「広報津」第464号(音声読み上げ)2 第55回市長対談 津駅周辺の将来像 バスタ構想から、まちの再編を描く

登録日:2025年8月1日


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第55回市長対談 津駅周辺の将来像 バスタ構想から、まちの再編を描く

建設政策課 電話番号229-3194 ファクス229-3345

津駅の開業とともに発展を遂げてきた津駅周辺エリア。利用者の増加に伴う駅前広場の混雑や、東西エリアの分断などの課題が増える中、道路法改正を契機に、津駅周辺道路空間の半世紀ぶりの再編に向けて動き始めています。

今回の市長対談では、中部地方整備局 もちづき たくろう 道路部長と名城大学 まつもと ゆきまさ教授に、バスタプロジェクトの構想や津駅周辺の再開発についてお話を伺いました。

対談メンバー

もちづき たくろうさんのプロフィール

国土交通省 中部地方整備局 道路部長

平成11年旧建設省入省。道路局環境安全・防災課地域道路調整官、国土政策局広域地方政策課調整室長等の要職を歴任後、令和5年7月から現職を務める。

まつもと ゆきまささんのプロフィール

名城大学 理工学部 社会基盤デザイン工学科 教授

「人と環境にやさしい交通まちづくり」をテーマに交通・都市・まちづくりに関する研究に取り組む。令和2年度から津市地域公共交通活性化協議会会長を務めるなど、津市の地域公共交通に精通する。

対談内容

新たな津駅の姿へと動き始めた駅周辺道路空間の再編事業

市長の発言。津駅周辺は行政、商業、オフィスなどさまざまな都市機能が集積し、また複数の公共交通の路線が乗り入れる交通の結節点でもあります。その歴史をひもときますと、津駅は明治24年に開業。駅の東口・西口では昭和39年から56年までに土地区画整理事業が行われ、昭和48年に現在の西口が、同54年に東口のロータリーが完成しました。このような中、特に大きく姿を変えたのは駅の西側で、丘陵地に住宅地や文教施設が建ち並ぶようになりました。もともと東側には商業施設やオフィスがたくさんあり、駅西も同様に発展してきたわけです。

今、この津駅の西口・東口の姿を50年ぶりに変えていこうと、国・県・市が話を進めています。この取り組みはちょうど5年前、令和2年の道路法の改正により「バスタプロジェクト」が位置付けられたことを契機にスタートしていますが、この内容についてお聞かせください。

もちづきさんの発言。バスタとは集約型公共交通ターミナルのことで、その整備・運営をバスタプロジェクトといいます。「みち・えき・まちが一体となった新たな未来空間の創出」をコンセプトに、バス利用者や周辺住民を中心とした空間づくりを推進しています。バスや鉄道など多様な交通モードの連結が目的の一つで、官民連携の推進のために民間開発やPPP・PFI(公共事業における官民連携の手法)なども活用しながらまちづくりをしていくものです。もう一つ大事なことがICTの活用で、ハード整備だけではなく、ICT技術を使ったソフト面の整備も進めています。これらを通じて、地域の活性化や災害対応の強化、生産性の向上などを目指し、現在、全国23カ所でバスタプロジェクトが進められています。

交通拠点性が高い産業構造と気運の高まりがもたらした津駅のバスタプロジェクト

市長の発言。県内では四日市市と津市の2カ所でバスタ構想が進んでいます。1つの都道府県で2カ所以上のプロジェクトが動いているのは、東京・神奈川・沖縄・三重だけで、私たちとしては大きな期待を寄せているところです。

まつもとさんの発言。県内2カ所というのは大変喜ばしいことだと思います。四日市市と津市は人口規模、そしてDID(人口が集中している地区)における面積・人口ともに県下1、2位ということで、産業構造が集約され、交通の拠点性も高い。集めて運ぶ公共交通にとって、ふさわしい人口・土地利用になっています。昼夜間人口比率も高く、仕事やショッピングのために昼間の人口が夜間よりも多いという特徴も見られます。

また、鉄道やバス路線が多数乗り入れており、国道も通っている。交通ネットワークの拠点性が高いことがバスタに選ばれた理由だと思います。

特に津市は、津なぎさまちの航路がありますので、これも大きいですね。

そして何より大事なのは、地元のやる気や機運だと思います。津駅東口・西口の整備から50年が経ち、地域と産業界で「新しいまちづくりに向けて津駅を盛り上げていこう」という機運が高まっているということではないでしょうか。

交通分析で見えた津駅の課題 鉄道ではなく拠点として「まちの顔」となるために

市長の発言。バスタへの期待が高まる中、国において進めていただいている調査の中で見えてきた課題を教えてください。

もちづきさんの発言。昨年の交通量調査において、路線バスの乗降者数は1日当たり5000人強と多くの利用がありました。その中で、東口のロータリー北側では、朝夕のピーク時にバス車両の混雑や乗降者と歩行者の錯綜が見られ、広さが足りていない所があると思われます。また、南側ではタクシーと一般車が錯綜し、さらに高速バス停留所はロータリーから離れた所にあり、屋根もなく不便さがうかがえました。

市長の発言。西口でもロータリーの見直しを進めていますが、離れた所にバス停があり交通の支障になっています。東口においても送迎バスの乗り場などが離れた場所にありますが、まつもと先生はこの交通分析をどのように見られますか。

まつもとさんの発言。タクシーと一般車は混在しているのですが、バスは分かれていますので、悪いわけではありません。ただ、駅の東西にバス停があり、初めて津市に降り立った人にとって分かりにくく、この点は解消すべき問題です。

また、一般車の流れが悪く、駅からまちへ向かう人の流れがバス待ち行列と交錯してしまうのは、将来的な改善が望まれます。

そして、駅とは交通の結節点であり「まちの顔」でもあります。駅からまちの中心へうまくつなぐ必要もあると感じます。

市長の発言。鉄道としてではなく「拠点」として考えることが大切なんですね。その上で、バスタにどのような機能を持たせるべく構想を進めておられますか。

もちづきさんの発言。バスタは公共交通の結節点であると同時に、地域のゲートウェイ(玄関口)として核となる施設です。公共交通機関の結節点として、鉄道やバス、国道23号からの一般車・タクシーなどを途切れなくつなぐことが大切です。また観光客も含む利用者が容易にバスを利用できるよう、ICT技術等も活用して分かりやすく案内する必要があります。

そして、バスタの機能の一つに防災機能があります。津駅周辺は昼間に働きに来る方が大勢いらっしゃいますので、万が一大きな地震が発生した時に、津駅が安全に一時避難できる施設となることが求められます。

公共交通ターミナルを整備するだけでは、地域の活性化は図れません。周辺の開発も含め、民間の力とうまく連携して進めることが大切だと思います。

駅とまちがつながる にぎわいと滞留空間を生むバスタ上部空間の活用

市長の発言。仮定の話ですが、東口にバスターミナルを整備する場合、平面的な利用のみならず立体的な利用も制度的には可能なのでしょうか。

もちづきさんの発言。立体道路制度を活用することで、道路の上部空間に建物を建てることや地下空間を活用することも可能です。

市長の発言。バスタでは駅の屋根をデッキとして活用するケースがありますが、これに加え上部空間をホテルやオフィス、レジデンスなどに活用する可能性も考えられます。このような津駅のあり方についてどうお考えですか。

まつもとさんの発言。津駅前は面積が限られていますので、立体道路制度を最大限に活用して駅周辺に集客機能を持ってくることは望ましいことだと思います。

もう一つ大事なことは、駅前だけで全てを完結させないことです。駅前に少し欠けているものがあって、それがまちにあり、駅とまちがつながっていく。そんな発想を持っていただくといいと思います。オフィスが集積すれば昼間人口が増え、昼間人口が増えればお店が集まり、周辺開発も進むという好循環につながります。そういう意味で立体化は床面積を増やす有効策だと思います。建設コストや維持管理も踏まえた上で、将来を見据えながらどんな駅がふさわしいかを、市民の皆さんと一緒に描いていく必要があります。

50年先まで使う空間として 駅・道路・周辺エリアをトータルでデザインしていく

市長の発言。バスタプロジェクトを進めていただく上では、まちとのつながりがとても大事だということですね。ちょうど県が「ほこみち制度(歩行者利便増進道路制度)」を活用した東口県道の歩道拡張を検討されています。市では、東西自由通路を整備することで東口のバスタと西口をつなぐ構想があり、まだ具体的な場所は決まっていませんが、これもまちを繋ぐ大きな考え方の一つです。

東口駅前広場に目を向けますと、津市が所有する駅前広場の道路用地は約5700平方メートルです。駅前広場全体では約7400平方メートルですが、平面利用としてはやや狭い感があります。今の発想としては、津駅の道路用地にバスタを持ってくることが考えられ、もう一つの考え方として、JRさんのご意向にもよりますが、駅ビルと一体的に捉えていけば、より高い建物が建てられるということも考えられます。これはあくまでも可能性というお話ですが、バスタから駅前再編の議論が始まり、まちづくりへ展開しようとしています。このようなまちの再開発の姿について専門の見地からご助言いただけませんか。

まつもとさんの発言。その発想は素晴らしいと思います。古いビルはいずれ再開発しなければならない中で、この機に乗じて一体的にやれば、1プラス1が2以上になる。都市計画の手法を活用し、例えば容積率の緩和により望ましい建物、施設誘導をコントロールすることも考えられます。全国の駅前広場の開発事例では、駅前だけを開発した場合に比べ、周辺も一体的に開発した場合の方がまちにとって良い結果が見られています。

開発に当たっては「これから50年使う駅として駅周辺も含めトータルデザインする」、「周辺道路も含めた検討をする」、「バスのネットワークを充実させる」という3つの要素が大切だと思います。そして一番大事なのは、歩行者が安心してくつろげる、歩きたくなるウォーカブルな空間づくりです。このような視点を持って取り組むことで、快適な駅前空間になると思います。

もちづきさんの発言。津駅周辺の取り組みは、これまで津市・三重県と一緒に調整してきて、この度、津市がビジョンを取りまとめ、こんなエリアにしたいという方向性を示してくださいました。今後は、公共交通ターミナルを整備するならばどのような機能を持たせるのか、また まつもと先生が仰る通り、どのように一体的にまちづくりをおこなっていくのか、しっかりと市・県と連携し、地域の方々とも対話しながら進めていきたいと思います。

市長の発言。ありがとうございます。バスタは津市にとって、国・県とお話しながら進めている大切なプロジェクトですので、今後ともよろしくお願いします。津市では、今年度、津駅西口駅前広場の整備に向けて設計を進め、東口については官民連携のあり方や進め方を調査する費用を予算化しています。引き続きしっかりと取り組んでまいります。

動画で対談全編がご覧いただけます

「津市 市長対談」で検索してください。

津駅の現状

東西駅前広場における混雑の解消に向けて、バス・送迎車両・鉄道・歩行者の状況等を把握するための調査を実施しました。

津駅の路線バス乗降者数

1日あたり約5300人

駅前広場への車両進入台数(ピーク時)

津駅の鉄道乗降者数

令和5年度 1日あたり約1万9000人

津駅西側の人口

津駅周辺基盤整備ビジョンにおけるコンセプト・目標

現状調査等で把握した地区の特性や課題等から、将来目指すべき姿を示す「津駅周辺基盤整備の方向性(ビジョン)」が津市により策定されました。

コンセプト

津駅東口

交通結節機能が強化され、広域から人が集まり、にぎわいや憩いの場がある東口

東西連携

さまざまな人が東西を行き交い交流が生まれる

津駅西口

市民の安心・快適な移動を支える西口

目標

交通結節機能の充実

誰もが使いやすく、快適に移動できる

防災機能の確保

安全に利用でき、災害に強い空間

にぎわい・滞留空間の創出

多様な人が集い、都市拠点の魅力が向上

東西連携の強化

東西の地域がつながり、交流が深まる

回遊性の向上

駅を拠点に、自然に人が集まる

津駅周辺の課題と将来像

津駅東口・西口・東西連携の課題と、ビジョンで示す目指すべき将来像をご紹介します

東口駅前広場

課題
将来像
多様な移動手段を集約する交通ターミナルとして整備することで、機能を強化
道路の上部空間を活用し、地域の活力を引き出すことで都市拠点としての魅力を向上

西口駅前広場

課題
将来像

安全性の高い歩行空間と乗降スペースの再配置による、誰もが使いやすく快適に移動できる空間へと再編。

東西の移動

課題
将来像
いつでも安全・安心、快適に東西を往来でき、効率的な乗り換えが可能な東西自由通路
案内誘導を充実させ、誰もが安心して歩ける駅周辺の歩行空間を整備

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