令和5年2月 教育方針

登録日:2023年5月15日

 令和5年度に重点的に取り組む教育施策の方針について、ご説明申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症との戦いは実に長いものとなりましたが、令和4年度は、ここ数年、子どもたちにとって必要かつ大切であるにもかかわらず、中止したり縮小したりせざるを得なかった諸行事、諸活動についても、感染防止に十分配慮しながら、「どうすればできるか」という考えを基本とし、実施に向け努力してまいりました。
 ある中学校では、3年生にとって入学して初めての全校生徒一堂に会した合唱コンクールが開催されました。堂々と素晴らしい歌声を全校生徒の前で響かせることができた3年生の達成感と、その歌声を聴いて感動する1、2年生の姿に直接触れることができた校長からは、一堂に会する学校行事の大切さを改めて実感したと聞かせていただきました。
 令和5年度、国においては、「こどもまんなか」社会実現の司令塔として「こども家庭庁」が設置されます。そして本市においては、教育振興ビジョンの後期計画のスタートとなります。
 子どもたちが生きるこれからの社会は人々の価値観がますます多様化するなか、お互いを尊重し、協働して生きていくことが求められます。教育においては知識、技能といった認知能力だけではなく、自己肯定感、失敗しても立ち直る力、協調性、思いやり、持続力等の非認知能力についてもバランスよく育成していくことが大切です。そのために、学年間・校種間等の縦のつながりをめざした「乳幼児期から小学校への連続した学び」、学校等と家庭や地域、関係機関等の横のつながりをめざした「学校と地域が一体となって進める教育」、そして「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実をめざした「津市GIGAスクール構想の実現」の3点を、教育振興ビジョン後期計画の重点施策として位置づけました。令和5年度はスタートの年として、教育委員会はその役割をしっかりと果たしてまいります。

 まず、教育振興ビジョン後期計画の重点施策にあげた「乳幼児期からの小学校への連続した学び」については、生涯にわたる人格形成や非認知能力の基礎を育む極めて重要な時期である乳幼児期の遊びや生活を通して培った学びが、小学校での自覚的な学びへとつながるよう、「津市架け橋プログラム」の取組を令和4年度から3年間かけて進めていきます。令和5年度は、モデル小学校区の園・校において、架け橋期カリキュラムの実践、検証を行い、それぞれの教育の質の向上を図る取組を中学校区等に発信するとともに、公私立の幼稚園、保育所、認定こども園が互いに連携し、津市全体の幼児教育のより一層の充実を図ってまいります。
 次に「学校と地域が一体となって進める教育」については、学校運営協議会と地域学校協働本部が両輪となって取組を進められるよう、令和4年度の活動を通して得られた先進事例を研修会等を通じて発信したり、地域コーディネーターの養成を進めたりするなど、学校教育と社会教育の分野とが連携を深め、地域の人々が学校運営に参画する体制づくりを進めます。
 そして「津市GIGAスクール構想の実現」については、タブレット端末等のICTを活用し、学校の授業と家庭学習をより連動させた学びを充実させるとともに、ICTサポーターによるサポート窓口での対応や新任教員への研修等、子どもたちの学びを支える環境の充実を図ります。また、授業支援クラウドやデジタル学習教材等を効果的に活用し、個別最適な学びと協働的な学びの一体化に努め、学校・家庭・地域との連携を通して、多様な子どもたちの資質・能力を育成し、誰一人取り残すことのない教育をめざします。
 一方、公立幼稚園においては、令和4年度に整備したタブレット端末等を活用し、教員の専門性を高める研修や会議を充実させるとともに、日々の保育へ効果的に活用し、幼児の園生活等を家庭へ動画配信するなど、幼児教育への理解を深める子育て支援につなげてまいります。
 その他の取組として、平成26年度から市内すべての中学校区において進めてきている小中一貫教育において、9年間を見通した系統的で連続性のある取組をより一層充実させるとともに、幼稚園等との接続を意識した連携やカリキュラムの実践・検証を進めるなど、幼児教育と学校教育の途切れのない指導の充実を図ります。また、各学校のマネジメント機能の強化を図り、教職員や学校内の多様な人材が、それぞれの専門性を生かして能力を発揮することができるよう、引き続き、教職員等の人材育成に一丸となって取り組みます。
 学校教育においては、生きて働く知識や技能の習得はもちろんのこと、未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成、学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性の涵養を図り、これからの社会を生き抜いていく子どもたちに求められる確かな学力として、その育成に向けた様々な取組等を推進します。
 具体的な取組の主なものとしては、全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙の回答と教科の正答率には相関関係があることが示されていることから、各学校において課題が顕著な質問項目について、児童生徒の実態と照らし合わせて要因を分析し、授業改善等に取り組むことで学力の向上につなげたいと考えます。とりわけ特化研究プロジェクトの研究校においては、課題解決のため大学教授等のアドバイザーのもと授業改善に取り組み、その先進的な取組を中学校区等で共有し、さらに市内全体へその成果を広げてまいります。
 特別支援教育は、きめ細かな指導・支援を実践し、児童生徒一人一人の自立と社会参加に向けた取組を推進するとともに、すべての学校において、障がいの有無に関わらず、子どもたちが互いの目標を持ちながら、同じ場で共に学ぶことができるよう交流及び共同学習の充実を図ります。具体的な取組としては、「津市版特別支援教育ハンドブック(改訂版)」を活用し、ユニバーサルデザインの視点を生かした授業づくりを進めるとともに、学校サポーター及び特別支援教育支援員等の活用や、医療関係機関等との連携により適切な支援につなげ、通級指導教室や幼児ことばの教室において、一人一人のニーズに応じた対応の充実を図ります。また特別支援教育コーディネーターや特別支援学級担任はもとより、通常の学級担任等を対象とした研修及び特別支援教育の中心を担う人材を育成するための連続講座の充実を図り、すべての教員が特別な配慮や支援が必要な子どもたちへのきめ細かな対応ができるよう努めてまいります。
 人権教育については、子どもたち一人一人の人権意識を高め、園・学校が、すべての子どもたちが安心して過ごせる場となるよう、人権教育カリキュラムに基づいた取組を進めてまいります。
 外国につながる児童生徒への教育については、コロナ禍の影響で減少していた外国人児童生徒の転入も、コロナ禍前の状況に戻りつつあり、初期日本語教室「きずな」及び「移動きずな」のさらなる充実を図るとともに、初期の日本語学習を終えた子どもたちが、日本語での一斉授業において効果的に学ぶことができる指導方法についての実践研究を進めてまいります。また、就学前の外国につながる幼児に対しては、入学した小学校で戸惑うことなく、小学校生活に早期に対応できるよう、引き続き就学前日本語教室「つむぎ」を実施し、取組のより一層の充実を図ります。
 不登校児童生徒については、年々増加傾向にあり、その要因・背景はより複雑化・多様化しているため、学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することをめざしていけるよう、令和5年4月に開設予定の三重大学・津市子ども教育センターをはじめとする関係機関等と連携し、児童生徒一人一人のニーズに応じた支援の充実を図ります。また、いじめ、虐待、ヤングケアラー等の課題については、児童相談所や福祉部局等の関係機関との連携のもと、事例検討会等を開催するなど、課題の改善に向けた取組を進めるとともに、心理や福祉の専門家であるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーや弁護士等、多様な専門的職種との連携によるチームでの対応のより一層の充実を図ります。
 水泳授業については、今後も使用が困難となる学校プールの増加が想定されます。このため、令和4年度は老朽化のため自校プールの使用が困難となった5校に対して、試行的に民間プールを活用した水泳指導を実施し、その効果等について検証してまいりました。令和5年度は、更に白塚小学校、立成小学校、上野小学校、千里ヶ丘小学校、家城小学校、川口小学校の6校を検討の対象校に追加し、合計11校に対して民間プール・公用プールを活用した水泳指導や、学校プールの共用化、施設修繕を行うことにより、子どもたちが水泳授業を受ける機会を確保してまいります。
 また、これらの様々な取組を進めるためには、引き続き、教員が子どもたちと向き合う時間の確保に努めることが必要です。このため、令和4年度には市単独事業として配置している教員支援員を10人20校へ配置し、国の施策であるスクール・サポート・スタッフを全小中学校へ配置しました。各校においては教員の事務作業等の負担が軽減され、教員が子どもたちと向き合う時間の確保につながっています。令和5年度におきましても、引き続き教員支援員の効果的な配置ができるよう取り組むとともに、スクール・サポート・スタッフの配置・拡充を、国・県に対し強く要望してまいります。
 さらに、部活動については、休日における部活動の地域移行等を見据え、部活動指導員を拡充するとともに、外部指導者、地域ボランティア等の地域の指導者を積極的に活用した指導や地域スポーツ・文化クラブ等と連携した活動を行うなど、子どもたちの活動の保障と教員の負担軽減につなげる取組を進めてまいります。
 国においては、令和3年に義務標準法が改正されたことで、小学校全ての学年において段階的に35人学級が導入されることとなりました。これまでの学力向上に加え、感染症対策の観点からも教育環境の整備を図るため、県独自の少人数教育推進事業の更なる充実と、中学校についても学級編制基準が引き下げられるよう国に対して要望してまいります。

 学校施設は将来を担う子どもたちの学習・生活の場であり、子どもたちが安全で快適に学ぶための施設整備を進めていくことが、学校教育の充実につながります。また同時に学校施設は災害時には地域住民の避難所としても活用される極めて重要な施設でもあります。このことから、国の防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の趣旨も踏まえ、普通教室を含む校舎棟のうち、外装、内装ともに劣化が進んでいる棟を選定し、機能維持やバリアフリーへの対応等を図るための長寿命化改修事業に取り組んでいます。令和5年度は東橋内中学校及び西橋内中学校の工事を実施するとともに、より迅速に改修を進めるため明合小学校、片田小学校、育生小学校、橋北中学校及び白山中学校の設計に着手してまいります。また、旧豊津幼稚園園舎解体跡地については豊津小学校駐車場としての整備を進めます。

 学校給食については、引き続き安全安心な給食の提供に努めるとともに、老朽化している一志学校給食センターの施設改修を進めます。また、給食食材費等の高騰が給食費値上げによる保護者負担とならないよう、食材費上昇分の支援を継続してまいります。

 利用児童が増加している放課後児童クラブについては、そのニーズに応えるため、引き続き狭あい化している施設を中心とした施設整備を計画的に進めてまいります。令和5年度は、一志放課後児童クラブの施設をとことめの里一志施設内へ改修整備するとともに、誠之放課後児童クラブについては、2つ目の施設を整備するための実施設計を行い、児童の放課後等の安全安心な居場所を確保します。
 また、放課後児童クラブの運営に関しましては、引き続き、運営や支援員確保のための支援を行うなど、クラブの充実に向けた取組を進めてまいります。
 さらに、放課後児童クラブの未設置校区である明小学校区においては、平成30年度に設置済の放課後子供教室に加えて、自治会施設を借用して、放課後児童クラブを設置し、児童の放課後等の更なる居場所づくりに取り組みます。

 公民館については、市民の社会参加や社会貢献を促進する講座や、多世代の方の生きがいづくりを支援する講座を推進するとともに、オンラインによる取組を組み合わせることで、講座活動の活性化に努めます。また、地域の人と人とをつなぐ地域活動の拠点としての機能を推進してまいります。
 さらに、敬和公民館の放送設備改修工事を進めるほか、公民館施設の老朽化に伴った修繕等による適正な維持管理に努めるなど、学習環境の充実に努めてまいります。

 図書館については、乳幼児から大人まで様々な年代に読書の大切さを伝えるとともに、学校やボランティア団体との連携により、子どもたちに興味や関心を持ってもらえるような資料の提供やイベントの実施を通じて、読書活動を推進してまいります。また、レファレンスサービスの強化のため、利用者が求める最新の資料の充実を図るほか、電子書籍などの新たな非来館者サービスについて、調査・研究を行ってまいります。

 文化財については、指定文化財や登録文化財として保護を進めるとともに、その修理や伝統文化の継承への支援を行い、市内に残る様々な歴史的資源の保存と活用を図ってまいります。
 県指定史跡である津城跡については、これまで蓄積してきた歴史資料や調査結果等に加え、津城跡の現状についての多様な情報を広く公表し、これに対する市民の声に耳を傾けながら、整備に向けた協議を進めてまいります。
 また、市内の資料館をはじめ市の公共施設を活用して文化財や収蔵資料の展示公開を行い、市民が歴史と文化に触れる機会の拡充に向けた取組を引き続き進めてまいります。
 以上、令和5年度の教育方針について申し述べました。
 Society5.0時代を踏まえた技術革新の急速な進展や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、教育を取り巻く環境を大きく変化させました。このような時代にあって、直面する課題を子どもたちが主体的に捉え、その課題の解決に向けて自ら考える力を育むとともに、持続可能な社会の創り手となる自立した人づくりをめざし、総合教育会議における議論等を踏まえ、学校現場や保護者、地域の皆様の声をしっかりお聞きするとともに、国の施策も注視しながら、柔軟かつ着実に教育施策の取組を進めてまいります。
 市民の皆様、議員の皆様の御支援と御協力を賜りますよう、心からお願い申し上げます。
 

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