「広報津」第292号(音声読み上げ)歴史散歩 第141回 三重高等農林學校農場 不渇の井戸、津市(このまち)で輝く

登録日:2018年2月16日

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歴史散歩 第141回 三重高等農林學校農場 不渇の井戸

三重大学医学部附属病院付近には、かつて三重大学の前身である三重高等農林學校の実験農場が広がっていました。今はその面影はなく、当時の風景を思い浮かべることは難しいですが、ここには農場を維持するために不可欠な給水井戸が当時のままに残っています。
大正11(1922)年4月に第一期入学生を迎えた同校には、当初実験農場が整備されておらず、その確保が大きな課題でした。海岸近くの低湿地で、地表水は塩分濃度が高く農業用に適さないため、一部に農場自体を他所に求めるべきとの意見もありました。
しかし、当時の学長は農業分野をけん引する高等農林學校としてこの土地の改良に取り組むことを決意します。そして、教員・学生が一丸となって農場設置の前提となる用水確保に向けた井戸掘削が始まりました。今も大学に保管される当時の設計書には、上質の真竹を用いて管を継ぎ足し、3本の取水管を設置することが記されています。
大正13年に完成したこの井戸は、毎時72立法メートルの真水を供給し、長年にわたって農場に十分な水量を確保してきたことから、いつしか不渇の井戸と呼ばれるようになりました。
井戸の直径は約9メートル。コンクリートは全て人力で練ったといわれ、当時の苦労がしのばれます。94年が経過した今も頑丈な造りはそのままに、常に水をたたえています。
低湿地で塩分濃度の高い過酷な条件下での土地改良の実践は、高等農林學校の威信を懸けた事業でもありました。当時の教員と学生が一致協力して取り組んだ成果は、日本の農業土木技術史に残る実践例として評価され、この給水井戸は平成28年度土木学会選奨土木遺産に認定されました。
大学構内の一角。木々に囲まれたこの給水井戸の周辺には遊歩道も整備され、教員・学生のみならず、ここを訪れる人々にその歴史と意義を静かに伝えています。

津市(このまち)で輝く

ボリューム22 美杉中学校 キャリア教育サポーター 中田 かほるさん

今年1月、美杉中学校の地域資源を生かしたキャリア教育が文部科学大臣表彰を受けた。中田さんは津市商工会美杉支部長として、同校のキャリア教育の主軸である体験学習をサポートしている。

質問1 美杉中学校のキャリア教育ってなんですか

学校と地域の連携の下、体験学習が実施されています。例えば、3年生は地元の特産品を販売する会社、みどころみすぎを設立し、仕入れや接客、商品管理など、流通の仕組みを学び、修学旅行先の東京都で実際に販売を行いました。私たち地域の大人は、生徒の皆さんが地元の産業や特産品の良さを再認識できるよう、サポートする形で関わっています。

質問2 どんな思いで生徒たちと関わっていますか

美杉地域では、年々過疎化が進んでいます。行ってみたいまた来たいと思ってもらえるような元気な地域を作ってくれるのは、次世代の皆さん。そのために、もっと郷土の魅力を子どもたちに知ってもらいたいと思っていたとき、学校からキャリア教育への協力依頼があり、これはチャンスだと迷わず引き受けました。今では、子どもたちの頑張っている姿に、私たちの方がパワーをもらっています。

質問3 子どもたちに、どんな大人になってほしいですか

例えば美杉地域なら、JR名松線の車窓から広がる四季折々の景色、春を迎え開花するミツマタや三多気の桜…。このように、自慢できる地域の魅力が身近にあるのに、そのことに気が付いていない人はたくさんいます。自分が生まれ育った故郷を知り、誇りに思える大人に成長してほしいです。そして、その魅力を全国へ発信してくれたらうれしいです!


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