「広報津」第419号(音声読み上げ)津市人権教育広報 あけぼの 第35号

登録日:2023年7月16日


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折り込み紙3

津市人権教育広報 あけぼの 第35号

令和5年7月16日発行
教委人権教育課 電話番号229-3253 ファクス229-3017

私のふつう、私の当たり前を振り返ってみませんか

通勤途中、ランドセルを背負って登校する子どもたちに出会います。

性別に関係なく、赤やピンク、ベージュや紫、そして紺や黒など、色とりどりのランドセルを背負った子どもたちを見て、ふと自分が子どもだった頃を思い出しました。

私が子どもだった40年前は、誰が決めたのか男の子は黒、女の子は赤のランドセルがふつうや当たり前で、他の色のランドセルを持っている友だちは誰もいませんでした。

赤の方が好きだからと赤いランドセルを持っている男の子はおらず、お兄ちゃんが使っていた黒いランドセルを使っている女の子もいませんでした。

初めて黒や赤ではないランドセルを見たときに違和感を覚えた私も、今では、自分の好きな色のランドセルを選べる方がいいと思います。

皆さんは、自分がふつうや当たり前と思っていたことが、必ずしもそうではないと、気付かされたことはありませんか。

今回のあけぼのでは、自分自身の中にあるふつうや当たり前という価値観が、社会全体の価値観だと思っている自分がいないだろうかと、自分自身を振り返り、問いかけることができるエピソードを紹介します。そこからいろいろな場面を思い出したり、想像したりすることを通して私の中にあるふつうや当たり前といった価値観に気付き、その価値観にとらわれ、自分自身を生きにくくしていたり、人を生きにくくさせてしまったりしていないかについて考えるきっかけになればと思います。

人権コラム 全国初となる三重県の条例を知っていますか

三重県では、不当な差別をはじめとする人権侵害行為等の禁止を基本理念とする、差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例が令和4年5月19日(一部令和5年4月1日)に施行されました。

この条例には罰則こそないものの、差別や人権侵害に対して県がその解決・解消に向けて介入する体制を規定した全国で初めての条例です。

この条例では、県に対して、不当な差別や人権侵害に係る相談に応じる義務を課しただけでなく、被害者やその家族などからの申し立てがあった場合に、差別をした相手に対して、その言動を改め差別をやめるよう促したり、両者の間に入って問題解決を図ったりするなどの仲裁役としての役割が規定されています。さらに、それでも差別をした相手が従わない場合には、行政指導に当たる勧告を行うことが出来るとされており、これまで相談だけでは具体的な解決には至らなかった差別や人権侵害を解決に導くことが期待されています。

また、条例では私たち一人一人にも、不当な差別やその他の人権問題の解決に向けてそれぞれの立場において主体的に取り組むことが求められています。

私たち自身が、人権問題の当事者であるとの認識のもと、誰もが大切にされ安心して暮らせるまちづくりに取り組んでいきましょう。

私たち一人一人が自分の生活を振り返ることから

差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例には、人権問題の多くは、社会構造の中で生じており、社会として解決していくことが必要である。私たち一人一人がその当事者であるとの認識のもと、自他の人権を尊重し、不当な差別をはじめとする人権問題の解決に向けて取り組んでいかなければならない、とあります。

人権問題の多くは、社会構造の中で生じている、私たち一人一人がその当事者、とはどういうことなのでしょうか。私たちの日常生活の一場面から考えてみましょう。

補足

広報つの紙面では、以下それぞれの項にマンガが掲載されていますが、音声読み上げ版では省略もしくは簡単な説明で表現しています。

あなたのふつうは みんなのふつう でしょうか

自分にとってはふつうと思っていたことが、他の誰かにとってはそうでないことに気付いたことはありませんか。

コロナ禍で感染対策が求められていたときは、マスクを着けるのがふつう、手指消毒をするのがふつうだと思っていた人が多いのではないでしょうか。しかし、さまざまな理由でマスクを着けられなかったり、手指消毒をできなかったりした人もいたはずです。

多くの人がやっていることをふつうだと捉えてしまうことで、そのふつうに当てはまらない人が見過ごされてしまったり、その人の思いや困っていることに気付きにくくなったりします。あなたにとってのふつうが、他の誰かにとってはどうなのか、立ち止まって考えてみませんか。

私の中の思い込み

マンガ

会社での一場面。

たけしさんは笑顔で、はい、今日のお弁当、と言いながら課長である妻にお弁当を渡している。妻も笑顔で、たけしさんいつもありがとう、と言っている。

それを近くで見ながら社員二人が話をしている。

(社員Aのセリフ)鈴木さんご夫婦、いつもたけしさんがお弁当作ってるんですって。

(社員Bのセリフ)へー。(空欄の吹き出し)

解説

吹き出しの中には、どんな言葉が入るでしょうか。もし、たけしさん、男性なのにすごいなー、や、ふつうは逆じゃないか、といった言葉が浮かんだなら、そこには社会の中にある性別による役割分担意識が影響しているのかもしれません。

私たちは、日常生活の中で知らず知らずのうちに、さまざまな思い込みや偏見が刷り込まれてしまっています。そうした思い込みや偏見が、自分自身や誰かの、自分らしく生きることを邪魔してしまってはいないでしょうか。女性だから、外国人なのに、障がい者は、とひとくくりにして思い込んでしまっていた自分の意識にまず気付くことが、お互いを尊重し一人一人が自分らしく生きられる社会をつくることにつながります。

たまたま得られた優位性

マンガ
1コマ目

ひろ子ちゃんと愛ちゃんが商店街にいる。愛ちゃんは車いすに乗っている。

(ひろ子ちゃんのセリフ)愛ちゃん、おなかすいたね。ごはんにしよっか。

(愛ちゃんのセリフ)うん、そうだね

2コマ目

(ひろ子ちゃんのセリフ)何にしようかな。和食、それとも中華にしようか、イタリアンもいいかも。

愛ちゃんはどこなら入れるか調べている。

3コマ目

(愛ちゃんのセリフ)ひろ子ちゃん、あのお店なら入れるよ。

(ひろ子ちゃんのセリフ)えっ、もう決めたの。

4コマ目

(愛ちゃんのセリフ)ここの商店街、車いすで入れるお店、限られているんだよねー。

(ひろ子ちゃんのセリフ)食べたい料理でお店を選べないんだ。私、気づいてなかった。

解説
自由に店を選べるのは

みなさんはマジョリティ特権という言葉を聞いたことがありますか。

車いすユーザーである愛さんは、飲食店に行くときは車いすで入れる店かどうかを確かめなければなりません。一方でひろ子さんは、自分が入れるかどうかを気にしなくても、入りたい店を選ぶことができます。それは、多くの店が多数派であるいわゆる健常者に合わせて作られているからです。ひろ子さんは、自分がたまたま健常者という多数派に属していることで、労なくして自由に店を選ぶことができるという優位性を得られているのです。このような多数派(マジョリティ)の優位性をマジョリティ特権といいます。

自動で開くドア・立ちはだかるドア

マジョリティ特権について、自動ドアに例えられることがあります。今の社会は、多数派に対して自動でドアが開いてくれるようなイメージです。一方で、少数派(マイノリティ)に対しては自動ではドアが開かずに立ちはだかります。自力でこじ開けなければならないため、前に進むには相当の労力が必要となります。多数派は、自分に対してあまりにも自然にドアが開いてくれるので、ドアの存在すら意識せずに済み、自動でドアが開くことがふつう、当たり前だと思ってしまいます。

マンガの中のひろ子さんは、車いすユーザーの愛さんの言葉から、自分がたまたま得られている優位性に気付くことができました。

少数派側からの視点

マジョリティにとってのふつうや当たり前が前提となってしまっている今の社会の中で、女性や障がい者、外国につながる人や性的少数者などの社会的マイノリティが、不利益を被ったり生きづらさを感じさせられたりしています。その事実に気付くためには、ひろ子さんのように、共に過ごしたり話を聞いたりすることを通して、マイノリティ側からの視点に触れることが必要なのではないでしょうか。

シリーズ人・ひと

今回は、三重短期大学名誉教授で、津市男女共同参画審議会会長の東福寺一郎さんから、男女共同参画に取り組むことになったきっかけや、津市の現状についてお話を伺いました。

男女共同参画について取り組むことになったきっかけを教えてください。

私の専門は心理学で、初めから男女共同参画や女性学の研究をしていたわけではありません。しかし、当時の三重短期大学長からの依頼を受け、2000年に開催された日本女性会議2000津の準備委員会・実行委員会に参加しました。そのときには、日本女性会議とは何か、男女共同参画とは何かなど全く知らないまま応諾したのですが、私にとって男女共同参画に没頭するきっかけになりました。

日本女性会議2000津はどのような会議だったのですか。

日本女性会議は、男女共同参画に関する国内最大級の会議として、男女平等社会の実現に向けた課題の解決策を探るとともに、参加者相互の交流とネットワークづくりを目的に1984年から毎年開催されています。2000年11月に三重県総合文化センターを主会場に、二日間にわたり全国から延べ4,000人以上が参加して開催されました。

ご自身の意識にも変化がありましたか。

私自身の子どもの頃を振り返ると、学校の授業では家庭科は女子、技術科は男子と分かれていましたし、結婚してからも、家事の大部分を女性である妻が担っていました。当時の私は、そのことに疑問を感じることはありませんでした。

しかし実行委員会で、社会の中で女性が置かれている現状や、男女平等社会の実現に向けた課題について議論を重ねることを通して、女性の置かれている状況を放っておけないという思いを強く持ち、日本女性会議2000津開催以降も県内において、市町の現状や学生の意識についての調査や男女共同参画に関する講演などの活動を続けてきました。

こうした経緯の中で、男は仕事、女は家庭といった固定的性別役割分業観を明確に否定し、また意識的に家内ではなく妻と言うようにするなど、日々の生活においてもジェンダーに敏感になってきました。

男女共同参画について、現状や今後の展望を聞かせてください。

国別の男女差を測るジェンダーギャップ指数という指標があります。2022年、日本の順位は146カ国中116位と低位にとどまっていますが、主たる原因は政治や経済の分野における女性の参画が遅れているためです。また、津市の市民意識調査からは、男女共同参画という言葉を知っている人の割合は8割に近づいていることや、学校では男女平等が実現しつつあると認識しているものの、家庭、職場、地域社会では男性の方が優遇されていると考えている人が多いことが分かります。

私は、男女共同参画を推進することは、多様性を受容するための突破口だと考えています。全人口の約半分を占める女性が、他の性である男性と対等に社会参画できないようでは、マイノリティ(少数派)の人々が大手を振って社会参画することは望むべくもありません。男女共同参画社会の実現は、多様性と共存社会への試金石とも言えるのではないでしょうか。


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