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折り込み紙4
第27号 令和元年7月16日発行
教委人権教育課 電話番号229-3253 ファクス229-3017
皆さんは女性がバスやタクシーを運転している姿を見て、どんなことを思いますか。あっ、女性の運転手だ、と驚きますか。今まで男性の仕事と思っていたけど、女性もするようになったんだ、とうれしく感じますか。それとも、これは当たり前のことだ、と特に気にすることはないですか。
女性の活躍が叫ばれ、企業において少しずつ女性役員や管理職が生まれ、かつて男性の仕事とされた領域にも女性が増えてきています。性差による職業選択や仕事上での不平等感は改善されつつあるように感じます。しかし、そんな社会の変容は、私たち一人一人の意識の中で当たり前の姿となっているでしょうか。性別に対する固定的な役割分担意識など、社会通念や私たち一人一人の意識といった問題はどうでしょうか。
さまざまな人権課題の解決に向けたこれまでの取り組みから、人々の意識が変わることが制度や社会の仕組みを変え、また制度や社会の仕組みが変わっていくことで、さらに多くの人々の意識が変わっていくことが明らかになってきています。今回のあけぼのでは、ジェンダーフリーの視点を大切にしながら、女性の人権をテーマに考えていきます。三重県男女共同参画センター フレンテみえの取り組みや株式会社中広 三重支社で働く皆さんの生き方や気付きを通して、社会通念や性別に対する自分たちの意識について考えるきっかけにしたいと思います。
今日の社会を構成する私たち一人一人が、まずは、自分は女性の人権に対してどう考えてきたのだろう、どうしていけばよいのだろう、と自分のこととして捉えていくこと。そのことが、職場や学校、地域など社会のあらゆる分野で、性別にかかわらず、誰もが個性と能力を十分に発揮できる社会、つまり誰にとっても生きやすい社会をつくることにつながるのではないでしょうか。
津市では、職員一人一人が豊かな人権感覚を身に付け、人権尊重の視野に立って業務に取り組むことを目的に、毎年、職員を対象に人権研修会を開催しています。今年は、人権問題に関する市民意識調査結果から見えてきたこと、と題して、公益財団法人反差別・人権研究所みえ(ヒューリアみえ)調査・研究員の原田朋記さんのお話を聞きました。
原田さんから、人権問題に対して地域の実情に応じた対応をするためには、行政、学校、地域、家庭で共に考え取り組んでいくことが大切で、そうすることで差別の解消を推進し、差別のない社会の実現につながるとの話がありました。また、人権に関する講演会・研修会に参加したり、人権問題の解決に熱心に取り組んでいる人と出会ったりすることで、人権意識の高揚がみられることから、津市として人権啓発の取り組みを継続していくとともに、一人一人の職員が高い人権意識を持ってほしいと語られました。さらに、現在もなお差別が存在し、そのような社会をつくっているのは私たち一人一人だということを自覚し、人権問題にどのように取り組んでいくかを考え、実践することが必要だと締めくくられました。
職員からは、人権問題は社会全体の問題であることを改めて認識した、とか、社会にはさまざまな差別が存在し、そのことで生きにくくさせられている人たちがいることを実感した、などの意見がありました。私たち一人一人の意識を変えていくことが社会全体の意識の変化につながります。今回の研修で学んだことを生かしながら、市職員から人権意識の輪を少しずつ広げていきたいと思います。
三重県男女共同参画センター フレンテみえは、三重県の男女共同参画社会を推進する拠点施設として、さまざまな事業を展開しています。今回は職員である長谷川峰子さんから、フレンテみえの事業や取り組みとともに、男女共同参画に関わる現状や課題についてお話を伺いました。
多くの人が男女共同参画に関心を持ってもらえるよう、男女に関わる身近な問題をテーマとしたセミナーや講座、講演会を開催しています。また、地域の自治会や企業、学校などからの要請を受け、職員を講師として派遣し、研修会を行うフレンテトークなどの啓発活動や、家庭・地域・職場で生じているさまざまな悩みや問題についての相談も行っています。
男女共同参画とは男女が対等な立場で、家庭・学校・職場・地域などで、共に参画し、責任を分かち合うことです。そうすることで、性別にとらわれず、それぞれの意思や個性が尊重され、一人一人が自分らしく生きていける社会につながっていきます。そのような社会は、女性だけでなく、男性にとっても、安心できる暮らしやすい社会になりますし、また、性差によって平等ではない社会を変えていくことは、さまざまな人権に関わる問題の解決につながっていくと思っています。
つぎの男女の平等感についての調査を見ても分かるように、いろいろな場面で男性の方が優遇されていると感じている人の割合が高くなっています。女性議員や管理職の女性の割合も、人口の半分が女性であるにもかかわらず、まだまだ低い状態です。家庭や職場、地域などの、社会のさまざまな場面で、男女が平等でない現状があります。
男女共同参画に関する県民意識と生活基礎調査報告書より(平成27年 三重県)
男らしさ、女らしさ、こうあるべき、だという固定的な見方を、他の人にも強要したり、それに合わせて社会の制度や仕組みができていたりすること、そのような風潮があることが課題だと思います。例えば、子育ては母親がした方が良い、とか、男は仕事をした方が良い、といった固定的な見方や役割分担の意識が、そのような雰囲気を作っているのではないでしょうか。
また、管理職や組織のリーダーなど、責任のある立場になろうとする女性が少ないのではないか、という声を聞くことがあります。しかし、女性は男性よりも一歩引いて、とか、女性は控えめに、といったことを求められてきた中で、私がやります、という意思は表しづらくなっているのではないでしょうか。
フレンテトークという事業で、地域の団体や企業などへ訪問させていただくことがあります。以前と比べ、話の内容を肯定的にとらえ、男女共同参画を進めていきたいと感じる人が増えて、男女共同参画に対する社会の関心が高まってきていると感じています。
一方で、電話や面接で行う相談や講座の参加者の中には、DVなど深刻な問題を抱えている女性の声を多く聞きます。この状況は自分が悪いから、と自分を責め、苦しんでいる人が、相談や講座に参加することで、自分が悪いわけではない、と気付いてくださいます。私たちが大切にしているのは、そのような声をじっくりと聴き、これからどうしていきたいかを自身で決めることができるように、一緒に考えていくことです。個性や意思を尊重し、自分を大切にして自分らしく生きていく力を取り戻してもらえるように、その後押しができたらいいなと思っています。
私自身、相手を尊重することと、対等な関係であることについて、意識が変わってきたことがあります。以前は、相手との関係が崩れるのではないかと、自分の伝えたいことを伝えずに済ませていることがよくありました。しかし、フレンテみえで勤務するようになってからは、性別やキャリアにかかわらず相手の考えをしっかりと聞き、自分の考えもしっかりと伝えることが、相手との対等な関係を築くためには必要で、相手を尊重することにもつながるのだと思うようになりました。このことは男女共同参画を進めていく上で、とても大切なことだと感じていますし、私自身もそれを忘れずに生きていきたいと思っています。
今回は、ハッピーメディア地域みっちゃく生活情報誌つぅぴーすなどを発行している株式会社 中広に設置されている、女性が働きやすい職場を作るためのプロジェクトチームCLIPで活動している中世古さんと谷川さんにお話を聞きました。
なお、ハッピーメディアは登録商標です。
中世古さんのコメント
CLIP(Chuco Ladies Innovation Project の略)は、女性にとって社内の職場環境を改善するため、平成22年に女性役員が声を上げ発足されたプロジェクトチームです。CLIPの提言から、短時間勤務制度や看護休暇制度の充実、保育料補助やテレワークの制度導入が行われています。会議では、男女別のトイレを設置してほしい、とか、セクハラ・パワハラの問題について議論してほしい、などの意見が出されています。
補足 テレワークとは、情報通信機器などを利用して、自宅や会社以外の場所で任された仕事を行う勤務形態のこと。
谷川さんのコメント
変わりました。例えば、今までは産休・育休の制度はあったもののそれらを取得する社員はほとんどおらず、出産をする場合いわゆる寿退社をすることが当たり前といった雰囲気がありました。また、性別を問わず、毎日遅くまで働く人も少なくありませんでした。私自身も、子どもを産んでもこの仕事を続けたいと思っていましたが、激務で体調を崩し退職も考えたほどでした。上司に相談しながら、産休・育休を取得したのですが、会社として前例のないことで、私にとっても上司にとっても不安がいっぱいでした。
このような経験から、CLIP立ち上げ後も女性の立場から意見をしていきました。今では職場の環境が180度変わり、その人に応じた働き方が尊重されるようになったと感じています。これは、取り組みが女性だけでなく誰にとっても働きやすい環境につながっているからだと思います。例えば、今までなら、子どもの保育園のお迎えに行きます、と言ったら、次の日に出勤しづらくなる雰囲気になりました。でも今では、どの社員にとっても帰りやすい雰囲気があり、性別を問わず職場で子育てやプライベートの話も増え、職場全体が明るくなったような気がします。もちろん私にとっても楽しい職場になりました。
中世古さんのコメント
確かに、職場の雰囲気はずいぶん変わってきました。しかし、まだまだ課題もあると考えています。女性だから、とか、男性だから、という分かりやすいものだけでなく、無意識の偏見や先入観から、子育て中は大変だろうから仕事量を減らそう、とか、きつい仕事を女性に任せるのは気の毒だ、など、配慮をしているつもりでも、本人が望んでいなければ成長機会や意欲を奪うことにもなり得ると思っています。
テレワークなどの制度をより運用しやすく改善していくと同時に、どのような立場の人であってもその人に応じた仕事の在り方や、その人個人を大切にできる、誰もが活躍でき、働きやすい職場づくりに向けて、取り組んでいきたいと思います。
CLIPを中心に誰もが活躍でき、働きやすい職場づくりに向けて、動き始めている株式会社 中広の皆さん。働きにくさを感じてきた人たちの視点で組織の在り方を問い続けてきた取り組みが、その成果として芽を出してきているのだと感じました。