地だけに人口と都市機能を集約させていくのは妥当ではありません。

市長 一箇所集中ではなく、ある程度の範囲ごとに生活利便性が保たれるような拠点づくりが必要なのでしょうか。

浦山 国土交通省がモデルとして提示している多極ネットワーク型コンパクトシティという考え方があります。例えば、津市のような合併市町村では、今の総合支所周辺のような地域の生活を支えているところを地域拠点に設定して、その間を公共交通で結び付けていこうという考え方です。

市長 そうすると公共交通が大変重要なポイントになってくるわけですね。津市内もコミュニティバスや路線バス、鉄道でつながっていますが、十分に行きわたっていないとか、車なしでは生活できないというお声もよく耳にします。公共交通の充実が、ますます求められるということですか。

浦山 コンパクトシティの基本的な考え方は、歩いて暮らせる範囲に都市機能や人口を集約していくというものです。基本的には、地域の拠点を中心に歩いて暮らせる環境をつくっていくことなのですが、ある地域拠点では不足するサービスがあると思います。フルセットのサービスがある地域拠点ができればいいのですが、条件が整わない場合もあります。普段は地域拠点を中心に生活し、その地域拠点で不足するサービスを受けたいときは、高齢者でも別の拠点に移動できるような手段が必要です。地方都市だと自家用車も重要ですが、特に高齢者やまだ免許を取得できない若者たちにとっては公共交通が欠かせない移動手段になるでしょう。

市長 地域の拠点にはきっちりと行政サービスなどを整え、不足するサービスがある場合は公共交通を使って別の拠点に行くということですね。これはこれからの公共施設の姿にもつながってくるわけです。津市では公共施設等総合管理計画という今後30年間の計画を作りました。公共施設は人口減少社会の中で、複合化やダウンサイジングを図りながら必要なサービスを維持していきたいと考えています。例えば、美杉庁舎の建て替えの時に、総合支所だけではなく、人権センター、図書館、公民館、総合文化センターを新しい庁舎に統合して、新たな地域拠点をつくりました。中央公民館を津センターパレス内に移した時には、老人福祉センターや、障がい者相談支援センター、津市まん中こども館という児童館を一緒にして複合施設としました。新しい公共施設の在り方として、一つ一つ進めているところです。

リスク回避か都市文化かその地域に合った方策を

市長 さて、もう一つお伺いしたいのは防災についてです。東日本大震災以降、津市は伊勢湾沿岸に位置することから特に津波に対する市民の意識が高まりました。まずは、海岸堤防の整備を進めたり、津波避難ビルを指定したりという対策を講じています。その一方で、近年の住宅地の開発動向を見ると、高台の住宅地にニーズが高まってきています。工業団地も内陸型が非常に人気で、長い時間軸で捉えれば沿岸部から高台のほうに市街地をずらしていくべきだという声もお聞きします。

浦山 一般論でいうと、市街地を災害リスクの高い地域から高台へ移すのは、重要な施策だと思います。国が平成23年に津波防災地域づくりに関する法律を策定し、その後ガイドラインができました。そして平成28年には、三重県が地震・津波被害の低減に向けた都市計画指針を策定しました。その中では、災害リスクの高いところは人口を低密度化するという方向性が示されていますが、どこでも高台移転が正解とは書かれているわけではなく、その地域に合った方策を採るべきだと思います。例えば、津市の中心部は、歴史的に見ても城下町が形成されており、これまでの長い歴史の中で培ってきた都市文化の基盤と考えられます。そこを低密度化することも一つの方策ではありますが、都市の持続性という観点からよく検討して市街地のどの部分は防災対策をしつつ維持すべき、どこは低密度化してもいいというふうに慎重に検討する必要があります。

市長 現に今、人が住んでおり歴史が積み重なってきた場所だけに、急に市街地を高台に移しましょうとはならないということですね。
先ほど地域拠点や多極ネットワークのお話が出ましたが、高齢化社会ですから拠点ごとに地域包括ケアを進めていかなければならない。高齢者が住み慣れた地域でできるだけ長く暮らしていくためにも、人口減少だけでなく、高齢化という時代に配慮した都市計画が必要ですね。

浦山 都市計画法は、主として広域的な問題に対応するためにできています。したがって都市の中を上手く移動できるとか、広域施設や他の都市と上手く連絡ができるように都市計画を考えます。しかし、これからの高齢化時代を安心して迎えられるような基盤をどうやって整備するかは、広域的な問題ばかりではなく福祉とまちづくりを連携して考えていくような視点からのまちづくりが今後ますます重要になってくるでしょう。

市長 今作成している都市マスタープランは、人口減少局面において作成する新しい都市マスタープランです。将来にわたって持続可能なまちになるように長期的な展望を持ち、10年の計画期間でできることを慎重に見据え、未来につながるような方針として位置付けていくことが大切だと思っています。

浦山 これまでの都市計画は成長を上手に受け止めて、計画的に都市をつくっていくことが大きなテーマでした。これからの人口減少時代において、とりわけ地方都市にとっては、津市のような高い住みやすさや、その都市の優れた特徴をいかに持続させるかが重要だと思います。今後、都市マスタープランの検討が進む中で、このような視点からいろいろなアドバイスができればいいですね。

市長 既に5月には、新しい都市マスタープランの全体構想編を市議会でもご議論いただいたところです。11月には地域別構想編と立地適正化計画という具体的な部分を作ってまいります。そして市議会でご議論いただき、さらにパブリックコメントを実施して、平成30年3月に計画を策定するという予定にしております。浦山先生には、これからも引き続きご指導をお願いいたします。

三重大学大学院 工学研究科教授 うらやま ますろうさん

1953年生まれ。1978年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程中退。1978年大同工業大学助手、1991年三重大学助教授、1999年から現職。専門は都市計画、土地利用計画、まちづくり。2006年9月から津市都市計画審議会会長。四日市市、松阪市、伊賀市の都市計画審議会委員。


 

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