「広報津」第302号(音声読み上げ)津市人権教育広報 あけぼの 第25号

登録日:2018年7月16日

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折り込み紙3

津市人権教育広報 あけぼの 第25号

平成30年7月16日発行
教委人権教育課 電話番号229-3253 ファクス229-3017

人とのつながりを大切にしたい 外国につながる子どもの教育

津市には、8,000人を超える外国人住民が生活しています。就労や留学、実習生など来日目的や在留資格はさまざまです。
以前は短期間だけ日本で働いて母国に帰るという人も多かったのですが、現在は、日本で家を建てたり、母国から家族を呼び寄せたりして、日本での定住を視野に入れて居住している人も少なくありません。
生まれた国を離れ日本で生きるという決断は、大人にとっても決して簡単なものではなかったはずです。そして、子どもたちの多くは、家族の決断によって自分の意志とは無関係に母国の友達に別れを告げ、言葉も文化も習慣も異なる日本で暮らすことになります。そうした子どもたちの多くは、日本に来て不安な気持ちでいっぱいです。
今回の特集 人とのつながりを大切にしたい 外国につながる子どもの教育は、この津市で暮らすことになった外国につながる子どもたちの未来を守るために、子どもたちと一緒に笑ったり、泣いたり、悔しがったり、仲間と共に頑張っている市民の皆さんの活動を紹介します。あんなに不安いっぱいだった子どもたちが、はじけるような笑顔を見せてくれるようになる、そこには、人のつながりがあります。

外国につながる子どもとは、外国籍の子どもや日本国籍を持っていても外国にルーツを持つ子どもを含めた言い方です。

人権コラム お互いに理解と尊重を

私たちは、家庭から出るごみを分別し、地域のごみ集積所に持っていきます。そして、ごみ収集車がそのごみを収集します。こうした光景は、町のあちらこちらで見られる日常の一コマです。しかし、まったく知らない町へ引っ越すことになったり、ごみの分別の仕方やルールが変わったりしたら、誰もが戸惑いを覚えることでしょう。
世界では日本のように各家庭でごみを分別し、ごみ集積所へ出して収集するような国ばかりではありません。分別することなくまとめて収集し、施設で分別作業を行う国もあります。津市には約80カ国の国籍の外国人が生活しています。日本とはルールが違う国から来た場合には、今住んでいる地域のごみ出しのルールが分からないこともあるでしょう。そんなとき大切になるのは地域における人と人とのつながりです。
それなのに、外国人は、とよくないイメージでひとくくりに見ることで地域社会のつながりから疎外されていることがないでしょうか。日本人も外国人も、共に津市に暮らす者として、お互いの文化の多様性を認めて理解し、誰もが暮らしやすい社会をつくっていきましょう。

日本語指導が必要な小中学生が600人以上

津市内の公立の小中学校には、日本語指導の必要な子どもが600人以上通っています。その多くは、市内の学校などで先生や友だちと関わりながら、日本語を学び生活しています。
中には、日本語が全く分からず不安や心細さを感じ、学校に通っている子どももいます。そのような子どもや保護者、広くは外国につながる人々を学校以外でも支える場所が津市にはあり、そこに関わる人たちがいます。その一部をご紹介します。

初期日本語教室 きずなで学ぶ子どもたち

日本での生活に必要な簡単な言葉から身に付ける

朝9時、中央公民館にランドセルを背負った子どもたちが元気に通ってきます。フィリピン、ブラジルなどさまざまな国や地域からやってきた子どもたち。互いの言葉は分かりません。でもみんな笑顔で、生き生きと何か話しています。
ここは、中央公民館にある初期日本語教室 きずなの一室。6年前から、日本語が全く分からない外国につながる子どもたちに、はい、いや、トイレなど、日本で生活していくために必要な初期の日本語を学ぶ授業が行われています。
1時間目は話す・聞く学習。2時間目は読む・書く学習。細かく段階を追って作成されたオリジナルの教材を、一人一人のペースに合わせて学習していきます。毎朝9時から始まる2時間のきずなの授業が終わってから、自分の学校へ登校します。
また、中央公民館へ通うことができない子どもたちのために、在籍する学校の一室で、初期の日本語教室を行う移動きずなも4年前から行っています。昨年度は移動きずなを中学校3校、小学校15校で開設し、きずなと合わせると56人が初期の日本語を学びました。
きずなを修了したある中学生は、初めてきずなに来たときはうれしくなかったです。日本語は面白いけど難しいです。でも、きずなの先生たちがぼくの勉強を助けてくれました。時間がかかると思いますが、いつか日本語が上手になって、たくさんの人と話がしたいです。と語りました。今は学校の先生や周りの友達に支えてもらいながら、他の子どもたちと一緒に将来の夢に向かって学んでいます。

きずなや移動きずなを支える人たち

きずなで子どもたちを指導するのは、教室長、副教室長、津市巡回担当員、そして市民ボランティアの皆さん。子ども一人に一人ずつ大人が付き、日本語で日本語を丁寧に、繰り返し教えています。子どもたちにとっては、初めて出会う日本語、初めて触れ合う日本語の先生。ゆっくりした話し方で、誠実に向き合い、励まし、笑顔でほめる。子どもたちは、徐々に日本語が分かるようになり、文字が読めるようになったり、思っていることが話せるようになったりして、表情がどんどん豊かになっていきます。
市民ボランティアの皆さんは、子どもといるととても楽しい、どう説明すれば分かるか、どうすれば興味を持つかを、考えるのが面白く、やりがいを感じている、一生懸命接してくれた大人がいたなと思ってくれたらうれしい、日本のことを好きになってほしい、など、きずなの子どもたちへの思いを話してくれました。
市民ボランティアの登録者は年々増えてきています。初期日本語教室きずなは、子どもたちの未来を考え、将来幸せな人生を送ることができるようにと願いながら指導してくれる皆さんに支えられています。

外国につながる人々をサポートする皆さん

津市巡回担当員とは

子どもたちが安心して学校生活を送るためには、保護者の理解と協力が欠かせません。日本語が分からない保護者への通訳や文書の翻訳、連絡調整を行っているのが、津市巡回担当員です。自らも言葉の壁にぶつかったり、文化や習慣の違いに戸惑ったりしたことがあります。だからこそ子どもや保護者の、分からない、伝えられない、もどかしさが分かり、その気持ちに寄り添って活動することができます。

国際交流協会(津支部)日本語教室

毎週日曜日の18時から19時45分まで、中央公民館で日本語教室が開かれています。さまざまな国や地域の皆さん20人ほどが、日本語を学びに来ています。日常会話ができるようになりたい、日本語能力検定に合格したい、漢字を覚え新聞が読めるようになりたいなど、思いはさまざまですが、誰もが熱心に学習しています。
教えているのは、市民ボランティアの皆さん。一人一人が自分なりの方法で、学習者それぞれのニーズに合わせて丁寧に対応しています。休憩時間には、ほっと一息お茶を飲みながら、互いに交流を深め情報交換をしています。運営している松尾光照さんは、外国の方は皆さん、熱心ですよ。私もいろいろ教えてもらって楽しいです。そして教える市民ボランティアの皆さんも生きがいを感じ、お互いによい影響を与え合っています。と話し、通う人たちをいつも笑顔で迎えています。

広がる支援の輪 エスペランサの活動

多文化共生ネットワーク エスペランサは、津市・鈴鹿市を中心に生活の厳しい家庭(主に外国につながる子どもの家庭)への生活支援を行っている市民グループです。リーマンショック後に外国につながる子どもたちの保護者が次々と解雇され、生活が困窮する家庭が急増したため、それらの家庭を支援することを目的に平成21年3月に設立されました。食べ物や生活用品などの配布・情報提供・相談等の活動を行っています。現在までに、195家族、のべ340件の支援を行ってきました(平成30年1月10日現在)。
外国につながる子どもの保護者が、差別的な扱いをされている実態がたくさんある。と、代表の青木幸枝さんは語ります。雇用対策事業の会場で外国人はいらないと言われたり、会社から突然、明日から来なくていい、と電話で言われたりしている。弱い立場の人が被害を被っている。人権を軽視する社会の構造を何とかしないと、子どもたちがつらい思いをする、と青木さん。
連絡を受けると昼夜を問わずすぐに駆けつけるエスペランサの活動は、周り人々の心を動かし、共感した人たちから徐々に支援の輪を広げようとしています。

エスぺランサのホームページは、エスぺランサ 支援メールネットワークで検索してください。

シリーズ 人・ひと

高茶屋日本語教室がんばる会 代表 田中レオニセさん

今回お話を伺うのは、津市在住で高茶屋日本語教室がんばる会を立ち上げた田中レオニセさんです。日系ブラジル人3世の夫と息子らとともに26年前に来日しました。津市内の保育園で通訳の仕事を8年間した後、現在は市内の中学校で外国につながる生徒を支援する仕事をしています。ブラジルから日本に来て、さまざまな違いに悩んだ経験を生かし、日本人と外国人との懸け橋となってきた思いを聞きました。

質問 がんばる会のことを教えてください

高茶屋市民センターで、土曜日の18時30分から日本語指導などをしています。約20年前から高茶屋地域に暮らすブラジル人が多くなり、生活上いろいろな困難が出てきました。2005年8月に少しだけでも日本語が分かれば、今よりも暮らしやすくなるんじゃないかと仲間と話し合って始めました。最初は日本語の単語を教えるくらいでしたが、だんだんボランティアの人たちも入って会話を教えたり、悩みや困っていることを聞いたりしています。花見をしたり、公共交通機関に乗ったりするなど、日本の文化や習慣なども勉強しています。最近は、ベトナム、フィリピン、中国、インドネシア、ボリビア、韓国の人なども来てくれています。

質問 長く続けてきたのはどんな思いからですか

どんなに忙しくても、用事があっても、がんばる会に行くようにしています。私も苦労したときに周りの人に助けてもらったので、今の自分にできることをやって、少しでも困っている人の助けになりたい。一緒にがんばりたいと思うからです。

質問 文化や習慣の違いを認め合うにはどうしたらよいでしょうか

それぞれの国や地域の文化には、どれも意味があるんですよね。日本人は、周りに迷惑を掛けるようなことをすごく気にしますよね。こうした日本人の文化は素晴らしいと感じます。でも、私はなかなか日本人と同じようにはできなくて、今も迷ったり悩んだりすることがあり、難しいなと感じています。まずは違う文化と出会い、その違いを知ることが大事だと思います。どんな人かな、その国のこと知りたいな、と興味を持つことから始めてみてはいかがでしょうか。

質問 これからも伝えていきたいことはなんですか

共に生きるということは、お互いに相手のことを理解し合い、尊重することだと思っています。私は多様な人たちが豊かに共生できる地域や社会をつくるために、今の私にできることを行動に移し、諦めずにがんばろうと思います。

教室参加者・スタッフの声

  • 日本語は難しいです。分からないときや困ったとき、スタッフの人たちが助けてくれるから心強いです。(教室で学習しているブラジル人参加者)
  • がんばる会を立ち上げる前から関わっています。旅行に行かなくてもいろいろな外国の人と知り合いになれます。友達がいっぱいできました。(支援スタッフ 中条さん)

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