「広報津」第279号(音声読み上げ)市長コラム

登録日:2017年8月1日

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市長コラム シルバーエミカ誕生秘話

津市長 前葉 泰幸

高齢者のコミュニティバス運賃を無料にします。

これは私が2期目の津市政をお預かりするにあたってお約束した10の目標の中のひとつです。

津市は地域の足としてコミュニティバスを運行し、24路線を年間約8万8,000人の方にご利用いただいております。65歳以上の高齢者は運賃を無料とし、外出に活用していただこうと検討作業を開始した平成27年の夏、思わぬ問題が持ち上がりました。

コミュニティバス無料化に壁

コミュニティバスの年間運営経費は約1億5,000万円。ざっと計算すると、運賃収入1,200万円と国からの補助金3,800万円を除く1億円はもともと市の持ち出し分です。乗客の約8割は高齢者であることから、運賃収入の1,000万円減を覚悟すれば、この施策は成り立つと踏んでいました。ところが、運賃を無料にすると利用者とカウントされず、1便1名以上の乗車という補助要件をクリアできない路線が出てきます。そのため国庫補助が大幅に減額されることになるという見解が国の担当官から示されたのです。

補助金を失い1億5,000万円の経費をほぼ全額市が負担することなど、とうてい受け入れられる話ではありません。運賃の無料化という方針そのものを根本的に見直すことになりました。乗車券を高齢者に配布するなど他の方策を探ってみるものの、手間やコストのかかるチケット方式は極力避けたいところです。なんとかならないものかと考える日が続きました。

国が動いた

翌28年5月、第1回津市地域公共交通活性化協議会を開催することになり、思い立って冒頭の挨拶の場で、目下の困りごととしてこのことに触れてみました。それが会議に出席していた国の上席担当官の耳に留まり、後日詳細なヒアリングが実施されることとなったのです。再度担当部局に照会をかけてくださった結果、無料の乗車人数を把握することを条件に補助金の対象とすることが認められ、一気に運賃の無料化に向けた展望が開けてきました。

路線バス利用の外出支援策でまたも窮地に

コミュニティバスと同様に路線バスも高齢者の外出支援事業の対象とするべく検討を進めておりましたが、これまた難渋を極める交渉が待っていました。バスカードを高齢者に配布するアイデアを三重交通株式会社に相談したところ、平成28年春からICカードに移行するためバスカードの新規発行は行わないとの回答。ここでもまた紙の乗車券方式が俎上にのぼります。時代に逆行するようなこのチケット構想を却下し、ICカードに乗車ポイントを付与して配布する方式での協議を始めたものの、その場合、システム開発の費用に1億円近くかかることが判明します。

いよいよ万策尽きたかと思った平成28年8月末、別の用務で訪問した総務省で、偶然、解決の糸口が見つかります。担当幹部が面談の残り時間を使って、自身が手掛ける地方自治体向けの新事業の構想を熱く語り始めたのです。それはマイナンバーカードを活用した地域活性化戦略でした。

新サービスの実現にマイナンバーカードを活用

マイナンバーカードには、税や年金などの事務手続きに用いられる個人番号とは別の場所に、公的な身分証明となり、その他の情報を記録できるマイキーと呼ばれるICチップが備わっており、幅広く活用することが可能です。各自治体の図書館など公共施設利用のために複数枚作成するカードを1枚に集約して住民の利便性の向上と業務の低コスト化を図るなど全国で行政サービスの改革を推進できます。さらには、地域経済の活性化に向けて、ボランティアやイベント参加ポイントなど自治体独自で発行するポイントに、地元商店街ポイント、クレジットカードやマイレージなどのポイントを導入することで民間資金を地域へと呼び込み、経済の好循環を拡大していこうというスケールの大きなプロジェクトです。

平成28年秋からの予算を確保し、モデル事業の準備へと駒を進めるため、各地方自治体や商店街などに説明を始めたところのようでした。聞くと、交通系事業の枠は空いているとのこと。路線バス運賃を自治体ポイントとしてICカードに付与するアイデアを、その場で提案してみたところ、今後、他の自治体でも応用可能な事業であると認められ、津市の施策も実証事業のひとつに採用されることになりました。

懸案だった乗車ポイントの管理システムはマイナンバーカードを活用して地域を応援する国のプロジェクトの1事業として構築されます。1億円近い高額のシステム開発費を前に一度は諦めかけた施策も実現の目途が立ち、ここにようやく高齢者外出支援事業の準備にとりかかる環境が整ったのです。65歳以上の市民の方にシルバーエミカを交付する際、初回のみマイナンバーカードをご用意願うのは、カードの電子証明書マイキーを使って個人を認証し、2,000ポイントを付与するからです。受け取られたシルバーエミカは、ご提示いただくだけでコミュニティバスにご乗車になれ、路線バスとぐるっと・つーバスでは毎年2,000円分のご利用が可能です。

国に届いた住民サービスにかける熱意

自治体が新しい施策を独自で作り上げるのはたやすいことではありません。今回は、国の担当官の真摯な姿勢と創造性あふれる発想が突破口となって、市民の皆さまに新しいサービスをご利用いただくことができるようになりました。国との緊密で良好な関係をこれからも大切にしてまいります。


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