施政方針(令和6年2月/令和6年第1回津市議会定例会)

登録日:2024年2月21日


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 令和6年第1回市議会定例会の開催に当たり、令和6年度の市政運営に臨む私の方針を申し述べ、皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

 

 本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では、甚大な被害がもたらされ多くの尊い命が失われました。お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
 
東日本大震災以降、市民の安全安心の確保に向けたまちづくりに力を注ぐなか、改めて災害に備えることの大切さを認識した次第です。

 今回の能登半島地震では、発生直後に大津波警報が発表され、その瞬間東日本大震災のような津波被害が脳裏をよぎりました。
 折しも、本年全長11.2kmの津松阪港海岸堤防の整備が完了します。老朽化対策だけでなく南海トラフ地震発生に備えた耐震化を施す抜本的な改修として、天端高6mへのかさ上げと劣化コンクリートの打ち換えによる堤防強化に加え、地盤が弱く液状化対策が必要だと判断された区間の地盤改良工事も行われました。津ヨットハーバーへの入口となっている堤防開口部には国内最大幅のフラップゲート式陸閘(りっこう)が設けられ、平時は入口の道路面に格納されているゲートが浸水時の水位上昇とともに人為操作なしで路面から自動的に浮上して開口部を閉鎖するなど、伊勢湾岸の堤防は、より強靱で安全安心な堤防に生まれ変わります。
 中勢バイパスも昨年全線開通しました。国が昭和59年から約40年かけて整備したこの道路は、国道23号の交通渋滞解消や地域経済の発展に資するだけでなく、災害対応においても大きな役割を果たすインフラです。緊急輸送道路に指定されているものの津波による浸水被害が懸念される国道23号に対し、浸水エリアを回避した内陸部に位置することで、くしの軸のような形で内陸部から沿岸部への応急復旧活動を支援する機能を有しています。

 今回の能登半島地震では、被災した際道路などの社会基盤が必ずしも有効に機能するわけではないことが浮き彫りになりました。被害状況の把握による現場への適切な迂回ルートの確保や必要な交通規制、全国から駆け付ける人命救助等の実動部隊への迅速な情報伝達など、受援体制を確固たるものにしていくことが極めて重要です。ハードとソフトの両面から津市の災害対応力をさらに高めてまいります。

 

 私たちは「静かなる有事」ともいわれる少子化・人口減少という大きな課題にも直面しています。
 人口減少は将来にわたって続くと推計され、令和4年の出生数77万759人は統計開始以来、最少の数字となりました。人口構造が大きく影響するこの課題の解決に向けては、中勢バイパスや海岸堤防の整備と同様に相当な時間を要し、例え直ちに合計特殊出生率が人口置換水準である2.07に回復したとしても、人口減少が収まるのは数十年後となります。今を生きる者の責務として、積極的な行動を起こさなければ、取り返しのつかない状況に追い込まれます。2030年までが少子化傾向を反転させるラストチャンスと言われ、一刻の猶予もありません。よりこどもを生み育てやすい社会づくりに向けて、真に効果を発揮する施策に取り組んでいく必要があります。


 市民の暮らしは、新型コロナによって令和2年から令和4年まで異例の様相を呈しましたが、以前のように旅行をしたり、買い物をしたり、会食をしたり、行動制限もなくなって人とのコミュニケーションの機会も戻ってきています。
 新型コロナで人々の行動や経済が一旦停止していた年月を越え、コロナ禍以前の時代の流れを未来に繋ぐと同時に、防災・減災対策、少子化・人口減少対策はもとより、暮らしやすいまちづくりをあらゆる分野で力強く展開していくときです。

 

 市政も新たな段階を迎えています。
 合併後18年が経過し、いつくしみの杜や一般廃棄物最終処分場、産業・スポーツセンター、久居アルスプラザ、矢頭トンネル、上浜元町線など、合併による効果を高め、市民生活を支える社会基盤を整備し、その財源の多くは合併特例事業債を活用してまいりました。この合併特例事業債も令和7年度に発行期限を迎えます。710.5億円の発行限度額に対し既に668.8億円を活用してきており、さらに令和6年度には18.9億円を、最終年度となる令和7年度には22.8億円を活用し、合併特例事業債が有する優位性を最大限発揮させます。なお、償還額については既にピークを越えており、今後は減少していく見込みとなっています。
 合併後の一体感の醸成や均衡の取れた地域の発展に向けて取り組む一方、自治会問題で内部統制の脆弱さが明らかになりました。反省すべきことを反省し、改めるべきことを改め、統制の効いた強い組織としてリスタートしました。合併後に採用された職員は半数を超え、その中にはグループを取りまとめていく立場になる者も出てくるなど組織の新陳代謝も進み、例えば機動的救急隊(M.O.A.)や救急車到着前に応急手当を行う消防団員(FAM)のアイデアが若手職員の取組から生まれるなど、合併による効果を最大限引き出すフェーズから、未来に向けてこれまでは手掛けてこなかったような新たな施策に積極的に挑戦していくフェーズへと変わってきています。



 長い期間をかけて継続してきたことが繋がり、実を結び、次の時代へと伸ばしていく、これまで途切れていたものを繋ぎ、新たな高みへと伸ばしていく、課題を乗り越え新たな段階へと市政を伸ばしていく。
 これまで繋いできたものをそのまま未来に繋げるというものではなく、「一歩踏み出し、大きく伸ばしていく」を令和6年度のテーマに掲げ、3つの政策について申し述べます。


 1つ目は、未来に向けたこども・子育て政策です。
 これまで取り組んできた施策を深化させるとともに、真に必要とされる新たな施策も展開し、こどもを生み育てやすい社会づくりをさらに進めます。
 
本年9月から子ども医療費助成の所得制限の撤廃と中学生までの窓口無料化を行います。妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援策として、県内で津市だけが行っている妊産婦医療費助成についても、本年9月から所得制限を撤廃し自己負担のない窓口無料にします。また、妊娠中はホルモンバランスの変化などにより歯周病等になりやすくなり、妊婦が歯周病に罹患すると低体重児の出産や早産のリスクが高まると指摘されています。妊婦無料歯科健康診査を開始し、妊婦の不安の軽減を図ります。
 これらの事業を行うためには安定的な財源が必要となります。ボートレースの収益金を活用した津市独自のこども基金を創設することで財源を確保し、子育て応援ヘルパー派遣事業や子育て世帯移住促進空き家活用助成事業など、津市独自の新たな施策の立案にも取り組んでまいります。 

 本年4月に施行される改正児童福祉法において、市町村は全ての妊産婦、子育て世帯、こどものための一体的な相談支援を行う機能を有する「こども家庭センター」の設置に努めることとされました。これを受け「津市こども家庭センター」を設置し、児童虐待に関する児童相談所との連携、こどもの居場所づくり、児童の発達支援に係る専門的な相談や津市児童発達支援センターの管理などの体制の充実・強化を図るとともに、保育や子育て支援における量の拡充及び質の向上、若者を対象とした出会い応援の充実などの推進を強化します。

 こどもたちの居場所づくりも加速させます。
 高茶屋地区において民間事業者が整備を進めている幼保連携型認定こども園については、着実に令和7年4月に開園できるよう丁寧な支援を続けてまいります。放課後児童クラブについては、年1~2施設の整備や整備に向けた実施設計を行ってきましたが、令和6年度には誠之・白塚の2施設の整備に加え、修成・高茶屋の2施設の実施設計を行い、安全安心で快適なこどもの居場所を広げてまいります。
 学校施設については、平成23年度までに全ての学校の校舎及び屋内運動場の耐震工事を終え、平成24年度から令和2年度までに9校の校舎の大規模改造工事を行い、令和3年度からは普通教室棟を優先し7校の長寿命化改修工事を実施しました。令和6年度は、育生・片田・明合小学校、橋北・白山中学校の5校の改修工事に加え、栗真・豊が丘・桃園・千里ヶ丘小学校、東観中学校の5校の実施設計を行います。
 
また、エアコン整備やトイレ洋式化を進めるとともに、国の補助金の対象とならない消防設備や給水設備の改修等を進めてきておりますが、さらに、校舎の屋上防水や屋内運動場の床改修などを行う学校施設改修特別推進事業を進めます。その財源として、ボートレースの収益金を活用した学校施設整備基金を創設してまいります。


 2つ目は、未来に向けた都市づくりです。
 まちを支えるインフラの整備は、これまで積み上げてきたものを土台として新しいステージへと伸ばしていきます。
 大谷踏切は、本年12月に開通する予定です。開通後は、鉄道によって分断されている西側と東側の車の流れが変わります。
 そして、そこに長年、夢として語られてきた志登茂川河口架橋(第3江戸橋)と、鉄道との立体交差により市街地を東西に結ぶ下部田垂水線(上浜工区)が現実のものになろうとしています。
 志登茂川河口架橋は、三重県において橋梁の予備設計が行われていることに加え、当該架橋を含む工区の整備を少しでも早く進めるため、先に同工区にある津海岸御殿場線から着手することとし詳細設計が行われることとなりました。津市は、志登茂川河口架橋南詰から津駅東口へのアクセスとなる津駅前線の拡幅工事に着手します。
 下部田垂水線(上浜工区)の整備は、昨年8月の県政要望により、県において実施されることとなり、40年にわたり日の目を見なかった当該路線は、実現に向けた一歩を踏み出しました。津市も津駅周辺道路空間の再編に向け、津駅西口から西に繋がる広明町河辺町線、内多清水ヶ丘線の整備工事に着手してまいります。
 津駅周辺は、明治24年に初代駅舎が竣工し、昭和48年に現在の駅舎が竣工してから半世紀が経過した今、新たな歴史を刻もうとしています。官民が連携して基盤を整備する調査を始めます。津駅西口は、津駅西口広場駅前エリアマネジメント会議での議論を進めながら、早急に新たな西口広場の姿を示してまいります。東西自由通路については、事業イメージを明らかにしてまいります。
 津駅東口は、国のバスタプロジェクトのなかで交通拠点における機能強化の必要性等の調査が行われており、今後当該拠点の機能強化に関する具体的な整備方針の検討段階へと進むことが見込まれます。バスタプロジェクトの早期実現に向け、国や県との連携を密にし戦略的に取組を進めてまいります。
 大門・丸之内は、「津市大門・丸之内地区未来ビジョン」に基づき、官民連携のエリアプラットフォーム「大門・丸之内 未来のまちづくり」が主体となって実験的な取組や情報発信等を行っています。令和6年度は、回遊促進に向けたシェアサイクルの導入実験や公園空間における民間活力導入可能性調査が行われます。津市も引き続き地権者の土地建物活用等に係る意向把握のための調査を実施しながら、さらに深く地域に入り込み、都市機能の充実、居心地の良い空間形成、エリア価値の向上に繋げてまいります。
 豊かで便利な暮らしの実現に向けて、さらに一歩踏み込んだ施策も進めます。
 久居体育館、芸濃総合文化センター内アリーナ、安濃体育館及び一志体育館に空調設備を整備します。気温が高くなる夏季でも安心してスポーツなどを楽しむことができるよう久居体育館及び安濃体育館については工事を、芸濃総合文化センター内アリーナ及び一志体育館については実施設計を行います。市内唯一の陸上競技場である海浜公園内陸上競技場は、陸上競技の大会や記録会が開催可能な第3種公認陸上競技場として、また競技人口が多いサッカーやラグビーなど多目的なスポーツが実施できるフィールドを備えた施設となるよう、整備に向けて測量、地質調査に着手します。
 地域公共交通は、新たな仕組みを創設します。令和8年4月の津市コミュニティバスの次期再編に向けて、自由経路ミーティングポイント型と定路線型の運行を組み合わせたハイブリッド方式のデマンド型交通の構築を目指した実証実験を行います。
 インフラ整備は、目に見えるまちの姿を変えるだけでなく、その上で繰り広げられる人々の暮らしや経済活動などの在り方を大きく変えるものです。そしてそれらの完成は、まちづくりのゴールとなるものではなく、未来に向けた理想とする姿にさらに近づくための新たな土台となるものです。それらを積み重ね未来への階段を築き、高みを目指してまいります。


 3つ目は、未来の安心です。
 防災・減災対策をさらに強化してまいります。大規模災害時に全国から派遣される緊急消防援助隊などの人命救助活動を担う実動部隊が円滑に活動できるよう、道路の被災状況に応じた一方通行などの交通規制や緊急車両を優先通行させる措置をどこでいつ講ずるのかを事前にさらに詳しく決めておく必要があります。関係機関の出席による検討会を開催するなど緻密な事前協議を積み重ね、迂回ルート等による交通機能の確保とともに、把握した被害状況等の情報を迅速に実動部隊へ伝達する体制を確立させてまいります。その上で受援に重点を置いた災害対策図上訓練や総合防災訓練を実施し、外部からの支援を円滑に受け入れ、その支援を最大限活用できる実践力を強化してまいります。
 木造建築物等の耐震化のさらなる促進も図ります。今回の能登半島地震においては、自宅等の倒壊によって多くの方が亡くなりました。耐震化や家具の固定などの普及に向けた啓発を強化してまいります。
 上水道施設及び管路の耐震化も推し進めます。災害による水道施設の損壊に伴う断水を最小限に留めるとともに迅速かつ円滑な応急復旧を図るため、水道施設や老朽化した管路の耐震化を進め、各配水区間の連絡管整備や配水区域内の管路ループ化に繋げてまいります。
 地域防災情報通信システム(同報系)は、緊急防災・減災事業債を活用し、災害情報伝達手段への一斉送信機能の導入や有線網の整備による回線の冗長化を行います。
 浸水被害の軽減に向けた歩みも進めてまいります。雨水事業を実施している半田川田排水区では、ポンプ場の整備が完了したことから継続して進めている第1雨水幹線の築造に加え、令和6年度は新たに3か年の継続事業として第2雨水幹線の築造に着手します。藤方第二排水区では、いよいよ大口径の掘削に着工します。さらに「雲出川水系流域治水プロジェクト」の一環となる一志地域の浸水対策として雨水排水施設の基本・詳細設計を進めるとともに、桜橋ポンプ場を改築し施設の老朽化対策も進めてまいります。
 消防力も強化します。旧三重武道館跡地に整備を進め、来る2月26日に開署する北消防署に続き、中消防署西分署については解体工事及び造成・外構設計に、北消防署跡地に整備する火災・山岳救助等を想定した複合型訓練施設については解体工事及び造成・外構工事に着手し、整備を進めてまいります。
 令和5年の救急出動件数は1万8,110件で過去最多となりました。本年4月から三重大学医学部附属病院がバックアップに入る新たな二次救急輪番体制に移行します。救急搬送時間短縮に向けて、輪番病院と連携した取組を進めます。
 地球規模の気候危機に向けた地域脱炭素の取組も正念場です。地域脱炭素宣言以降、実効性のある取組を実践する事業者等とのパートナーシップの構築、地域脱炭素推進プラットフォームの設置などに取り組んでまいりましたが、もとよりそれらが真に機能するかが肝要です。市民や企業、団体等が連携を図りながら、現に二酸化炭素を減らす行動に繋がるよう実質を伴った取組としてまいります。

 私たちの生活を支える土地の未来も切り拓いてまいります。
 
まずは、農地です。地域計画の策定を進めるとともに、耕作放棄地の解消や未然防止など令和版営農会議等で明らかとなった地域農業における課題に対応するため、担い手等が営農を継続できる環境となるよう津市独自の営農継続支援事業を展開します。次に山林です。令和6年度から森林環境税の課税が始まります。森林環境譲与税の譲与基準の改正により、同譲与税の増額も見込まれます。津市は令和元年度から配分された森林環境譲与税をほぼ全額活用し、間伐等の森林整備など森林経営管理法に関連した事業に取り組んでまいりました。次なる段階として活用使途等について市民の皆様の御理解をいただきながら、経営管理権を設定した森林の間伐など森林の持つ多面的機能の回復をさらに進めるとともに、津市産材の木材利用促進事業も推進してまいります。
 民間事業者による新たな工業用地の確保については、優良な提案を選定し、準備が整った案件から地区計画の指定等に向けた協議を開始してまいります。
 河芸町上野地内における建設発生土処分場の整備は、かつて養鰻池であった土地に、河川浚渫等の土木事業の促進に資するといった新たな使命を付与し、土地活用の新しい未来を切り拓く一例となるものです。機能の早期発現に向け、しっかりと進めてまいります。
 未来の安心に向け、経験や知識を最大限生かし、知恵をしぼり工夫を重ね、一歩先を見据えた取組を行ってまいります。



 以上、3つの政策について申し述べ、令和6年度当初予算に計上した本政策に関わる事業等について言及しましたが、物価高騰対策や市政に関わる各分野の喫緊の課題をはじめ、市民や地域を支える他の施策・事業についても積極的に取り組むべきものです。この施政方針でお示ししたものを含め、各分野の施策・事業については、令和6年度当初予算の提案理由説明において御説明申し上げることといたします。

 

 これまで経験したことがない新しい時代が幕を開けています。
 人と人との関係、価値観、制度、ひいては常識とされていたものなど、社会構造そのものが大きく変化してきています。
 その変化を受け止め、そして市民に寄り添い、市民の声に真摯に耳を傾け、市民のために何をすべきかを考え抜くことを根底に、これまでの常識や概念にとらわれることなく、新たな視点、柔軟な思考を持って、迫りくる課題にも果敢に挑んでまいります。
 「一歩踏み出し、大きく伸ばしていく」。
 職員と共にこれを胸に、津市のさらなる高みに向けて市役所一丸となって力を尽くしてまいります。
 市民の皆様、議員の皆様の温かい御支援、御協力をお願い申し上げます。

 

 

 

 


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