「広報津」第433号(音声読み上げ)津市人権教育広報 あけぼの 第36号

登録日:2024年2月16日


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折り込み紙3

津市人権教育広報 あけぼの 第36号

令和6年2月16日発行

教委人権教育課 電話番号229-3253 ファクス229-3017

声をかけ合える地域でのつながり

市内の全ての小中学校では、子どもの生活を知るためのアンケートを実施しています。ある小学校で実施したアンケートでは、「困った時に相談する人はいますか」「それは誰ですか」という設問に対して、「家族」や「友だち」以外に、多くの子どもたちが「その他」を選び、記述欄に「Yさん」の名前を書いていました。Yさんとは、毎朝その小学校の通学路で交通指導をしている地域の人です。後日、Yさんから次のようなお話を聞かせていただきました。

(Yさんのお話)

集団登校に遅れてきたAさんに「今日はどうしたの?」と聞くと、「昨日、お母さんの帰りを待っていたら寝るのが遅くなって、寝坊した」と返ってきました。また、表情のさえない日が続くBさんに「最近元気ないなあ」と声をかけると、「お父さんの仕事が早く見つかって、元気になってほしい」と伝えてくれました。

子どもたち一人一人がさまざまな生活状況の中で、いろいろな思いを持っています。私はどの子も笑顔で学校生活を送ってほしい。だから必ず笑顔で「いってらっしゃい」と、送り出しているんです。

その一方で、私が体調不良でしばらく休んでいて、久しぶりに交通指導に立ったら、「おばちゃん、大丈夫やった?」と子どもたちから声をかけてくれたんです。私は温かい気持ちになりました。私も子どもたちから元気をもらい、支えてもらっているんです。

(Yさんのお話 終わり)

「僕のことを知ってくれている大人が近くにいる」「私のことを気にかけてくれている子がいる」

そんな風に思える関係は、「自分が暮らすこの地域が好き」という思いにつながっていきます。

今回のあけぼのでは、地域での具体的な取り組みから、人と人とのつながりの大切さを実感し、「一人ではない」と感じられる地域づくりについて、一緒に考えたいと思います。

人権コラム 子どもの貧困を考える

厚生労働省の報告によると、日本では17歳以下の子どもの貧困率は11.5パーセント(2021年)であり、およそ9人に1人が相対的貧困状態にあるといわれています。

相対的貧困とは、その国の文化水準、生活水準と比較して、適正な水準で生活を営むことが困難な状態のことで、具体的には全世帯の所得の中央値の半分に満たない状態を指します。

相対的貧困状態にある家庭の中には、おなかいっぱいに食べることができない子どもや、おかずがなくご飯だけを食べているという子どももいます。また、家族の世話や介護をしたり、経済的な理由でクラブ活動や習い事、進学等を諦めたりする場合もあります。こうした子どもたちは、成長に必要なさまざまな経験や知識・学力を得る機会などを奪われてしまい、学校や社会で孤立してしまう傾向があるといわれています。

また、貧困は「当事者が我慢すべきこと」「自己責任であり恥ずべきこと」という社会的風潮があることから、SOSを発信しにくくなってしまい、より貧困が見えづらくなっているように思います。

さらに、このような状況は貧困から抜け出すことを難しくさせ、貧困が世代間で連鎖することにつながる一つの要因として危惧されます。

全ての子どもや保護者が孤立することなく、助けを求められる社会をつくっていくために、まずは貧困を個人の責任ではなく、社会全体の問題として考え、一人一人がその問題に対する見方や考え方を見直していく必要があるのではないでしょうか。

人と人とのつながりが生まれる、温かい場所。こども食堂の取り組みから

「こども食堂」は、「子どもの貧困対策」と「地域の交流拠点」を活動の柱とした民間発の自主的かつ自発的な取り組みです。今回は平成28年から開催されているけいわっこカレー食堂を取材しました。

インタビュー

(取材者)今日は津市乙部で開催されている「けいわっこカレー食堂」におじゃましています。会場となっているのは、児童養護施設みどり自由学園です。けいわっこカレー食堂の実行委員であり、施設長の中野智行さんにお話を伺います。よろしくお願いします。

(中野さん)こんにちは、けいわっこカレー食堂にようこそ!けいわっこカレー食堂は、毎月第2土曜日に開催しているこども食堂です。今年で8年目になりました。カレー食堂のある日には、朝から地域の子どもたちが集まってきてくれるんですよ。

(取材者)おそろいのエプロンをしている人たちは、スタッフの皆さんですか?

(中野さん)はい、そうです。地域の人たちのほかにも、高校生や短大・大学の学生さんがボランティアスタッフとして参加してくれています。最近では、小学生の中にもスタッフとして手伝いに来てくれる子がいるんですよ。

ここが、カレー食堂です。8月に食堂と調理室を改装して、以前よりも多くの人が集まりやすいスペースになりました。

(取材者)とても素敵な空間ですね。それに、大盛況ですね。

(中野さん)そうなんです。毎回、150食のカレーを用意していますが、いつも1時間程でなくなります。

新型コロナウイルス感染症が流行し始めた頃は、多くの人が集まることができませんでした。しかし、地域の人たちが顔を合わせる機会が減っていく中で、感染対策をとりながら継続できないかと考え、テイクアウトの形で開催してきました。

(取材者)食堂以外にも、昔遊びのコーナーや絵本の読み聞かせコーナーもあるんですね。

(中野さん)昔遊びのコーナーは、自治会長など地域の皆さんが来て、子どもたちに遊びを教えてくれているんですよ。その一人である丸橋さんをご紹介します。

(丸橋さん)民生委員・児童委員の丸橋です。

私は子どもたちと昔の遊びを通して触れ合えるのが楽しみで、毎月欠かさずに参加しています。毎週あってもいいと思うくらいです。ヨーヨーやけん玉、風船などの昔の遊びを通して、いろいろな経験をしてほしいと考えています。

ここにはさまざまな人が集まってくるため、子どもたちも学校とは違う雰囲気の中で活動や話ができる場になっています。コロナ禍で子ども食堂がテイクアウトしかできないときは、子どもたちと話ができなくて寂しかったです。ようやくみんなが集えるようになって、本当によかったと思っています。

けいわっこカレー食堂の皆さんの声

小学生の声
高校生の声
地域住民の声

担当者の思い

「よく来たな、元気やったか?」。けいわっこカレー食堂では、そんな声があちらこちらから聞こえてきます。この場所をきっかけに地域の中で、人と人との温かいつながりが生まれているのだと感じました。津市では他にもさまざまな運営団体が主体になり、市内各地でこども食堂が開催されています。

シリーズ学校・園では今 21
育生小学校の取り組み 地域とともにある学校づくり

津市では、全ての学校で地域学校協働本部を立ち上げ、地域全体で子どもたちの学びや成長を支えるとともに、学校を核とした地域づくりを目指して地域学校協働活動を進めています。今回の「シリーズ学校・園では今」では、育生小学校区の取り組みを紹介します。

地域が子どもたちの学びをサポート

育生小学校区では、普段から地域を支える活動をする人たちと学校で「地域学校協働本部(以下、本部)」を組織しています。この本部から地域の人で構成する「アシストチーム・育生」「育っ子応援隊」へ連絡が入ると、学校へ駆けつけ、子どもたちをサポートします。

図工の授業で電動糸のこぎりや彫刻刀を扱うときや、家庭の授業で調理実習やミシン・裁縫道具等を使った製作をするときに、アシストチームが授業の補助に入り、道具の使い方を教えたり作業を手伝ったりしています。

サポートする大人がいることで、安全を確保しながら、子どもたちが体験する機会を増やすことができます。また、子どもたちは、大人から声をかけられ、褒められることで意欲的に活動することができます。

地域とともにある学校へ

授業以外にも地域の力を借りて子どもたちを支える活動があります。昨年度、育生小学校の学校運営協議会から、学校のトイレに生理用品を置くことができないかと提案がありました。本部で協議し、地区社会福祉協議会の協力を得て設置しました。

今年度11月からは、本部が運営する放課後子ども学習教室がスタートしました。放課後、家に帰ってから一人で過ごしている子どもたちの居場所を作りたいという思いから、週1回、学校の音楽室を使って学習したり、スタッフと交流したりしています。

また、育生地域では、以前から地域が主体となった「いくっこさろん」が開かれています。地域の人やボランティアの中高生が力を合わせ、旬の食べ物や、遊び、体験の準備をし、子どもを中心に地域のつながりをつくる場になっています。

育生小学校の先生たちの声

教諭 坂倉淳一さん

子どもたちからは、よく地域の人の名前や「いくっこさろん」の話題が出てきます。また、いくっこさろんに参加すると、学校とは違った子どもの顔を見ることができます。そして、「子どもが安心できる居場所を作りたい」という地域の人たちの思いを実感します。いくっこさろんは、子どもが笑顔になれる場所です。私も子どもたちや地域の人からパワーをもらっています。

学校長 山口富生さん

「先生の負担が減ったら、先生が子どもに関わる時間が増える。そうすれば子どもが元気になり地域も元気になる」と話してくださる地域の人たち。本当にありがたいと思っています。また、地域の人たちと子どもたちの「おはよう、元気にしてたか?」「おっちゃん、最近見てなかったけど、風邪ひいてなかった?」と声をかけ合える関係がとてもすてきだと思います。地域の人たちが、子どもと関わることを通して人生を楽しんでいて、きらきらと豊かな生き方につながっているようにも感じます。私もそんな人になりたい、またがんばろうという気持ちにさせてくれます。


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