「広報津」第349号(音声読み上げ)折り込み紙1、津市人権教育広報 あけぼの 第29号

登録日:2020年8月1日

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折り込み紙1

津市人権教育広報 あけぼの 第29号

第29号 令和2年8月1日発行

教委人権教育課 電話番号229-3253 ファクス229-3017

未来へつなげるために 今、伝えたい私たちの思い 新型コロナウイルス感染症が拡大する社会から見えてきたこと

新型コロナウイルス感染症が、世界中に広がり、半年以上経ちます。この間、国内でも感染症拡大を防止するため、学校の教育活動や企業等の就労、そして日常生活においても外出自粛などさまざまな制限や制約が設けられました。さらには新しい生活様式が提言されるなど、これまで経験したことのない状況が生まれ、今まで当たり前だと思っていた生活が大きく変化しました。その中で、さまざまな問題も起きました。

その一つが、社会問題としても大きく取り上げられた、新型コロナウイルス感染症に伴う誹謗中傷や差別的行為です。ウイルスに感染することに対する不安や恐怖心から、ウイルス感染に関わる人々を排除したり、誹謗中傷や差別したりするなどの行為となり、人と人とのつながりが分断されてしまうようなことが起きました。

これらのことは、これまで潜在化していた意識が表面化したのではないかと感じています。だからこそ、私たち一人一人が自らの中にある自分には関係ない自分さえよかったらなどの意識と向き合いながら考え行動する時なのだと思います。

感染を防いだり恐れたりすることと、人を攻撃したり差別したりすることは違います。互いを排除し合うような社会は誰にとっても生きにくい社会なのではないでしょうか。

今回のあけぼのでは、今、伝えたい私の思いをテーマに、人と人が豊かにつながり、共に生きることのできる社会を目指して取り組む5人の思いを紹介します。今の社会の状況をさまざまな人の視点から捉えて課題を明らかにし、何を大切にしていくのか、全ての人が安心して暮らせる社会とはどのような社会なのかを考えるきっかけにしたいと思います。

学習教材抜粋

ハイタッチ

コロナウイルスを予防
マスクをつける
近づかないで、二メートル
近づかない 近づけない

ゆうたくんと
横断歩道のむこうとこっちで
向き合った

すると、ゆうたくんが手をふってきた
ぼくもふりかえした

こんどは ゆうたくんが もっともっと大きく
手をふってきた
ぼくも負けないぐらい大きくふり返した

けっきょくゆうたくんとは
なんにも話さなかった
だってマスクもしているし
ゆうたくんとぼくは はなれたまんま

でも
二人でハイタッチしたような
二人であくしゅしたような
そんな気持ちになったよ

人権教育課では、新型コロナウイルス感染症に伴う偏見や差別に気付き、なくしていくための学習教材などを作成しました。誰もが安心して暮らせる未来へつなげるために、子どもたちも学んでいます。

今、伝えたい私の思い
新型コロナウイルス感染症が拡大する社会から見えてきたこと

人と人が豊かにつながり、共に生きることのできる社会をめざして取り組んでいる皆さんに、それぞれの視点から見えてくる現状、そして思いや願いについて語っていただきました。

障がいのある人の視点から、全ての人が共に生きる社会をめざす

ピアサポートみえ理事長の杉田宏さん

新型コロナウイルス感染症によって、これまで私たちがめざしてきた地域の中で共に生きるという理念が揺るがされていると感じています。

健常者と同じように治療や検査が受けられるのか最新の情報がきちんと得られるのかなど、医療や情報の面から命の格差が生まれかねない状況が懸念されます。そして、もしこの事業所で発生した場合、風評被害や介助者不足が起こり、事業を継続していけなくなる恐れがあります。それは地域で生きていく権利の危機でもあります。

緊急事態宣言が解除になるまでは、日中一時支援のスタジオピアについては午前と午後に分けて行ってきました。今後も密をさける消毒の徹底など、できることはやっていきますが、食事・風呂などの支援では、どうしても人との接触があります。その際、多くの利用者さんは自分がもし感染していたら、うつしてしまわないかと気に掛けています。あるお母さんは人に迷惑は掛けられないから、コロナが収まるまで、私が家でこの子をみますと言われています。ほかにも、出掛けた先で、私は今までこれカゴに入れてくださいくつひもを結んでもらえますかなど、気軽に頼んでいましたが、気が引けるようになりました。

私たちは外に出ていくことで刺激を受け、さまざまな人と関わることで、この地域で共に生きていることを実感します。今後はコロナウイルスも収束していくとは思いますが、出掛けた時に何で障がいがあるのに外出しているの、人の手も借りなきゃいけないのにというような見方をされないか、不安があります。

私たちが社会の中で、当たり前のように生活するためには、人との関わりが不可欠です。しかし、今は感染予防のため人との距離を保つことも必要です。そんな今だからこそ、障がいのある人もそうでない人も共に生きるとはどういうことなのかを問い返しながら、発信していきたいと思います。

男女共同参画社会の推進に取り組む

三重県男女共同参画センターフレンテみえ事業課長の長谷川峰子さん

これまで当たり前と感じていた日常生活に、直接大きな影響を及ぼすようなことが起きた時、社会的に弱い立場に置かれている人たちがさらに深刻な影響を受けてしまう社会に私たちはいる。このことを今、強く感じます。

ここ数カ月の間にフレンテみえへ寄せられた相談の内容は、新型コロナウイルスの感染拡大からくる生活や将来に対する不安に関わるものが多くなっています。

さらに、最近はDV(ドメスティックバイオレンス)を受けているという相談も目立つようになってきました。家庭で過ごす時間が長くなるにつれ、DVが起こりやすくなっている状況があると思います。しかし、相談される人の多くが私が悪いから我慢するしかないと自分を責め、悩んでいます。

困難な状況に置かれている人たちが、安心して暮らしていくことができる仕組みや制度を整えていくことは大切です。その一方で、今何が必要なのかを考えた時、本当の意味で心を砕くということが、私は必要だと思います。

周りの人にどうしたの私にできることはあるかな何かあったら言ってねといった声を掛けることは私はあなたのそばにいるよというメッセージを伝えることになるのではないでしょうか。そうすることは、周りの人にとって、安心できるつながりを感じることや今置かれている状況から一歩踏み出そうとする力になると思うのです。

これは、当たり前のことなのかもしれません。しかし、自分のことで精一杯になってしまいがちな状況だからこそ、改めて私は、家族や友人に、そして自分の周りの人たちに心を砕くことを大切にしていきたいと思います。

DV(ドメスティックバイオレンス)とは家族や恋人など、親密な関係にある人からの暴力

あらゆる人権問題の解決にむけて取り組む

反差別・人権研究所みえ(ヒューリアみえ)事務局長の松村元樹さん

誰かが面白半分で流した無責任な一言が、何千、何万と瞬く間に拡大していくインターネットの世界は、差別の主戦場といえる状況になっています。

このような背景を踏まえ、新型コロナウイルスに係る差別や誹謗中傷も起こるべくして起こったと考えています。もともと存在していた差別意識が、今回のことをきっかけにあぶり出されたのです。15年間にわたってインターネット上の差別的な書き込みの対策に当たってきて、今が最も深刻な状況だと捉えています。

原爆症や水俣病、HIV、ハンセン病などの差別の歴史を振り返ると、デマやうわさが広まり、ひとくくりにして排除や誹謗中傷を行うという基本構造がよく似ています。今回はそれに加えてSNS(ソーシャルネットワークサービス)が急速に普及し、思ったことを短い言葉ですぐ発信できるようになったことの影響も大きいと考えています。

一方、新しい流れも生まれています。新型コロナウイルスに関する膨大な量の差別や中傷の書き込みに対して、それに反対する意見も目立つようになりました。大手マスコミが早い段階から感染者や家族などへの誹謗中傷を差別と捉え、警鐘を鳴らしたことがその一因と考えられます。また、地道に続けられてきた人権啓発や教育によって人権意識が高まってきた人々が増え、SNSの広まりによって発信のハードルが下がることで反差別の意思表明や書き込みの増加につながったとも言えます。これまで主に自治体や公的機関が担ってきたネット差別への対応を、個人レベルでも取り組む人々が増えたと感じています。

いつかはこの事態も収束していくでしょう。しかし、その後が重要だと考えます。これまでの例からも、メディアなどで取り上げられている間はさまざまな場で話題になるものの、やがて人々の記憶から遠ざかり、一過性のもので終わってしまいます。

それぞれの深層にある意識が変わらなければ、今回起きてしまった差別や誹謗中傷は繰り返されてしまいます。だからこそ、鎮静化した後も、日常を通して自分たちの意識に向き合い続けていくことにこだわっていきたいと思います。

さまざまな国の人たちが豊かに共生できる社会をめざす

高茶屋日本語教室がんばる会代表の田中レオニセさん

新型コロナウイルス感染症に対する不安や恐怖心は、日本人も外国人も同じです。しかし、レジで並んだ時に、自分の後ろだけ印の2つ分間隔を空けて並ばれたり、商品を取ろうとした際、明らかに避けられたりしたことがありました。外国人だから。と感じ、悲しい気持ちになりました。

今、企業の業績が悪化し、多くの人が仕事を失っています。自分たちは人としてではなく、都合のよい労働力としか見られていないのではと話す人もいます。外国人の多くは非正規雇用のため、その影響は大きく、今後さらに生活が苦しくなると思います。それは、リーマンショックの時も同じように感じたことです。しかし、今の状況では、解雇されて母国に帰りたいと思っても、帰ることすらできません。共に日本で暮らす仲間のこれから自分はどうなるのだろうどうやって生きていけばよいのだろうという声は、多くの外国人の気持ちを表しているように思います。

だからこそ、私は日本人も外国人も、人として大切にし合えるつながりが必要だと感じています。

日本に来て28年。私は、日本語が話せないために苦しんでいる人の助けになれるよう、津市で暮らす仲間と共に、高茶屋日本語教室がんばる会を立ち上げました。がんばる会では日本語だけではなく、互いの文化や習慣を楽しく学び合っています。そうやって、さまざまな国の人たちが出会い、仲間としてつながっていく場所となるように、これからも続けていきたいと思っています。

今は人と人とが距離をとらなければならない社会となっていますが、日本で生活する外国人の一人として、その距離が心の距離にならないよう、できることをこれからもしていきたいと思っています。

ハンセン病問題を通して、人としての生き方を問う報道を続ける 

三重テレビ放送報道制作局長の小川秀幸さん

ハンセン病問題で起こしてしまった過ちと同じような道のりを、私たちは歩んではいないだろうか。新型コロナウイルスの感染が広まる中、誹謗中傷や差別的行為が起きている現実を目の当たりにし、そう感じています。

ハンセン病回復者に話を聞く中で差別するのは人間だけだという言葉を耳にし、ショックを受けた一方人間だからこそできることがあるという思いも持ちました。それは差別をなくしていくために力を尽くすということ。

今、SNS上などで新型コロナウイルス感染者やその家族が、個人情報を拡散されたり誹謗中傷を受けたりしている状況があります。かつてハンセン病患者の収容を目指した無らい県運動が進められ、一般市民から患者の居場所が当局に通報され療養所へ送り込まれた歴史がありました。それと重なるものを感じます。感染への不安や恐怖心が、予防という枠を超えて、感染者はもとよりその家族まで排除しようとする行動につながっているのではないでしょうか。

いじめや村八分、家族との別れなど筆舌に尽くしがたい経験を持つ回復者の皆さんは、口をそろえて言います。ハンセン病問題だけでなく、社会の中のさまざまな差別がなくなってほしいと。その言葉を、今こそかみしめたいと思います。

ハンセン病の取材に携わって19年。今ではハンセン病回復者のまるまるさんではなく三重の大先輩であるまるまるさん、親のようなまるまるさんに会いに行っている自分を感じます。優しさ、心の広さ、人間の深さに惹かれて。

回復者の皆さんを苦しめてきたのは何なんだという思いが、私を取材に向かわせてきました。

ハンセン病を通して私が向き合ってきたのは人間でした。一方、新型コロナウイルスに関わる誹謗中傷も、打ち込む先はスマホやパソコンであっても、その向こうにはそれを目にして悲しむ人がいるのです。それは、誰かの最愛の家族や友人かもしれません。

私は、多くの人たちが社会の中で起こる問題を自分ごととして捉え、差別をなくすために何ができるのかを考えてもらえるよう、これからも報道活動を続けていきたいと考えています。

人権コラム

同じ過ちを繰り返さないために

昨年12月に、新型コロナウイルス感染症の発生が報告されて以降、世界各地で感染が拡大し、3月11日にWHO(世界保健機関)はパンデミック(疫病の世界的大流行)を宣言しました。

国内でも新型コロナウイルスの感染が拡大する中、感染者やその家族、医療従事者に対する差別的な扱い、さらには憶測によるデマや誤った情報の拡散、個人や企業への誹謗中傷などが起きています。感染するリスクは誰にでもあり、決して他人事ではありません。ましてや根拠のない情報が拡散され、そのことによる偏見や差別などの人権侵害は決して許されるものではありません。

今から97年前の関東大震災の時、経験したことのない災害による混乱や不安と、もともと人々の中にあった差別意識などによってデマが流され、命まで奪われるといった事件が起きました。これはあくまでも一例ですが、私たちは同じ過ちを繰り返さないために、あらためて歴史の事実から学びながら、今一度立ち止まって、今日の状況を振り返る必要もあるのではないでしょうか。

市や県、法務局では人権相談を受け付けています。一人で悩まずに、まずはご相談ください。

人権相談窓口
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  • 三重県人権センター相談電話 電話番号233-5500
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