平成24年5月27日及び8月19日に、「こども園ってなあに?」「幼保一体化ってなあに?」「仕事をしたいけれど、どこに子どもを預ければいいの?」などについて、日ごろの思いや、これからの津市の保育・教育について、オープンディスカッションを開催しました。その結果は次のとおりでした。
津市では保育所の入所率が100%を超える一方で、幼稚園の就園率は50%強というアンバランスな状況があります。これは現行の保育所・幼稚園という枠組みが、保護者のニーズと合致していないことが原因の一つだと思われます。津市にはすでに幼保一体化施設があり、これらの事例を参考にしつつ、市民の生活スタイルに適応した、津市独自の幼保一体化を進めたいと考えます。そこで、子育て中の保護者の代表や、子育て支援の関係者等によるディスカッションを開催しました。
平成24年5月27日(日曜日)14時30分から16時30分まで
津市本庁舎8階大会議室A
私たちが望む乳幼児の保育・教育とは?
子育て中の父母、子育て支援スタッフ、大学教員と岡田克也副総理(社会保障・税一体改革担当)、前葉泰幸市長の9名
長谷川聡子氏(株式会社 WillStaff(ウィルスタッフ) 代表取締役)
131名
岡田副総理から国会での審議の状況や政府の考えを伺った上で、津市としてどのような姿をめざしていくかをディスカッションメンバーと参観者の方々の意見も交え、考えていきました。
◆すべての子どもたちに平等であり、待機児童の解消をめざす幼保一体化に賛成。子どもたちの笑顔につながる制度となるよう建設的に話を進めていただきたい。現在の法案審議の中で何が課題か教えてほしい。
◆自分は、子育てを応援している企業のもと、そこでやりがいを持って働きながら子育てができた。そういう仕組みづくりを行政の力を借りて推進していきたい。
◆すべての子どもに良質な教育を!という幼保一体化に賛成。しかし、待機児童を減らすため、窓口を広げることにより、保育の質の低下にならないか?また、市町村の責務が認定だけになり、保護者負担が大きくならないか?
◆幼保一体化を早く進めてほしいが、なかなか進まないのには課題があるのでは?こども園制度も複雑になり、競争が激化するのでは?
◆実際に子どもが幼保一体化施設に通っている。敷地や運動場が同じで、行事も時々、一緒に行っている。先生たちがカリキュラムを一緒につくったり、行事について一緒に話し合ったりしていることを聞き、とてもよい取組と感じた。同じ小学校へ行くので、就学前に一緒に学ぶのは良いことだと思う。
◆こども園となった時、安全面や保育士さんの数などが心配。また、一体化することで、教育内容はどうなっていくのか。
◆子育て支援広場に通う若いお母さんたちの話題は、幼稚園、保育所のことが多い。お勧めのところは?とたずねられることもある。子どもは津市の宝物なので、みんなで守っていきたい。
◆これから、一体的にしようという以前の問題として、幼稚園教諭、保育士が、子どもの生活にどのようなねらいを持っているかが重要である。また、保護者側からは、自分の子どもの育ちを保障するためにどういう基準で園を選ぶかが課題となる。そのため、保護者も、子どもを育てるためにどうあれば良いのかをしっかりと意識し、勉強することが必要となり、園側は、それをしっかりと示していくことが必要となる。
◆延長保育や病児保育のことが働くお母さんたちの心配ごとの一つ。今、津市では病気の子を預かってくれる施設が非常に少ない。育休が終わり、仕事復帰した一番大事な時期に休みを取らねばならないことが多くなるので、これらの事業の充実を希望する。
◆子どもが病気の時は、仕事を休んで家に居てやりたいと思うが、正規雇用でない場合、やめさせられならないかと不安になる。もう少し、母親にやさしい法令、制度ができればありがたい。
◆子育て支援については、保育所側だけでなく、職場側からも一緒に対策を考えて取り組んでいってほしい。
◆子どもが病気になったら、お母さんが仕事を休むという前提になっているが、子どもはお父さん、お母さんで育てるので、お父さんも交代で休めるような環境、職場であってほしい。
◆津市でもフレックスタイムを取り入れていってほしい。
◆津市の場合、公立幼稚園で給食が実施されていない。お弁当も大事だが、みんなが同じものを食べる給食も幼稚園には必要。
◆未就園児の中には、いくつかの広場へ日替わりで参加している親子も多い。それは、少子化、核家族化や、地域のつながりが希薄となっている社会の中で、かかわりを求めているのだと思う。これからの津市には、各地域に支援センターがあって、その延長線上に幼保一体化施設があればいいなと思う。また、次世代が子育てを楽しんでいきたいと思えるような街づくりをしていくために、今後もディスカッションの継続を願う。
◆親の働き方で幼稚園と保育所に分けられることに寂しさを感じる。全ての子どもが同じ場所で学べることを望む。保育所と幼稚園を統一してほしい。
◆私たちが望むのは、どの子も平等に発達できるような保育が保障されること。今回の新システムは、保育・教育をお金で買う仕組みであることや、児童福祉法第24条の市町村の保育実施義務を外すということが問題である。一体化については、もっと時間をかけて検討していくべきである。
◆保育士をしていて、なぜ幼稚園と保育所に分けなければならないのか疑問に思っている。子どもたちの持てる力を十分に伸ばそうという思いは幼保ともに同じ。しかし、幼保それぞれに歴史があるので、すぐに一体化というのは難しい。現場の意見をもっと聞いて、子どもの立場からの議論が必要。
◆今回の震災のように保育所が倒れた場合など市町村に実施義務がなくなった時、施設を立て直すなどの責任がなくなるのではないか。また、待機児童の把握が本当にできるのか心配。
◆このような、市民や現場の意見を聴く機会を繰り返し持ってほしい。法律ができ、施行されてからもチェックをしていってほしい。
◆私立保育所で、読み書き計算を取り入れた。そのことに期待している保護者が多いことから、幼児教育の大切さを感じる。ぜひ、幼保一体化を進めてほしい。
◆幼稚園では、子どもが帰った後、翌日の教育内容に関わっての環境準備等が、大事な業務である。それ以後の保育については、保育は保育、教育は教育に専念できるとよいのでは。幼保のいいとこどりというよりも、それぞれの拡充ということで期待が持てる一体化になる。
◆保育所は、朝7時から夜7時まで保育をしている現状。この仕事が好きだから使命感をもってやっている。次回のディスカッションには、現場の職員もメンバーに入れてほしい。乳児保育の中にも養護面と教育面がある。現場の保育士の頑張りを知ってほしい。
◆市長が、市民や保護者の意見を聞いて、津市独自の幼保一体化を模索するといった発言に期待している。
◆大都市部の待機児童の問題と津市のような地方都市の状況を一緒に議論してもいいのか。
ありがとうございました。教育の中身をしっかり考えていかなければならないと思うし、それらの情報を市民の方々にしっかりと伝え、保護者が選択することができる就学前の在り方を考えていきたい。次回のオープンディスカッションでは、主に経営者側の方々のご意見をいただく会を考えています。
公私立保育所・幼稚園の経営者や企業経営者の方々に集まっていただき、国で審議中の子ども・子育て関連3法案について県関係者より説明を受けた後、第1回オープンディスカッションでの議論の内容や津市の公私立幼稚園、保育所の抱える課題を踏まえながら、私たちがめざす乳幼児の保育・教育について、意見交換を行いました。
平成24年8月19日(日曜日)10時から12時まで
津市本庁舎8階大会議室A
私たちがめざす乳幼児の保育・教育とは?
前葉泰幸市長、三重県子育て支援課長、幼稚園・保育所の関係者(施設長、園長等)、子育て支援関係者、企業経営者、大学教員の9名
長谷川聡子氏(株式会社 WillStaff(ウィルスタッフ) 代表取締役)
80人
第1回オープンディスカッションから法律をめぐる状況が大きく変わり、認定こども園法の改正となった。前回は、主に保護者や子育ての関係の方々に集まっていただき、御意見を伺った。今回は経営者側の御意見を伺う会にしたい。これまで、幼稚園と保育所は、文部科学省、厚生労働省とそれぞれの省庁が管轄し運営されてきた。しかし、今、国の新しい制度のもとで内閣府に一本化しようとする流れがある。国では、なるべく柔軟な、そして自治体なり最前線の保育・幼児教育に関わる方なりの思いに沿ったような仕組みをつくりたいと思っておられる。ここでの議論が、新しい制度に反映されていくように私たちが声を挙げていきたい。この会のねらいは、津市の子どもたちのためにどういう幼児教育、保育を提供していくかということになる。どうか活発な議論をお願いしたい。
法律改正の背景としては、少子化が進み、仕事と育児のバランスをこれまで以上に考えていく必要がある。今回はそういった意味で、子育て支援の部分の制度改正である。
修正されたポイントとしては、(1)認定こども園制度の改善。(2)認定こども園、保育所、幼稚園への施設型給付。(3)地域型保育給付の創設。(4)市町村が実施主体。(5)消費税引き上げによる恒久財源の確保。(6)認定こども園の所掌事務を内閣府に一元化。(7)子ども子育て会議の設置。
今後の流れとして、子ども子育て家庭の状況・需要を把握し、合議制の会議等を経て、市町村の子育て支援事業計画をつくる。
認定こども園法の改正により、これまで、学校及び児童福祉施設としての法的位置づけだったものが、新たな幼保連携型認定こども園という単一の施設となり、指導監督等についても1本化される。総合こども園は、NPOや企業の参入も認められていたが、今回の認定こども園法では、学校教育をになう部分については、議論の末適切でないということになった。
現在三重県には、幼保連携型認定こども園が2園、保育所型が1園、幼稚園型が1園の計4園がある。市町村の役割、財源の説明。
◆子ども子育て関連修正案では、児童福祉法の精神が尊重され、保育における市町村の責任が明確にされ、喜びと安堵を感じている。子育て環境の充実を図り、この街の未来を担うすべての子どもたちの最善の利益を保証し、保護者の皆さんが安心して子育てをすることが出来る、そういう環境を創る新法であってほしい。
◆次世代育成支援法の前文には「家庭や子育てに夢をもち、かつ次世代の社会を担う子どもを安心して産み育てることができる環境を整備し…」と書かれ、2条に「少子化に対処するための施策は、父母、その他の保護者が子育ての第一義的責任を有するという認識のもとに」とある。保育サービスの充実が叫ばれ、真にこういったサービスが必要な家庭もあるが、保育サービスが一般化されると、これらの理念とどんどん乖離していく現実がある。幼児期の大切な時期に、親が子育てを施設にお任せといったことが一般化されていくのはよくない。
◆幼稚園という集団生活の中で、子どもたちはより多くの友だちと出会い、一緒に遊ぶ中で喧嘩したり遊具やおもちゃを取り合ったりしながら人とのかかわりを学んでいる。津市の公立幼稚園では、園児数の減少で、そういった切磋琢磨する機会の減少が課題であるという幼稚園が増えている。こういった課題を解決するために神戸幼稚園、櫛形幼稚園、片田幼稚園で合同保育を行っている。子どもたちが順番を待つことや、我慢することを学ぶだけでなく教員同士が研修を深め合うあう機会もできたという報告を聞いている。
◆津市の将来の人口推計を見極めた上で需給バランスを考えた適正な施設配置計画が必要。
◆会社経営者としては、男女共同参画に応える企業として子育て支援を行ってきているが、企業の側からいうと、子どもが病気になった時に、一時子どもを預かる病院の設置、小児科病院への救急処置といったサービスが提供されることが望ましい。
◆子育て世代の母親に学校、幼稚園、保育所から子どもが熱を出したので迎えに来てほしいという要請があると、経営者としては協力している。しかし、これの何が問題かというと、女性の労働が常に細切れになるということである。結婚でやめる、出産で休む、そして子育てで休暇を取る。しばらくしたら親の介護で休む。男性はずっと働くのが当たり前、女性はキャリアがつめなくなっている。「子育てしやすい街」とは男女とも市民が安心して働けて、賃金も得られて、そして子どもと一緒に生活できるといったそういう街ではないかと思う。
◆ワークライフバランスということが叫ばれているが、まだうまく機能していない。
◆良質で豊富なサービスが提供されれば、子育てしやすい街ではないか。もうひとつは、休日とか夜間とか子どもが病気の時など特別な状況時の対応ができるかという部分。こういったものは行政の責任でやっていくべきだと考える。
◆子育てママの孤立が進み、子育て支援に取り組んできているが、最近の子育て中の保護者の質が変わってきているという思いをもつ。本当の意味での親になっていないと感じることがある。
◆年度途中に保育所に入所できないという待機児童の問題もあり、公立私立の特性を生かした役割分担をしていく必要がある。また、幼稚園で、0歳から2歳児の保育もできるような施設の拡充や保育士の配置基準の見直しなどもしていくと、よりよい環境での保育ができる。
◆待機児童の問題は、保育所の問題というより社会全体の問題。企業が子育て支援や、就労支援の取組を行うことはありがたい。
◆職員の配置基準について、津市の未来への投資と考え、国の基準を超える大幅な改正を考えてほしい。また、保育士の確保も課題であり、津市立の高等教育機関内にぜひ保育士資格取得養成課程を設置してほしい。
◆保育所では乳児から連動性のある保育を実施することで見通しをもって一人一人の発達過程に即した関わりをもつようにしている。
◆私立幼稚園の教育として0~2歳児の保育についてどのように考えてみえるのか?
◆地域によって異なると思うが、おそらく0歳から就学前まで受け入れる形で移行してく幼稚園が増えていくだろう。
◆志摩市は、旧5町が合併して市になり、30もの就学前施設があった。これを10年間で半分くらいの一体化施設にしようと計画が進んでいる。また木曽岬町、朝日町、東員町で幼保一体化運営をしている。一体化のためには乗り越えなければならない課題の解決や幼保の職員の研修等を行いながら、実際の動きにつなげている。
◆幼保連携型認定こども園の所管が内閣府になることの問題、その保育料はどうなるのか?現在の保育料のような保護者の収入に応じた負担になっていく。その設定は市町村の設定になるのではないか。
◆子ども関連3法案成立により、一体化の環境が進むと思われる。今後幼稚園と保育所の所管を一本化していくことも必要である。行政の役割も大切である。
◆津市として制度の変わり目でもあり、施設型給付になった時にこれを具体的にどうしていくか、課題意識をもっている。また、今後、小規模化している幼稚園をどうしていくかという時に、統合という話になれば当然広域化していくし、給食実施の問題もある。今後、私立幼稚園側の皆さんとしっかり話し合い、津市のあるべき幼稚園保育所の姿をどうしていくか、子ども園の姿をどうしていくか、津市立施設の運営者としての役割と津市の制度を所管するマネージャーの役割をしっかり区別しながら果たしていかなければならないと考えている。
◆幼保連携型認定こども園になっていく私立幼稚園が多いという話で、そうなったときに預かり保育などの部分の財政的支援はあるのか?また、そこで携わる職員の免許状はどうなるのか?
⇒預かり保育については、財源保証がされてくる。認定こども園の先生の免許は、両方の免許状が必要になるが、当面5年間は経過措置がなされるだろう。
◆子どもを預かる施設としては、幼稚園教諭や保育士が愛情をもって育てるわけであるが、一番大事なのは保護者の温かみ、愛情である。そういった意味で子育て支援と就労支援は車の両輪とすべきで、幼稚園、保育所が子育て請け負い施設になってはいけない。津市独自の幼保一体化をめざすのであれば、日本一子育てに優しい活気ある津市をめざしてほしい。
◆本当に子育てしにくい街だと思った。他の町の取組も調査し、子育てしやすい街づくりをすれば若い世代も帰ってくる。
◆家族で過ごす時間が一番大事。この時間を充実するために、幼稚園や保育所でサポートできることを考えてほしい。
◆子どもを遊ばせるところが少ない。
◆子どもを育てる第一責任者は保護者という理念が大切である。
このディスカッションを踏まえ、津市として、こういうことができるという前向きな考え方で場所づくり、システムづくりを行っていきたい。まだまだ制度の明らかになっていない部分もあるので、県を通じて子育て支援の仕組みについての情報が、早く提供頂けるようにお願いしていく。