令和6年2月 教育方針

登録日:2024年3月6日


 令和6年度に重点的に取り組む教育施策の方針について、ご説明申し上げます。
 およそ3年に及ぶコロナ禍での生活は、これまで行ってきた教育活動について、「何のためにやっているのか」「どんな教育的効果があるのか」「もしやめたらどうなるのか」「形を変えてできないのか」等、再考する機会となるとともに、子どもたちの成長にとって、なくてはならない行事、活動があることを再認識させてくれました。
 また、一方で、人と人との物理的・心理的距離を広げ、不登校児童生徒や不安・悩みを抱える子どもたちを増やす結果となりました。だからこそ、すべての児童生徒の学びの場を確保するとともに、学校をこれまで以上に「安心して学べる」場所にする必要があります。
 令和6年度は、津市教育大綱が新しくなるとともに、教育振興ビジョン後期計画が2年目をむかえます。1年目に明らかにした課題と方向性を踏まえ、さらに着実に取組を進めてまいります。取組を進める際には、子どもたちのウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良い状態にあること)の向上を中心に据え、そこにつながる教職員、保護者、地域の人々のウェルビーイングの向上にも努めてまいります。
 特に学校で過ごす時間の中で最も長い授業については、子どもたちのウェルビーイングの向上に大きく関係することからさらなる改善が必要です。教師主導の一律・一斉で画一的な知識を詰め込む授業ではなく、子どもたちの多様な状況に応じた学習者主体の学び、多様な他者との協働した学びの実現に向けた改善に努めてまいります。
 教職員の働き方や情報教育の一層の推進、老朽化する各種教育施設対策など、直面する各種教育課題への的確な対応を図るため、令和6年4月から、教育委員会事務局に教育総務部と学校教育部を設置します。
 具体の取組については、このあと述べることといたしますが、教育行政に係る管理及び生涯学習に関する事務等と、学校教育に関する事務等を適切な役割分担と連携の下で、着実に進めてまいります。

 教育振興ビジョン後期計画の3つの重点施策については、これまでの課題や成果を踏まえて、より一層の取組の推進を図ります。
 まず、「乳幼児期から小学校への連続した学び」については、生涯にわたる人格形成や非認知能力の基礎を育む極めて重要な時期である乳幼児期の遊びや生活を通して培った学びを小学校以降の学びへとつなげるための「津市架け橋プログラム」の取組を、令和4年度から3年間かけて全小学校区で進めていくこととしています。令和5年度は、4つのモデル小学校区で、幼児教育と小学校教育に携わる者が、子どもの育ちや学びについて楽しく語り合うことを通して、当該小学校区の架け橋期カリキュラムを作成しました。令和6年度以降は、市内すべての小学校区において、この語り合いを大切にした「津市架け橋プログラム」の取組を推進してまいります。このような中、公立幼稚園については、地域のリーダーとなって、幼児教育と小学校教育をつなぐ役割を果たしていきます。
 また、「津市架け橋プログラム」の実践により、子どもたちの学びや生活の基盤を育むとともに、9年間を見通した小中一貫教育に係る取組のより一層の充実を図るなど、園・学校・家庭・地域等において、子どもと関わる大人が連携、協働し、0歳から18歳の学びの連続性・一貫性を見通した取組を持続的・発展的に推進してまいります。
 次に「学校と地域が一体となって進める教育」については、調査等により明らかになった成果や課題を踏まえた取組事例等を研修会やSNS等で発信するなど、各学校の特色を生かしつつ、学校運営協議会と地域学校協働本部が連携・協働し、両輪となって取組を進められるよう支援してまいります。とりわけ、地域学校協働活動の充実を図るため、地域コーディネーターの役割等について、より一層の理解と協力を求めたり、公民館と連携した地域学校協働活動の取組を進めたりするなど、地域の人々が学校運営に参画し、一体となって子どもたちを育むことに幸せを感じることができる体制づくりを進めます。これら地域学校協働本部に係る取組については、生涯学習課生涯学習振興担当及び同課公民館事業担当を生涯学習・公民館事業担当に改編し、新たな体制の下で、進めてまいります。
 そして「津市GIGAスクール構想の実現」については、タブレット端末や大型テレビ等のICT機器と授業支援クラウドやデジタル教科書等のデジタル教材を効果的に活用し、すべての学校において、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させ、学習者主体の授業づくりをより一層進めてまいります。そのため、教職経験年数に応じた研修等を実施し、教職員の指導力や対応力の強化に努めるとともに、ICTサポーターがニーズに応じた対応を行うなど、学校や教職員を支える環境のより一層の充実を図ります。一方、令和2年度に導入した一人一台タブレット端末については、計画的に端末更新の準備を進めてまいります。

 学校教育においては、引き続き、生きて働く知識や技能の習得はもちろんのこと、未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成、学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性の涵養を図り、持続可能な社会の創り手となる子どもたちに求められる確かな学力を育みます。
 具体的な取組としては、全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙等において、課題が顕著な項目の回答に着目し、児童生徒及び学級等の状態をより丁寧に把握し、さらなる授業改善や効果的な指導体制づくりを行うなど、一人一人に応じた学びや協働的な学びのより一層の充実を図ります。また、やりがいをもって指導する教職員のもとで、子どもたちが自己肯定感を高めることができるよう、ウェルビーイングな学校づくりを目指してまいります。さらに、子どもたちが達成感を味わい、「できた」「わかった」という実感が得られる授業や、子どもたちが主体的に学校生活をよりよくする活動等を通して、一人一人のよさを生かしながら、より深い学びを生み出す取組等について、その研究成果を中学校区及び市内全域に広く発信してまいります。
 特別支援教育については、インクルーシブ教育のもと、誰もがその能力を発揮し、共に認め合い、支え合い、誇りを持って生きることができるよう、多様な学びの場における適切な指導と必要な支援の充実に努めます。そして、すべての子どもたちが、安全に安心して指導・支援を受けることで、持てる力や可能性を伸ばし、一人一人の自立と社会参画のために必要な力を育成します。
 具体的な取組としては、「津市版特別支援教育ハンドブック(改訂版)」等を活用し、ユニバーサルデザインの視点を生かした授業づくりの充実を図るとともに、学校サポーター及び特別支援教育支援員等の活用や、関係機関等との連携により、適切な指導及び支援を行います。また、必要に応じて、通級指導教室や幼児ことばの教室での学びにつなげるとともに、個別の指導計画等を作成・活用し、各園や学校における途切れのない支援に努めます。これらの取組を進めるため、特別支援教育指導者育成研修等をより一層充実させ、すべての教員が、特別支援教育の視点を持った対応ができるようにするための指導力や対応力の向上を図ります。
 人権教育については、子どもたち一人一人の人権意識を高め、園・学校が、すべての子どもたちにとって安心して学べる場となるよう、人権教育カリキュラムに基づいた取組を進めてまいります。
 外国につながる児童生徒への教育については、初期日本語教室「きずな」及び「移動きずな」のさらなる充実を図るとともに、初期の日本語学習を終えた子どもたちが、日本語での一斉授業において効果的に学ぶことができる指導方法についての実践研究を進めてまいります。また就学前日本語教室「つむぎ」を引き続き実施し、就学前の外国につながる幼児に対して、入学した小学校で戸惑うことなく、小学校生活に早期に対応できるよう、取組の充実を図ります。
 不登校児童生徒については、年々増加傾向にあり、その要因・背景はより複雑化・多様化しているため、学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することをめざしていけるよう、教育支援センター(ほほえみ教室、ふれあい教室)を中心に、三重大学・津市子ども教育センターをはじめとする関係機関等と連携するとともに、校内教育支援センターでの取組やICTの活用等、児童生徒一人一人の状況に応じた多様な学び場の確保に努めます。
 また、いじめ、虐待、ヤングケアラー等の課題については、児童相談所や福祉部局等の関係機関と連携するとともに、心理や福祉の専門家であるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー及び弁護士等、多様な専門的職種と連携したチームによる組織的対応により、課題の改善に向けた取組の一層の充実を図ります。
 水泳授業については、学校プールの老朽化が進む中、日常的な維持保全や機械設備の集中的な修繕を行いながら、自校プールでの水泳指導が困難となった学校においては、令和4年度から民間プールを活用し、令和5年度からは民間プールの活用に加え学校プールの共用化を実施しました。令和6年度は、新たに学校プールの使用が困難となった敬和小学校、雲出小学校、大三小学校の3校を加えた12校に対して、民間プールの活用や学校プールの共用化、公用プールの活用といった様々な方法を駆使して、引き続き、子どもたちが水泳授業を受ける機会を確保してまいります。
 これらの様々な取組を進めるためには、教職員が、子どもの成長に関わることができるような時間を確保するための働き方改革をより一層進める必要があります。本市においては、これまで統合型校務支援システムの導入等による業務のICT化をはじめ、教員支援員やスクール・サポート・スタッフ、部活動指導員等外部人材の活用、さらには、学校行事の精選や定時退校日の徹底など各校独自の取組により、教職員一人当たりの時間外労働時間は減少傾向にあります。一方で、コロナ禍前の活動が戻り、多様な教育課題が増えたことで、教職員の多忙化は解消されていない状況があります。このようなことから、新たに教職員の繁忙時期である各学期始めと終わりにおいて、短縮日課とする期間を設けるなどの取組を進めます。これらの働き方改革については、保護者や地域へのより一層の理解と協力を求めるとともに、教職員一人一人が子どもと向き合うことに幸せを感じられるよう、ニーズに応じた研修の充実や人的支援の拡充に努めてまいります。
 部活動については、休日における部活動の地域連携・地域移行等を見据え、部活動指導員を拡充するとともに、外部指導者、地域ボランティア等の地域の指導者に御協力いただいた指導や地域のスポーツ・文化芸術団体等と連携した活動を行うなど、子どもたちが地域の中で、スポーツや文化芸術活動に継続的に親しむことができるとともに、教員の負担軽減につながるよう取組を進めてまいります。
 小中学校の適正規模・適正配置につきましては、児童生徒の教育条件の改善の観点を中心に据えて、子どもや保護者、地域等の意見を尊重しながら検討してまいります。
 さらに、教員不足の課題については、引き続き、近隣大学と連携し、教員という職業を選択し、その道に進んでいただけるよう、将来を担う子どもたちを育むことの尊さや教員という仕事の魅力等を積極的に発信してまいります。また、学校で働くことへの心配ごとや希望される働き方等の相談に応じることで、少しでも多くの方が学校で働くことに興味・関心を持っていただけるよう取組を進めます。

 学校施設は将来を担う子どもたちの学習・生活の場であり、子どもたちが安全で快適に学ぶための施設整備を進めていくことが、学校教育の充実につながります。このことから、機能維持やバリアフリーへの対応等を図るための長寿命化改修事業に取り組み、3年間で7校の改修工事を実施しました。令和6年度は、さらに取組を加速させ、育生小学校、片田小学校、明合小学校、橋北中学校及び白山中学校の5校の工事を実施するとともに、栗真小学校、豊が丘小学校、桃園小学校、千里ヶ丘小学校及び東観中学校の5校の設計を行います。また、これまで長寿命化改修に合わせて実施していたバリアフリーへの対応は、生徒の成長とともに自身の移動や介助者の負担が増大する中学校については、単独で整備を行うバリアフリー化改修事業として新たに取り組みます。
 さらに、計画的な施設改修を進める中、雨漏りや屋内運動場の床の損傷などの改修については、子どもたちの安全で快適な学習環境を確保し、さらなる充実を図れるよう、ボートレース事業で得られる収益金を活用した学校施設整備基金を創設し、新たに学校施設改修特別推進事業として進めていきます。
 これらの取組については、教育総務課施設担当を教育施設課施設担当に改編し、新たな体制の下で、進めてまいります。

 学校給食については、安定的かつ安全な学校給食を提供するため、一志学校給食センターの長寿命化改修を行うほか、成美小学校の厨房設備の更新を進めるとともに、物価高騰の影響による保護者の給食費負担増を抑制するための支援を継続してまいります。

 利用児童が増加している放課後児童クラブについては、そのニーズに応えるため、引き続き狭あい化している施設を中心とした施設整備を計画的に進めてまいります。令和6年度は、誠之放課後児童クラブの2つ目の施設の新築と旧白塚幼稚園舎を活用した白塚地区放課後児童クラブ専用施設の整備を行います。また、修成地区放課後児童クラブ、高茶屋地区放課後児童クラブについても狭あい化解消のための新築整備の実施設計を行い、児童の放課後等の安全安心な居場所を確保します。
 また、放課後児童クラブの運営に関しましては、引き続き、運営や支援員確保のための支援を行うなど、クラブの充実に向けた取組を進めてまいります。
 これらの取組については、生涯学習課青少年担当を同課青少年・放課後こども担当に改編し、新たな体制の下で、進めてまいります。

 公民館については、人づくりや地域づくりにつながるような学習活動を進める中で、自らの向上や地域や社会への貢献の意欲を持ち、地域社会の担い手となるような人材の育成を進めるなど、魅力ある公民館運営を進めてまいります。
 公民館施設については、高茶屋地区の公共施設の再編に伴い、高茶屋保育園跡地を活用した南郊公民館等複合施設の整備に係る設計に着手するとともに、久居公民館の放送設備改修工事を進めるほか、施設の老朽化に伴った修繕等による適正な維持管理に努め、利用者が安全で快適に学べる環境づくりに取り組んでまいります。

 図書館については、乳幼児から大人まで様々な年代に読書の大切さを伝えるとともに、学校やボランティア団体との連携により、子どもたち、特に読書離れが進む中学生・高校生世代に対して、興味や関心を持ってもらえるような資料の提供などを通じて、読書活動を推進してまいります。レファレンスサービスについては、利用者が求める最新の資料を充実し、情報空間としての利用促進を図ります。
 利用者サービスに直結する図書館情報システムについては、更新に向けて必要な手続きを進めてまいります。また、居心地のよい空間づくりや急速に進むデジタル化への対応など、新しい図書館の在り方について研究を深め、利用環境の充実に努めます。

 文化財については、先人の足跡を示す貴重な歴史遺産であることから、指定文化財や登録文化財として保護を進めるとともに、その修理や伝統文化の継承への支援を行い、市内に残る様々な文化財の保存と活用を図ってまいります。
 県指定史跡である津城跡については、昨年から庁内の横断的な連携を図るため、関連所管からなる津城跡(お城公園)整備調整会議を立ち上げ、整備の方向性を探る協議・検討を開始し、広報津を通じた情報提供やシンポジウムの開催などを通じ市民の意見徴取を行ってきました。令和6年度は津城跡現地での見学会・散策会の開催や関連する講演会を実施するとともに、子どもたちへの意識啓発にも努めるなど、これまで蓄積してきた歴史資料や調査結果、津城跡の現状をはじめとする多様な情報を引き続き提供し、市民の声に耳を傾けながら、津城跡の整備の方向性を検討する協議を進めてまいります。
 また、市民が歴史と文化に触れる場として、市内の資料館をはじめ市の公共施設を活用した文化財や収蔵資料の展示公開を通じ、郷土の歴史の再発見・再認識につながるような機会の提供に努めてまいります。

 以上、令和6年度の教育方針について申し述べました。
 新しい技術や情報が日々生まれ、社会も急激に大きく変わっていきます。このような時代にあって、直面する課題を子どもたちが主体的に捉え、その課題の解決に向けて自ら考える力を育むとともに、持続可能な社会の創り手となる自立した人づくりをめざし、総合教育会議における議論を大切にしつつ、学校現場や保護者、地域の皆様の声をしっかりお聞きするとともに、国の施策も注視しながら、新たな体制の下で、柔軟かつ着実に教育行政を推進してまいります。
 市民の皆様、議員の皆様の御支援と御協力を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

 


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